■なぜ「変わってしまった」のか? B4の顛末にみる「スバルの未来」
硬派なスポーツセダンとしては確固たる存在であったはずのスバル レガシィB4がなぜ、北米寄りのおっさんくさい(?)CVTセダンに変貌し、そして結局は日本市場から消えていくことになったのか?
その理由は本稿の冒頭で申し上げたとおり、「日本市場自体の重要度低下」と「セダン人気の凋落」「企業平均燃費規制の強化」というトリプルパンチにほかなりません。
「強力なターボエンジンを搭載したMTのスポーツセダン」というのは日本(の一部)ではウケますが、北米市場ではまったくウケません。彼の国の多くのドライバーにとっては、MTなどというめんどくさい変速機はもってのほかですから。
そしてスバルは今や、日本の、そのなかでも一部の「ディープなカーマニア」だけを相手に車作りをすることなど許されない構造になっています。
「スバルは今や、売上の多くを北米市場に依存している」というフレーズ自体は多くの人がご存じでしょうが、実際の国別販売台数まで把握している人は少ないかもしれません。
2019年3月期の「SUBARUアニュアルレポート」によれば、スバルの全世界連結販売台数は100万台で、そのうち日本での販売台数は13万5000台。日本市場は、わずか13.5%でしかないのです。
そして突出して多いのはアメリカ合衆国で、その数は66万台。スバル車の販売台数の実に7割近くが、今やアメリカでのものなのです。
この数字は文字で書かれたものを見るより、円グラフで見るほうがインパクトがデカいというか、一目瞭然かもしれませんね。
そしてそういう状況になれば、シェアわずか13.5%でしかない国の、そのなかでもさらに少数のマニアの意見を取り入れて「MTでターボのスポーツセダン」なんてものを作っても、採算が合わないのは火を見るより明らかです。
そもそもセダンというカテゴリー自体の人気が凋落しているなか、そんな冒険(?)をしてしまっては、下手をすれば会社がつぶれかねません。であるならば、「北米で売れそうな感じのセダン」を作るしか、会社としては手がないのです。
「とはいえ、スバルのような中規模メーカーは、トヨタのようにすべてのジャンルに手を広げるのではなく、“独自の個性”を追求するほうが得策なはず。ならば、あえて濃い口の本格スポーツセダンを作り、それをイメージリーダーにしても良いのではないか?」
そんな意見もあるでしょうし、筆者も、できることならそんなスバル製スポーツセダンを見たいと思っています。
しかしCAFE規制(企業平均燃費規制)の締め付けがどんどん厳しくなっている昨今、独自の純ハイブリッドシステムやEVを持たないスバルは、強力な2Lや2.5Lガソリンターボエンジンをガンガン燃焼させるというわけにも、なかなかいかないのです。
このような理由で、レガシィセダンから始まったB4の歴史は、ここ日本では終わることになりました。しかし将来、復活の目がまったくないわけでもないでしょう。
「スバル製本格スポーツセダン」の復活を、あまり期待はしないまま、心静かに待ちたいと思います。
■スバル レガシイB4(3代目※B4としては初代)主要諸元
・全長×全幅×全高:4605mm×1695mm×1410mm
・ホイールベース:2650mm
・車重:1440kg
・エンジン:水平対向4気筒DOHCターボ、1994cc
・最高出力:280ps/6500rpm
・最大トルク:35.0kgm/5000rpm
・燃費:10.8km/L(10・15モード)
・価格:258万8000円(1998年式 RSK 5MT)
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