コロナ禍で高速は専用化へ! それでもETCレーンはなぜ「20km/h以下で通過」なのか

 高速道路「専用化」で注目! ETCレーンはなぜ20km/h以下で通過する必要がある?

 コロナ禍のなかで、高速道路ではETC専用化が検討されている。ETCは車載機とカードさえあれば、停止して料金を支払う必要はなく、専用のレーンを走ったまま通過できる仕組みで、2001年の開始から普及が進み、今では90%を越える普及率を誇る。

 そんなETCレーンに近づくと目に入るのが「20km/h以下」に減速を促す表示だ。なぜノンストップが売りのETCレーンでわざわざ減速するのか?

 そして、その必要性は今でもあるのか? 高速道路研究家の清水草一氏が解説する。

文:清水草一、写真:Adobe stock、国土交通省
トップ写真:masakazu-sonoda-stock.adobe.com、五差路-stock.adobe.com

【画像ギャラリー】高速道路 ETCの仕組みとこれからの課題


実は10年前に変更も!? ETCレーンを20km/以下で通過するのは「安全上の理由」

 料金収受員の新型コロナ感染を受け、国交省は高速道路のETC専用化の検討を始めている。

 個人的には、ETC専用化については、メリットに対してデメリットが大きすぎることから反対の立場だが、他方では「高速道路をETC専用化するなら、ETCレーンでの減速をなくすべきではないか」という意見もある。

 そのためには、現在よりもレーン幅を大幅に広くするか、ブースそのものを廃止(道路側のETC検知器は新設する頭上の橋などに移設)することが必要になる。

 現在、ETCレーンは20km/h以下で通過することになっているが、その理由は、「ゲートが開かなかった場合に安全に停止できる速度」である。

 ETCは、車載器の故障やETCカード未挿入といった理由で、ゲートが開かないケースは少なくない。

 その場合、当該車両はゲート手前で停止することになるが、当該車両だけでなく、後続車両も安全に停止するためには、かなり速度を落としておく必要がある。

 ゲートで速度を落とすのは、ETCの道路側検知器の性能の問題ではなく、あくまで安全上の理由による。

 約10年前、ETCレーンのゲートが開く速度が遅く変更されたのも、レーン内での追突事故の頻発が原因だった。

ETCは時速180キロまで検知できる性能を持つが…

 いっぽう、出口に料金所ゲートがない首都高や阪神高速では、こういった速度制限はない。

 ゲートがないため、かなりの高速度で出口を通過するクルマもあるが、ETCは時速180キロ程度まで検知できる性能があるので、問題なく課金できている。

 首都高や阪神高速が、出口ゲートなしで課金できているのなら、他の高速道路でも技術的には可能。実は国交省も、ETC導入時から、将来的なゲートレス化を構想していた。

 ただ、その場合、不正通行のチェックが難しくなる。現状、ゲートでは通過車両のナンバーを撮影するなどして、追跡調査が可能になっている。これによって、悪質な「カルガモ走行」等を検挙した。

首都高、阪神高速の出口に料金所のゲートなしで課金できているが、問題が発生している(写真:MP_P-stock.adobe.com)

 首都高や阪神高速では、出口にゲートがないぶん、不正通行の抑止はそれだけユルくなるが、上限料金が低いため、損害額もその分小さく、そもそも不正通行への動機付けが小さい。

 しかし、NEXCOや本四高速では、首都高や阪神高速に比べると、ケタ外れの長距離利用が可能。1回の利用額が大きい分、不正通行の動機付けも大きくなる。

 現状、悪意のないドライバーが、ETCエラー等によって出口で課金されず、バーを突破するなどして通過し、そのまま連絡せず放置しても、利用額が小さければ、厳しい追跡調査は行われていない。

 調査には多大な手間と費用がかかり、1件1件厳密にやることは不可能なのだ。追跡調査の主な対象は、犯罪として立件可能な悪質なケースだが、不正の抑止のためには、出口ゲートは当然あったほうがいい。

 そもそも国交省は、今回の高速道路ETC専用化に当たって、「誤進入した非ETC車のナンバープレートを読み取って事後に徴収するシステムの整備が必要」と言っているが、それはゲートの存在を前提にしていると考えられる。

料金所渋滞はほぼ消滅!? ETCのメリット・デメリットは?

ETC導入前の料金所では、大きな渋滞が発生していたが、現在では解消している(写真:takao-stock.adobe.com)

 ETCは2001年から全国展開されているが、私はその翌年から利用しており、利用歴はすでに18年になる。

 2002年当時、ETCの利用率は1%にも満たず、主要高速道路の本線料金所では、大きな渋滞が発生していた。当時の高速道路の渋滞の32%が料金所によるもので、それを解消するために、ETCが導入されたのだ。

 ただ当初は、普及促進策がほとんどなく、メリットはETC専用レーンを利用できることだけ。

 しかも、本線料金所を先頭に渋滞が発生していると、数少ないETC専用レーンへ向かうにはどの車線に並んでいればいいのか探し当てるのが大変だった。

 その後、車載器の助成制度やETC割引の導入によって普及が進み、現在、料金所渋滞はほぼ消滅している。これはドライバーにとって、非常に大きなストレスの低減になった。渋滞が減ったぶん、CO2の削減効果もあった。

 もちろん、ゲートでの減速もないほうがラクだし、ゲートそのものがないほうがいいことは間違いないが、それによるストレスの低減効果は、料金所渋滞がすでに消えていることを考えると、かなり限定的だ。

ETC導入当時は、車載器が平均4万円と高価だったが、現在は1万円台まで下がっている

 ETC導入当初は、車載器があまりにも高価(当初は平均約4万円)であることへの疑問から、導入に反対する声も多数あったが、現在は1万円前後にまで下がった。それでも諸外国のシステムより高価だが、その対価として課金ミスは極めて少なく、情報漏洩もない。

 「公」に対して高い正確性を求める日本人の国民性や、高速道路料金の高さを考えると、こういった高度なシステムの導入はやむを得なかったのではないか。また、こんな高価なシステムを一旦導入した以上、途中で変更すべきではない。

ETCレーンの減速を廃止する理由はない

 私は、早い時期にETC車載器を取り付けた利用者として、当時はETC普及策の積極的な導入が不可欠と主張したが、利用率が9割を超えた現在は、現状のETCシステムをこのまま維持継続することが、なによりも重要だと考えている。

 同時に、高速道路のETC専用化にも反対だ。それは利用者の利便性を損なうし、道路側設備にも新たな投資が必要になる。

 余談だが、1台あたりの料金収受コストは、ETC利用の場合で約35円。現金車は約141円となっている(平成23年)。多くのETC利用者は、ETC割引等によって元は取れており、逆に現金車も、割引がないことには納得だろう。

 新型コロナ対策は、一般レーンの現金等精算機への置き換えで実現すべきだ。その費用は、場合によっては現金車への割増(1回100円程度?)でまかなってもいい。

 それ以上、現状を大きく変える必要はなく、ETCレーンの減速を廃止する必要もないと考えている。

【画像ギャラリー】高速道路 ETCの仕組みとこれからの課題

最新号

ベストカー最新号

【新型アルファード2022年登場】新型フェアレディZ初公開!!|ベストカー10月26日号

 ベストカーの最新刊が本日発売! 最新号では、トヨタ高級ミニバン、アルファードの最新情報をお届け。  そのほか、新型フェアレディZプロトタイプ、新型レヴォーグ、新型ヤリスクロス、ボルボXC40マイルドハイブリッドなど注目車種の情報から、3列…

カタログ