■変わってしまったデザインと、変えざるを得なかったトヨタと日本の背景
「パイロット御用達車」としてそこそこ一世を風靡したトヨタ ウィンダムが、あっけなく3代限りで廃番となってしまった理由。
それはいろいろあるはずですが、ひとつには、前段で申し上げたとおり「3代目のデザインが残念だったこと」というのが確実にあるでしょう。
北米で暮らしている人は3代目のあのテイストを好むのでしょうし、そもそも「居住空間の広さを優先したい」ということなのかもしれません。
しかし日本人にとってのアレは、「今までのやつでも車内はけっこう十分広かったんだから、なにもこんなにでっかく、しかも不格好にしなくても……」というのが(もちろんアレが好きという人も一部にいらっしゃったでしょうが)、正直なところだったと思います。
もう少し、それこそ初期のイメージどおりの「パイロットの人に似合いそうな感じ」の流麗系デザインであったならば、トヨタ ウィンダムの運命も少しは変わっていたのかもしれません。
しかし結局のところ、それ(3代目を日本人好みのシュッとしたフォルムにするということ)は、あり得ない選択肢でした。
なぜあり得ないかと言えば、要は「日本におけるセダン人気が凋落していたから」です。
3代目ウィンダムが登場した2001年の日本といえば、ミニバンブームの真っただ中。さらに「そろそろSUVブームの萌芽も少し見え始めたか?」ぐらいのタイミングでもありました。
そんな状況下で「日本人(の一部)にウケそうなセダン」を新たに開発するのは企業にとってはリスクでしかありません。
そうではなく、せめて「でっかくて広くて快適なセダンはまだ売れている」という北米市場で売れそうなモノを作るというのが、グローバル規模の自動車メーカーとしては当然の選択になるわけです。
1990年代前半ぐらいまでは、「カッコよくて、イケてる感じで、高収入な人(つまり国際線パイロットみたいな人)」は、「カッコいい高級セダンを選ぶ」というのが――もちろんいろいろと例外はあっても――基本的には主流であったように思います。
しかしその後、いわゆるイケてるカッコいい人はセダンではなく「RV」と呼ばれていたクロカンやミニバンを選ぶようになり、今現在は……筆者自身はイケてるカッコいい人ではないので詳しくは知らないのですが、たぶん「SUV」を選ぶのでしょう。
国産車だったら新型ハリアーとか、輸入車であればポルシェ カイエンとかレンジローバーとか……でしょうか?
いずれにせよ「カッコいい車」の象徴というか記号がセダンではなくなったその瞬間から、トヨタ ウィンダムの未来にはすでに暗雲が立ち込めていたのです。
■トヨタ ウィンダム(初代) 主要諸元
・全長×全幅×全高:4780mm×1780mm×1390mm
・ホイールベース:2620mm
・車重:1550kg
・エンジン:V型6気筒DOHC、2958cc
・最高出力:200ps/5800rpm
・最大トルク:28.0kgm/4600rpm
・燃費:8.4km/L(10・15モード)
・価格:338万8000円(1993年式 3.0G)
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