まさに宇宙のランクル!? トヨタの月面車「ルナ・クルーザー」の本気度

まさに宇宙のランクル!? トヨタの月面車「ルナ・クルーザー」の本気度

 世界中の道なき道で圧倒的信頼性を誇るのがランドクルーザーなら月面車はルナ・クルーザー!?

 トヨタは8月28日、燃料電池車両技術を用いた月面車の愛称を「LUNAR CRUISER(ルナ・クルーザー)」と命名したことを発表。

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同開発を進める月面車の「本気度」とは? 改めて現時点で明らかになっているその詳細と計画の全容をお伝えしたい。

文:鈴木直也、写真:トヨタ

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10年後までに月を走る!? トヨタとJAXAの月面車計画

トヨタがJAXAとの共同開発中の月面車の愛称を「LUNAR CRUISER(ルナ・クルーザー)」と命名した
トヨタがJAXAとの共同開発中の月面車の愛称を「LUNAR CRUISER(ルナ・クルーザー)」と命名した

 トヨタがJAXA(宇宙航空研究開発機構)と共同で開発中の月面車が、ルナ・クルーザーと名付けられたと発表された。

 知らない人は「何それ?」かもしれないが、じつはトヨタは10年ほど前からJAXAと共同事業を行なっている。

 最初に有名になったのは、キロボと呼ばれる小型ロボットを国際宇宙ステーションに送り込むというプロジェクト。無重力状態におけるロボットの動作とその活用方法が研究された(ちなみに、このキロボはスペースX社のドラゴン5号機に搭乗して地上に帰還している)。

ロボット宇宙飛行士「KIROBO」は、2013年8月に国際宇宙ステーション(ISS)に到着。ISS では“宇宙での人とロボットとの対話実験”を行い、2015年に地球に帰還した
ロボット宇宙飛行士「KIROBO」は、2013年8月に国際宇宙ステーション(ISS)に到着。ISS では“宇宙での人とロボットとの対話実験”を行い、2015年に地球に帰還した

 その次のテーマとして掲げられたのが、この月面車という壮大な計画だ。
 1969年に人類を初めて月に送り込んだアポロ計画以降、有人月面探査は途絶えたままだが、最近ふたたび有人宇宙船で月を目指そうという計画が話題になっている。

 JAXAもその主要メンバーとなっているISECG(国際宇宙探査協働グループ)では、2030年までに月面に有人探査機を送り込むミッション・ロードマップを描いているが、それがこのルナ・クルーザーの檜舞台となる予定だ。

 アポロ計画でも15〜17号で簡易型の月面バギーが送り込まれ、月探査の範囲を大きく広げることに成功した歴史がある。だから、ただ月面を走り回るだけの“ゴルフカート”みたいなクルマなら、技術的なハードルはそう高くないともいえる。

 ところが、トヨタとJAXAが計画する月面車は、とてもそんなレベルの代物じゃない。

“ムーン・バギー”とは大違い!! トヨタとJAXAの月面車 驚異の性能

 最大の特徴は、乗員が宇宙服なしで活動できる与圧キャビンを備えていること。

 外寸は全長6m、全幅5・2m、全高3・8mで、内部居住空間は13立方メートル程度を確保。2名(緊急時は4名)の乗員が滞在可能で、なおかつ燃料電池をエネルギー源として、月面で1000km以上(!)の走行を可能にするとしている。

乗員が宇宙服なしで活動できる与圧キャビンを備え、乗員2名(緊急時4名)まで滞在可能である。さらに燃料電池をエネルギー源として、月面で1000km以上の走行が可能
乗員が宇宙服なしで活動できる与圧キャビンを備え、乗員2名(緊急時4名)まで滞在可能である。さらに燃料電池をエネルギー源として、月面で1000km以上の走行が可能

 アポロ計画で月に送り込まれた“ムーン・バギー”は質量わずか210kg。4輪のインホイールモーターの出力は合計で1馬力。121 A/hの銀-水酸化亜鉛カリウム一次電池による航続距離は92kmだった。

 それと比べると、ルナ・クルーザーのスペックたるや、まさにゴルフカートとマイクロバスくらいの差があると言っていい。

 真空の宇宙空間で気密を保つ構造を、信頼性を確保しながらギリギリの重量で造るのが有人宇宙船の難しいところ。それに車輪をつけてデコボコの月面を走らせようというのだから、耐久性/信頼性への要求はハンパなく厳しいものとなる。

ランドクルーザーから連想され、月面車の愛称「ルナ・クルーザー」という名前が決まった
ランドクルーザーから連想され、月面車の愛称「ルナ・クルーザー」という名前が決まった

 ルナ・クルーザーという名前は、もちろんランドクルーザーから連想したものだが、プレスリリースにもあるとおり、「ランドクルーザーが持つ『必ず生きて帰ってくる』という精神や、品質、耐久性、信頼性を月面という過酷な環境を走る有人与圧ローバにも引き継いでいきたいという想いを込めている」とのこと。

 「究極の信頼性/耐久性を目指す」という開発テーマに、両車あい通じるものがあるわけだ。

燃料電池をエネルギー源として走行するため、月面に存在する水分を、ソーラーパネルで作った電力で電気分解し、酸素と水素を作成する計画だという。ただし実証実験が必要となるだろう
燃料電池をエネルギー源として走行するため、月面に存在する水分を、ソーラーパネルで作った電力で電気分解し、酸素と水素を作成する計画だという。ただし実証実験が必要となるだろう

 それにしても、月面で1000kmの航続距離を確保するというのはものすごい話だ。概念図によると、月面に存在する水分を、ソーラーパネルで作った電力で電気分解して酸素と水素を作るとされているが、これはあくまでも「予定」。その前に、月面で水分を採集するプラントの実証試験が必要となるだろう。

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