日本の緊急脱出ハンマーのパイオニアがレスキューマン
日本でこうした緊急脱出ハンマーを広めたのが、レスキューマンの商品名で知られる丸愛産業だ。
そもそも同社は1963年(昭和38年)に産業用の部品などを開発する企業として創立。
バッテリーの端子部分の腐食を防ぐアイテムを開発し、マツダや三菱、トヨタ、日産と順次純正アクセサリーとして採用され、その後もクルマ酔いを防ぐチップなど他社にはないユニークな製品を開発して、カー用品メーカーとして成長してきた。
なかでもレスキューマンは、今や同社の主力商品といっていいほどのヒット商品になっている。
このレスキューマンを開発した経緯を丸愛産業営業部の原田氏に訊いてみた。
「以前から欧州ではこうした緊急脱出ハンマーが販売されていて、弊社で日本に合った商品を開発しようとして誕生したのが、初代のレスキューマンでした。これは1991年に発売したもので、ウインドウを割るガラスハンマーにシートベルトを切断するハサミを格納してひとつにした構造になっていました」。
このレスキューマン、発売されるや自動車メーカーの純正アクセサリーとして次々と採用されていく。
それは前述のようにそれまでの納入実績があったことも影響しているだろうが、それまで輸入品しかなかった緊急脱出ツールに、日本メーカーならではの品質と作り込みが評価されたことも大きい。
そして1997年には改良された新商品のレスキューマンIIIを発売する。これはハンマー部分がコンパクトになって、収納スペースで場所を取らなくなり、スマートにクルマに装着できるようになった。
それだけでなく、シートベルトを切断するカッターをグリップ部分に内蔵させることで、よりカッターを使いやすくするだけでなくグリップも太く握りやすい形状に改良されている。
ところで、レスキューマンIIIという商品名ならば、その間のレスキューマンIIも存在するのではないだろうか。しかし歴代モデルとしてレスキューマンIIは記録にない。どこにいってしまったのだろうか。
「レスキューマンIIも試作品までは作り上げたんですが、会社として納得のいく商品にでき上がらなかったことで、開発を継続してIIIにまで発展させて、市販化しました」(原田氏)。
公式にはデビューしていないだけに、現行モデルがレスキューマンIIを名乗ることだって可能だ、それでも現行モデルがレスキューマンIIIを名乗るあたりに、レスキューマンの進化ぶりだけでなく、日本企業ならではの実直さを感じさせるではないか。
ちなみにレスキューマンとレスキューマンIIIは、全日本交通安全協会から脱出用ハンマーとして推薦を受けているそうだ。
自分だけでなく、周囲でのアクシデント救助にも役立つ
前述したように、今やこうした緊急脱出ツールは様々なデザインがあり、なかには小型の消火器が一体化されているモノもある。
近年の気候変動により、大雨や台風などによる水害は確実に深刻化している。そう考えれば、補償を重視した自動車保険に加入するだけでなく、実際に災害に遭った時には生き延びるために、こうした緊急脱出ツールを確保しておく必要がある。
しかも自分ではなく、他のドライバーが車内に閉じ込められている状態から助け出す際に役立つかもしれない。そう考えれば2000~3000円程度で購入できるアクセサリーであれば、購入しておくべきだろう。
そう、この手の商品は安ければいい、というモノではないのだ。実績で判断する必要はないが、確実に使えなければ、いくら安くても意味がないガラクタでしかない。
ガラスを割ることに、恐怖感を覚えるドライバーもいるかもしれないが、クルマのサイドウインドウは強化ガラスを採用しており、硬度を高めているガラスは1ヵ所に亀裂が入ると、一瞬で全体がバラバラに砕け散る。
それは小石程度の大きさになるので、むしろ通常のガラスより人体への攻撃性は低いのだ。
それを記憶していれば、緊急時に躊躇なくガラスを割って、室内に閉じ込められた乗員を救うことにためらうことはなくなるのではないだろうか。
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