キューブ ジューク ティアナ 日産車種大リストラは「生みの苦しみ」となるか

 2019年末、日産が生産停止した車種は3つ。ユニークなスタイリングで一世を風靡した「キューブ」、コンパクトSUVのパイオニアである「ジューク」、そしてモダンリビングで高く評価された「ティアナ」だ。

 内田社長兼CEOは、2020年5月に発表した事業構造計画「NISSAN NEXT」において、2023年度までに車種数を20%削減(69車種から55車種以下)することを発表しており、この3車種の「リストラ」も、この一環である。

 一方、「今後18カ月以内に12車種の新型車を投入」とも発表しており、日産の今後の動向には、期待が集まっている。

 日産としても、キューブ、ジューク、ティアナの生産終了を決断することは、断腸の思いであっただろう。国内市場での「逆襲」のため、日産が下したこの決断は、果たして、「生みの苦しみ」となるのだろうか。
 
文:吉川賢一
写真:NISSAN

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日産史に輝く名コンパクトカー「キューブ」

 キューブは日産の一時代を築いたモデルだ。特に、2003年から2004年にかけ、年間で約14万台をも売り上げている。1990年以降の登録車販売台数ランキング(年間)でトップ3にランクインした日産車は、マーチとノート、そしてこのキューブの3台だけだ。

デザインのセンスの良さが認められ、オートカラーアウォード2009ファッションカラー賞およびインテリア部門賞を、2018年にはグッドデザイン・ロングライフデザイン賞を受賞

 初代「キューブ」は1998年に登場、マーチをベースに四角をモチーフにしたボディスタイルで登場し、ハイトワゴンとして人気を得た。2代目は2002年に登場、初代の「キューブらしさ」を継承しつつも、特徴的なリヤの非対称デザインと丸みを帯びた四角が絶妙で、日本国内で大きく売れた。

 2008年に登場した3代目は、キープコンセプトながらも、広くお客さまに受け入れられた。この3代目は北米、欧州、韓国など、海外でも販売されていた時期があった。

 インテリアはさすがに古さが目立つももの、エクステリアは今見ても斬新だ。もし、キューブのスタイルでEVがあったら、人気が出たのではないかと、今も残念に思う。

ジューク誕生はデザイナーのひらめきだった

 「マーチの背を高くして、大きなタイヤを履かせたら、どうだろう…」――。既存のプラットフォームを有効活用して誕生したのがジュークだ。

コンセプトカーがそのまま飛び出してきたかのようなインパクトあるデザイン、走りの良さ、コンパクトボディ、そしてリーズナブルな価格で登場したジューク

 ジュークが誕生した2010年当時は、ミニバンブームの全盛期だった。もちろんSUVがなかったわけではなく、RAV4やハリアー、フォレスター、CR-VなどSUVはあったのだが、その時代の需要は、圧倒的にミニバンや、コンパクトミニバン、軽自動車、そしてコンパクトカーに集中していた。

 そんな中、コンセプトカーがそのまま飛び出してきたかのようなインパクトあるデザイン、走りの良さ、コンパクトボディ、そしてリーズナブルな価格で登場したジュークは、デビュー当初かなり話題となった。

 正直なところ、筆者レベルのデザイン感度だと、売れるとは思っていなかった。しかし、デビューするや否や世界中で大ヒット。「キモカワ」、「ブサカワ」など、散々言われていたが、あの「癖の強さ」がかえってよかったのであろう。

2019年から欧州地域のみで販売され始めた2代目ジュークは、ずいぶんと洗練された印象となったが、初代譲りの丸形ライトなど、初代ジュークのチャームポイントはしっかりと残されている

「モダンリビング」の浸透が、ティアナ最大の功績

 初代ティアナのコンセプト「モダンリビング」は、非常によくできた概念だったと思う。それまでの日産は、901活動などを通して培った「走行性能の高さ」を最大のセールスポイントとして打ち出し、自らを「技術の日産」と呼んでいた。

「走りだけの」日産から「インテリアのセンスも良い」日産というイメージを、世界へ打ち出していたことは、初代ティアナが築いた最大の功績

 そして、その「走行性能の高さ」をアピールする戦い方が「正しい」と信じていた日産だが、初代ティアナでは「走行性能の高さ」よりも、「インテリア」を一番に強調した。

 モダンリビングのコンセプトを具体化したティアナに、当時「こんな軟弱なクルマは日産車ではない」と思った方も中にはいたかもしれないが、実は、走りについて手を抜くことはなく、トップグレードには3.5リッターV6エンジンを搭載し、その気になれば鋭い加速と、滑らかなエクストロニックCVTによって、非常に上質な走りを実現していた。

 「走りだけの」日産から「インテリアのセンスも良い」日産というイメージを、世界へ打ち出していたことは、初代ティアナが築いた最大の功績だろう。

海外で売られている新型アルティマ(L34型)には、世界初の量産型2リッター直列4気筒可変圧縮比ターボエンジン「VCターボ」が搭載されている このエンジンを搭載したモデルが、国内市場にいないことは非常に寂しい

前回の倒産危機の際も車種整理を

 同じような車種整理は、1998年の日産倒産の危機の際も見られた。どん底からの復活を、再び日産はやってみせようとしている。

 1998年当時、日産は、S15シルビア(~2002年)、ローレル(~2004年)、パルサー(~2000年)、テラノ(~2002年)、ルネッサ(~2000年)、ティーノ(~2003年)などの車種を整理するとともに、ブランド力はあっても販売は低迷していた車種のブランド名を大胆に変更、「新たな出発」という意味を込め、ラインアップを大幅に整理した。

 例えば、セドリック・グロリアをフーガに、サニーをティーダに、セフィーロをティアナに、ブルーバードをブルーバードシルフィに、などだ。

7代目となるS15型シルビア(1999年-2002年)S14で不評だった3ナンバーサイズを5ナンバーに戻すなど、随所を刷新して登場した

 「せっかく育ったブランドを消すのは馬鹿げている」という人は多くいる。筆者もそう思うひとりだ。

 しかし、日産にまとわりつく負の空気を払しょくするには、大胆な決断が必要なときもある。現に当時も、一時的に車種こそ減ったものの、その後新たに誕生したノート、キューブ、エクストレイルなどのヒットモデルを生み出すことに成功している。

 ここから1年~2年程度の間、新型ノート、新型エクストレイル、そして新型車アリアや、新生フェアレディZなど、日産の新車攻勢が続く。ブランドロゴを変えたのにも意味があったといわれる日は必ず来るはずだ。

ブランドロゴの変更は、イメージ刷新には効果的だ。これまでのブランドロゴは2001年から使われていた 新たなブランドロゴは、アリアや新型フェアレディZから装着されていくだろう

 この2~3年は耐え時だろう。日産OBとして、厳しい目を向けながらも、なんとか日産が復活してくれることを祈っている。

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