なぜ明確な金額を出さない!? 中古車情報で「ASK」が使われる思ったより切実な理由

 まだインターネットが普及しておらず、中古車の情報が紙媒体メインだった時代。当時中古車情報誌の編集部員だった筆者は、データ管理のために土曜日に出社することが多かった。

 土曜日は当然会社が休みなので、電話のベルはほとんど鳴らないのだが、たまに電話が掛かってきて出るとその多くは販売店からで「次のアリストV300ベルテックスエディションの最低価格を教えてくれ」というような中古車の価格に関する問合せが多かった。もちろん教えませんでしたが……。

 それは価格順に掲載されるということもあったのだが、それだけ中古車の価格というのは貴重な情報だったのだ。しかしインターネットが普及したことで、状況が一変。わざわざ、電話しなくてもライバル店や同じような条件のクルマの価格がひと目でわかるようになったのだ。

 それだけ、情報開示が進んでいる中古車販売で、たまに目にするのが「価格応談」や「ASK」という文字。多くのクルマが価格を表示しているにもかかわらず、このようなあえて価格を隠す行為に意味があるのだろうか。今回はこの中古車情報で気になる「価格応談」や「ASK」について解説したい。

文/萩原文博
写真/Adobe Stock(xiaosan@Adobe Stock)、NISSAN

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■稀少なクルマだから…だけじゃない「ASK」の真相

 中古車情報が紙媒体メインだった時代、ページに掲載している中古車がすべて価格応談としている販売店があった。掲載しているクルマは稀少車やスポーツカー、輸入車というわけでもなく、ごくごく普通のクルマばかり。

 気になったので電話してみると簡単に価格を教えてくれたので隠すつもりはないようだ。どうしてそのような掲載方法を取っているのかと尋ねると「こうしたほうが目立つから連絡してくれる人が多い」という答えが返ってきた。

ベストカーWebの中古車検索のプライスボードでも掲げられるASK表示
歴代スカイラインGT-Rなど、中古車価格が高騰している希少価値が高いモデルや走行距離が少ないもの、ノーマルのものがASK表示になっている

 数百ページにおよぶ情報誌では、一部の大手販売店は別として埋没してしまう販売店は多い。情報開示することが当たり前の情報誌であえて隠すことで注目を集めるという手法を採っていたのだ。

 中古車購入の第一歩はユーザーからのコンタクト。これがなければ成約に結びつけることはできない。なんとか目立つことでユーザーからの注目を集めるというのが「価格応談」「ASK」と表示するひとつの理由と言える。

 また、稀少な国産スポーツカーや旧車などで「価格応談」「ASK」と表示するケースは現在でも非常に多い。こういった場合は、特にスポーツカー専門店が価格を表示してしまうと、周りの店に大体この価格なのか! と中古車相場を知られてしまうからだ。

 現在、大半の中古車はオートオークションを経て、販売店に供給されている。しかし、稀少な国産スポーツカーや旧車というのは、専門に扱っている販売店でなければ、コンディションもピンキリで目利きが難しいだけでなく、非常に下取りや買取だけでなく、販売価格の設定も難しいもの。

 そういった専門店が価格を表示してしまうことで、一般的な販売店にまで相場を知られてしまうことになるのだ。それは周りの店はメリットとなるが、表示した専門店はデメリットしかないということになる。したがって国産スポーツカーや旧車などでは「価格応談」「ASK」という表示が多いのだ。

 ある販売店では、「価格応談」「ASK」と表示することで、冷やかし客を減らしユーザーの本気度を試しているということもある。

 冷やかし客であれば、「価格応談」「ASK」となっているクルマに対して、電話やメールなどでコンタクトを取ることはしないはず。わざわざ「価格応談」「ASK」となっている中古車に対して、販売店に何らかの方法でコンタクトを取るというのはユーザーも本気で買うつもりという熱意が伝わってくる。

 現在はメールでの対応が可能となったが、まだ電話でしかコンタクトができない時代は、販売店スタッフは自分の作業を止めて、電話対応をしていた。冷やかしの電話はそうしたスタッフの好意を踏みにじる行為である。販売店の防御としてこういった手段に出ることもあるのだ。

インターネットが普及したことで、現在は検索サイトで調べれば簡単に中古車情報が調べられる。紙の時代よりも安易にコンタクトができることも「価格応談」「ASK」を選ぶ理由となる(sharaku1216@Adobe Stock)

■チューニングカーなど万人受けしないクルマでも

 そして最近増えているパターンは、ユーザーからの委託販売。販売店が持ち主から売却した価格を聞いて、「価格応談」「ASK」と表示し、設定した価格もしくはそれ以上で購入したいユーザーが出てくれば売却するというもの。

 このケースは、チューニングカーなどに多く見られる傾向だ。それは、一般的にアフターパーツは純正品もしくは人気のあるブランド以外は査定価格に反映されないからだ。

 チューニングは個人の趣向性が強く、万人受けしないという考えが基本だからだ。しかし、競技やそのチューニングやカスタマイズがハマるユーザーがいれば高く売ることができるからだ。

オーナーとしてはこだわりを持ってチューニングしたとしても、それが中古車の査定額に影響することは一般的にあまりない。ニーズに合う人を選別するためにも「価格応談」は有効だ(supertramp88@Adobe Stock)

 しかし、その逆のパターンもあるという。ユーザーから安く買い取っていて、売却価格をユーザーに知られたくないというケースも「価格応談」「ASK」と表示するというのだ。ヘビーにチューニングされたクルマであれば、中古車として流通すればすぐにわかってしまうし、その価格を見たユーザーがさまざまな書き込みを行う可能性があると考えると販売店としては防御策としてこういった表示をするケースは考えられる。

 また、人気車種で、「価格応談」「ASK」と表示すると価格が安いのではと考えてたくさん問合せをしてくるという。中古車の価格は安いとそれなりの理由があるもの。それを肝に銘じて中古車探しを行ってもらいたい。インターネットが普及しても中古車探しの決め手は人と人ということになる。

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