みなさんはガソリンスタンドで給油する際、満タンで入れていますか? それとも20Lや30L、または財布の中身に応じて2000円、3000円といった感じで、容量、金額を指定して入れていますか?
当たり前の話ですが、ガソリンを満タンにすれば重量が重くなり、半分入れればそのぶん、軽いということになります。
そこで気になるのが、満タンにしたほうがいいのか、それとも半分や3分の1など、なるべくこまめに入れたほうがいいのか、どちらなのでしょうか? ベストな給油方法をモータージャーナリストの岩尾信哉氏が解説します。
文/岩尾信哉
写真/ベストカー編集部 ベストカーweb編集部 トビラ写真(Adobe Stock@beeboys)
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給油量はどれだけ燃費に影響するか?
燃費をよくする運転はどうすればいいのか、と聞かれたら、やはり急発進、急加速などの急が付く運転、発進する時のふんわりアクセル、車間距離にゆとりをもたせた加減速の少ない運転など、走らせ方で変わります、と答えることにしている。次に来るのは「走らせる環境」ということになる。
今回は、こうした燃費のいい運転術などではなく、「燃料は満タンにしたほうがいいのか、それともこまめに給油したほうがいいのか?」という素朴な疑問について解説していきたい。
まずはガソリン/軽油の重さ(質量)について確認しておくと、以下のようになる。
●1cc当たりの燃料の重さ
軽油/0.80~0.84g
レギュラーガソリン/0.72~0.76g
ハイオクガソリン/0.77~0.78g
●レギュラーガソリンの重さ
※1㏄あたり0.75gとした場合
10L/7.5kg
20L/15.0kg
30L/22.5kg
40L/30.0kg
50L/37.5kg
60L/45.0kg
※出典:石油連盟
このように、1L当たり約0.75kg(軽油は約0.82kg)となり、50Lタンクを搭載する車両では、燃料が満タンとタンク半分の際のガソリンの質量はそれぞれ約37.5kgと約18.8kgとなる。
とはいえ、燃料の質量が燃費に与える影響は1%未満というデータがある。例えばゴルフ用のキャディバッグ(クラブなど込み)は約10kgだから、荷物などを積みっぱなしにしていれば、簡単に相殺されてしまうこともある。
ちなみに日本アルミニウム協会のデータを見ると、車両の10kgの軽量化によって約0.2km/Lの燃費改善が見込めるとされる。
では実際にSUV人気NO.1のトヨタライズを例にとり、給油量でどれだけ燃費が変わってくるのか計算してみた。
■トヨタライズG(2WD)、WLTC燃費/18.6km/L、JC08モード燃費/23.4km/L、燃料タンク容量:36L、燃料/無鉛レギュラーガソリン
・満タン、36L給油した場合=ガソリンの重量は約27kg
・20L給油した場合=約15kg
・10L給油した場合=約7.5kg
※レギュラーガソリン1Lあたり約0.75kgとして計算
ライズの燃料タンクを満タンにすると、ガソリンの重量は1L当たり約0.75gとされているので、約0.75g×36L=約27kg。そして20L給油した場合は約15kg、10L給油した場合には約7.5kgとなる。
これを約10kgの軽量化で約0.2km/Lの燃費改善が見込めるという日本アルミニウム協会のデータに当てはめると、満タンにした場合(約27kg)に比べ、給油20Lは約12kg軽いため約0.24km/Lの燃費向上、給油10Lは約19.5kg軽いため、約0.39km/Lの燃費向上となる。
これをライズのWLTCモード燃費18.6km/Lに足しても、給油20Lの場合は18.84km/L、給油10Lでも18.99km/Lにしか増えない。
燃費の差で生じる20Lの走行距離差が20L×0.24km/L=4.8kmでこれを20L給油の18.84km/Lの燃費で割ると0.25L余分に走ったことになるので、133円/Lでは約34円得したことになる。
最近では、30Lを切る燃料タンク容量の軽自動車が登場している。ホンダN-BOXはFWDが27L、4WDが25Lとされ、スズキのワゴンRやハスラー、日産デイズや三菱eKワゴンなどが27Lなどとなっている。
これはWLTC燃費などのカタログ上の燃費データ取得の際に、重量面で有利に働くことが考慮した仕立てと捉えられなくもない。
半分入れる派の細かい努力には頭が下がる気もするが、前述したように、燃費改善に関しては、半分にしても目立った成果を得るのは厳しいはずだ。
それこそ、タイヤの空気圧などを含めたメンテナンスをきっちり実施することや、走行時にアクセル/ブレーキの無駄な操作を極力抑えるよう気を使うほうが燃費向上の効果は多少なりとも得られるはずだ。
満タン派の主張には、燃料タンク内に空間(隙間)があると、揮発性の燃料によって表面が腐食することで傷み、燃料に不純物が混ざることや、燃料がタンク内で空気などに触れ続けることで生じる劣化を防ぐというものがある。
現在、広く出回っている車両の燃料タンクの材質がかかわってくる。多くの車両は軽量化のために樹脂製の燃料タンクを採用している。このため、燃料タンクやガソリンそのものの劣化は、昔ほど考慮する必要はなくなっている。
ただし、所有車の使用頻度が極端に低いユーザーの場合は、多くの燃料を入れたまま保管し続けるのは避けたほうが無難だろう。
燃料は古くなると成分が酸化など変質を起こし、揮発成分が抜けることで劣化するので、なるべく早めに使い切ったほうがよい。
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