■パイを奪ったのはRAV4 全店舗扱いが拍車をかけた失速
これらのうち、C-HRの販売下降に大きな影響を与えたのがRAV4だ。トヨタの販売店では「C-HRを目当てに来店されたお客様が、後席や荷室の広さに不満を感じた時、RAV4を提案すると前向きに検討していただける場合が多い」という。
C-HR・4WD・G-Tの価格は291万3000円、RAV4・4WD・Xは297万4000円(人気の4WDアドベンチャーは331万円)だ。RAV4はボディが大きく、外観が立派で車内も広いが、価格はあまり高くならない。そこでC-HRのユーザーがRAV4に吸収された面もある。
C-HRの登録台数推移を見ても、2019年1~3月の対前年比は、75~80%で推移していた。それがRAV4の売れ行きが活発になったあとの2019年6月以降は、55~65%まで下がっている。C-HRが下がり始めた時に、RAV4も追加されたので、ユーザーをさらに奪われて販売下降が顕著になった。登録台数でもRAV4に抜かれている。
そして2019年11月にコンパクトSUVのライズが発売され、2020年1~2月には、小型/普通車の登録台数1位になった。C-HRはこの影響も受けた。
ほかの理由として、全国に展開するトヨタの全販売店が、2020年5月からトヨタ全車を扱う体制に移行したことも挙げられる。C-HRはもともとトヨタの全店が扱うから販売面で有利だったが、2020年5月以降は、ネッツトヨタ店とトヨタカローラ店が扱っていたRAV4も全店展開になって販売網を充実させた。ハリアーもトヨペット店の専売から全店扱いに変更された。
全店が全車を扱うと、トヨタ車同士の競争も激しくなり、販売格差が拡大する。例えばこの影響で、2020年10月における「ヴェルファイア」の登録台数は、「アルファード」の12%まで下がった。両車は基本部分を共通化した姉妹車で価格も同じだが、外観の些細な違いが8倍の販売格差を生み出した。
以上のようにC-HRは、外観が個性的な趣味性の強い商品とあって、売れ行きを下降させるのが早かった。しかも同じトヨタから、SUVの新型車が続々と登場してくる。全店/全車扱いの販売体制も加わり、トヨタ車同士の競争も激しくなった。2020年10月には、国内で登録された小型/普通車の54%がトヨタ車で占められる。まさに「トヨタの敵はトヨタ」で、C-HRも身内同士の戦いで苦戦を強いられ、売れ行きを下げている。
この競争に打ち勝った車種だけが生き残り、これから需要が減るトヨタの国内販売を守る勇車になれる。トヨタが全店/全車扱いに乗り出した理由のひとつもそこにある。どのトヨタ車が勇車の資格を得るのだろうか。果たしてC-HRは生き残れるのか?
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