■EVの普及には制度や仕組みを根本から変える必要がある
EVのための電力はもちろん、家庭電化製品においてもエネルギーの基幹となる電力全般も、脱炭素を行うには、再生可能エネルギーの導入はもちろんだが、原子力発電の再認識と、導入へ向けた理解が得られなければ、しょせん絵に描いた餅となる。ここでも、日本は海外に後れをとることになる。
東日本大震災で被災した福島第一原子力発電所の事故は、甚大な被害と大きな教訓を残した。その事故原因は、地震ではなく、地震によって起きた津波による。なおかつ、安全運転のためバックアップで重要な冷却水を確保すべきポンプの設置場所が海側にあったなど、システム設計の不備や管理の見落としにより被害を甚大化させた。
なおかつ、福島第一原子力発電所の原発は、1950~1960年代の初期型であり、もっとも古い方式だ。
クルマでいえば、1950~60年代の性能であって、排ガス対策もなく、エアバッグもなく、衝撃吸収ボディでもなかった。そうした旧いクルマが事故を起こしたからと、クルマ社会を止めようと論じているのと同じ状況になっているのである。マスメディアの論調も同じだ。
世界に普及している原子力発電は、その旧い方式の改良型でしかなく、1950~1960年代のクルマをいくら改良しても、排ガス浄化や衝突安全性能などが近年の新車同様にならないのと同じだ。
エンジンの仕組みや、プラットフォームの刷新、電子制御の導入がなければ、今日の環境性能と安全は手に入らないのである。
原子力発電も、最新の新世代技術で建造すれば、より安全かつ効率的で原価も安い電力を手に入れられる。それを知らず、60~70年も前の技術で否定するのは、自らの未来を閉じるようなものだ。
話がそれたが、脱炭素時代を迎えようとするなら、単に減税や補助金を出せば済むのではない。制度や仕組みを根本から変えなければ実現できない。それが21世紀なのだ。EVの普及も、現場・現物・現実を踏まえ、自動車業界や行政が新たな行程を築かなければ、日本は世界の後塵を拝するしかない。
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