これが純ガソリン車のタイプRとしては最後になるかも?
シビックタイプRの最終モデルが絶賛されている! 褒めているのは、それぞれのジャンルで一目置かれているドライバーばかり。『ベストカー』本誌で試乗した当代きっての名手、山野哲也選手すら絶賛に近い評価をしている。
かくいうロートル評論家&ラリードライバーの私も鈴鹿のフルコースを走り、「これは素晴らしい!」と脱帽です。
なにがどう凄いのか? 以下、じっくり説明したいと思う。
文/国沢光宏、写真/HONDA、撮影/奥隅圭之
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エンジンは名機初代インテグラ&NSXタイプRを思わせる仕上がり
まずエンジン。最高出力320馬力と400Nmというスペックは、性能を追求した2L直噴ターボとして考えたら世界標準と言って良い。
メルセデス A45AMGなんか421馬力/500Nmを出してますから。といった点からすれば驚くレベルじゃないのだけれど、とても扱いやすい!
高出力エンジンと言えば一般的に高回転型となるうえ、大きいタービン使うためアクセルレスポンスも厳しい傾向。そんなことからエンジン回転の制御が可能なATと組み合わせる傾向(だからこそ高性能車の大半がATです)。
けれどタイプRの320馬力は実に扱いやすい。マニュアルミッションでも充分コントロール出来る。タイプRのエンジン特性、ホンダの名機と評価されている95インテグラタイプRや、NSXタイプRによく似ているように思う。
中回転域から扱いやすいトルク特性を持っており、駆動力伝達という点で不利なFFながら、しっかりアクセルコントロールしてやれば過剰なスピンをしない。パワーをフルに使い切れる、と言い換えてもよかろう。
レブマッチシステムも良い仕事をしている。シフトダウンする際、以前ながらヒール&トゥを使いブレーキ踏みながらアクセル開けて回転数を合わせた。
レブマッチシステム付いていると、コーナー進入時、精密にブレーキだけコントロールしながらシフトダウンしていける。「自動ヒール&トゥ」ですね。左足ブレーキも使いやすい。
真骨頂はエンジンじゃない!?
エンジンを圧倒するのが足回りといってよかろう。シビックタイプRの初期モデルはけっこうピーキーなハンドリングだった。
「アンダーとオーバーの境界領域が狭い」と考えていただければ良い。前輪の限界を超えると唐突なアンダーステアとなり、後輪の限界を超えたら素早い修正舵を入れてやらねばならないということ。ところが最終スペックに乗ってびっくり! ラリー車のように穏やかな挙動になっている!
例えば鈴鹿サーキットの逆バンクなど、少しオーバースピードで進入したら速度落ちるまでアンバーのまま辛抱するしかない。けれど最終スペックときたら、少しアクセル戻して前輪荷重するだけでコーナリングパワーを取り戻す。
はたまた高速コーナーにオーバースピードで進入してしまい前輪荷重し過ぎてテール流れるような場面も、スパッと滑らずコントロールできる。「自由自在」と表現するのがピッタリだと思う。凄いのが低い速度域じゃないこと。2分30秒くらいのラップ(最高速220km/h超)で走っているのにコントローラブルなのだった。
もちろん95タイプRやNSXの時代には存在しなかった電子制御も効いているのだろうけれど、高評価の理由を挙げるならクルマ全体のバランスの良さに起因しているのだと思う。弱点を持たない、と言えば解りやすいかもしれません。
一家言あるドライバーの皆さんも、ウィークポイントを指摘しない。私だって全面的に肯定します。
シビックタイプRは歴代最高のホンダ車
なぜこんなクルマに? おそらく開発担当責任者の力量によるところ大だと思う。シビックタイプR、柿沼秀樹さんという人が責任者なのだけれど、私が知る限りホンダで一番速いドライバーだったりする。
この手のクルマ、多少運転に自信のあるドライバーくらいじゃ性能を引き出せない。当然ながら攻めきれるドライバーに話を聞いて改良していく。
けれど柿沼さんは自分で評価し、自分で改良出来るのだった。これほど確かなことなどない。さらに柿沼さんを木立さんというニュルのインストラクターをやっている主任研究員(これまたホンダTOP3の腕前持つ)がサポートしている。ポルシェやフェラーリに負けない陣容の開発陣によって作られているということです。
当然ながら歴代最高のハンドリングを持つホンダ車だし、世界レベルで評価したって遜色なし! むしろシビックタイプRに試乗して「最近スポーツモデルを作らなくなったホンダにこんな素晴らしいクルマを作るチカラがあったのか!」と驚いたほど。瞬時に売り切れたシビックタイプRを買えた人は幸せだと思う。