使ったこと1年に何回ある? パドルシフトは本当に必要なのか?

 スポーツモデルや軽ターボ車に装着されているパドルシフト。ATやCVTの変速操作をステアリングに装着されたプラス、マイナスと刻まれたパドルシフトによって、素早くシフトチェンジできる優れモノだ。

 このパドルシフトが登場してから早20年以上が経ち、現在では70車種以上に装着されている。たしかに普段のアシとして使うぶんには必要ないが、クルマ好きにとっては、ワインディングやスポーツ走行したい時には嬉しい装備。MT免許を持たないAT限定免許所有の人にとってMT車感覚が味わえるのも大きい。

 ATやCVTをMT車のように走りたいので、パドルシフト付きのクルマを選んだクルマ好きも多いだろう。しかし、1年のうちでパドルシフトを何回使ったのか? と聞かれると、う~ん両手で収まるほど……、という人もいるかもしれない。

 そこで改めて、パドルシフトは本当に必要なのか? パドルシフトのメリットとデメリットを、モータージャーナリストの永田恵一氏が考察していく。


文/永田恵一
写真/ベストカー編集部 ベストカーweb編集部 トヨタ 日産 ホンダ

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パドルシフトのメリットとは?

左側のマイナスがシフトダウン、右側のプラスがシフトアップ(BMW3シリーズのパドルシフト)


■通常走行時では?
●シフト時の操作性の向上
 パドルシフトは1989年のフェラーリ640というF1マシンから始まった技術だ。それだけにロードカーではシフトレバーでも大きな問題はないにせよ、やはりドライバー任意のシフト操作をハンドルから手を離さずに素早くできるのは大きなメリットだ。

 ここ10年ほどメルセデスベンツはほとんどがコラムシフトとなっていて、ランドローバーのダイヤルシフト、ホンダの電動車のボタンシフトといった操作系とトランスミッション本体が機械的にはつながってないことを生かし、省スペースにもつながるバイワイヤシフトを使うクルマでは、パドルシフトは走行中のシフト操作のため必需品にもなっている。

 近年のクルマはDレンジのまま走行してもシフトスケジュールなどに問題を感じることは少なくなっているが、それでもパワーの欲しい上り坂、エンジンブレーキを効かせたい下り坂などでハンドルから手を離さずに素早く任意のギアを選べるというメリットは大きい。

 またこのメリットは無段階シフトとなるため、MTモードがないとドライバーが選べるシフトポジションが大雑把になるCVTでは特に有難い。


●エコランの際の武器になる
 これはMTモードでも同じだが、2ペダル車でエコランをする際のドライバー任意での早めのシフトアップやシフトダウンによる燃料カットといった操作はパドルシフトがあったほうがやりやすい。

新型EV、ホンダe。電気モーターの最高出力は154ps、最大トルクは32.1kgm
ホンダeのステアリング裏にあるパドルシフトはドライブモードがノーマル時は4段階、スポーツモードでは3段階で減速度を選択可能


●電動車での回生制動の調整
 これはエコランにもつながり、ホンダeやアコード、アウトランダーPHEVなどが具体例だ。

 パドルシフトにより電動車で回生制動の調整ができると、状況に応じて後続車を確認したうえでの強い回生制動から回生制動をしない空走状態まで調整でき、燃費&電費を稼ぎながら下り坂などではペダル操作をほとんど行わない楽な運転も可能になる。

スポーツ走行にはSレンジが有効。パドルシフトを使えば、さらに柔軟なタイミングでシフトチェンジができる。写真はN-BOXカスタムターボのパドルシフト


■やはりスポーツ走行時はパドルシフトが必要!
●自動シフトを補う調整
 最近のクルマは通常走行時のDレンジと同様にスポーツ走行時などに使うSレンジなども、シフトアップ&ダウンのタイミングがドライバーの意思を読んだ非常に賢いものとなっている。

 それでも機械が相手だけには完璧とはいかず、パドルシフトがあると「ここはシフトアップせずに下のギアで引っ張りたい」、雨などの際には「レッドゾーンまで引っ張らず早めにシフトアップしたい」といった調整がよりしやすい。

パドルシフトに切り替えれば、好きなタイミングで常時シフト操作を行える。万が一操作を誤っても2ペダル車の場合、クルマ側が自動で回転数を制御してくれる


●常時シフト操作を自分で行うことも可能
 スポーツ走行時だけでなく「シフト操作をクルマに任せず、常時自分で行いたい」という時もあるだろう。

 パドルシフトはそんな乗り方もできるのに加え、レッドゾーンになるとクルマ側でシフトアップが行われる場合はあるにせよ、2ペダル車ならエンジントラブルなどにもつながるシフトダウンのミスによるオーバーレブが起きないのは非常に有難い。

 このあたりをまとめると、パドルシフトは主にDレンジやSレンジでカバーできない操作を補うものとして使うのが賢いと言える。

パドルシフトのデメリットとは?

スカイラインハイブリッドのパドルシフト


●コストアップにつながる
 当たり前だが、パーツが加わるだけにこれはやむを得ない。
●ハンドル操作中だと使いにくい場合がある
 これはハンドル操作中にシフト操作を行うことに対する是非もあるにせよ、パドルがステアリングコラムに付く固定式でないと、ハンドル操作中だと「どちらがアップかダウンか分からなくなる」というケースはある。
●Dレンジへの復帰が分かりにくい場合がある
 ギア選択の調整のため瞬間的にパドルシフトを使い、「Dレンジに戻ってほしい」という際に“何秒間パドルシフトの操作がない”など、Dレンジに復帰するまでの過程はマチマチだ。

 これはシフトレバーでDレンジに入れ直せば一発で復帰するのだが、クルマによってはそれができない、どうしていいか分からないということもある。

まとめ

 パドルシフトはデメリットもあるにせよ、コスト以外はメリットのほうがずっと大きい。

 パドルシフトは「購入当初はよく使ったけど、時間が経って使う頻度が減った」という人も少なくないようだが、パドルシフトが付いているクルマに乗っているなら、同乗者がいる際には変に思われない範囲で積極的に使うといいだろう。

 なお、パドルシフトが付いていないクルマでもマツダ2やCX-8のディーラーオプション、輸入車では上級グレードからの流用などでパドルシフトを後付け可能なこともあるので、パドルシフトが欲しい人は調べてみる価値はある。

120ps/14.8kgmの直3、1.5L、直3NAエンジンを積んだGRヤリスRS。パドルシフトで操作可能な10速マニュアルモード付きのCVTを組み合わせている
ダイレクトシフトCVTはパドルシフトで10速が使える。変速もスピードも速く楽しい


■現行日本車のパドルシフト装着車
●トヨタ
・カローラスポーツ1.2Lターボ(G”Z”、Gに標準、G”X”にメーカーオプション)
・カムリWS系
・クラウンRSアドバンス系
・ランドクルーザープラドTZ-G
・GRヤリス RS
・86GT系
・スープラ全グレード
●レクサス
・CT200h全グレード
・IS(Fスポーツ系標準、バージョンL系メーカーオプション)
・ES300h全グレード
・LS全グレード
・RC全グレード
・RC F全グレード
・LC全グレード
・UX(標準以外の全グレード)
・UX300e
・NX全グレード
・RX全グレード
・LX全グレード
●日産
・スカイライン(GTタイプS系、400R)
・フーガ370GTタイプS
・フェアレディZ全グレード
・GT-R全グレード
●ホンダ
・N-WGN(ターボ系)
・N-ONE(ターボ車)
・N-BOX(ターボ車)
・シャトルハイブリッド(X、Z)
・ホンダe全グレード
・シビックハッチバック
・インサイト全グレード
・アコード
・クラリティPHEV
・レジェンド
・ステップワゴン(1.5Lターボのスパーダ系、ModuloX)
・オデッセイ(2.4Lガソリン系)
・ヴェゼル(ハイブリッド全グレード、RSの1.5Lガソリン、1.5Lターボ系)
・CR-V全グレード
・S660全グレード
・NSX
●マツダ
・マツダ2(ブラックトーンエディション系、ホワイトコンフォート系、プロアクティブSパッケージ系、Lパッケージ系)
・マツダ3(20S系、XD系、X系)
・マツダ6全グレード
・CX-3(プロアクティブSパッケージ系、エクスクルーシブモード系)
・CX-30(20S以外の全グレード)
・MX-30全グレード
・CX-5(20S、25S、XD以外の全グレード)
・ロードスター全グレード
●三菱自動車
・eKスペース(T)
・eKスペースクロス(T)
・i-MiEV
・RVR全グレード
・エクリプスクロス全グレード
・アウトランダー全グレード
・アウトランダーPHEV全グレード
・デリカD:5全グレード
●スバル
・インプレッサスポーツ全グレード
・インプレッサG4全グレード
・WRX S4全グレード
・レヴォーグ全グレード
・XV(1.6iアイサイト全グレード)
・フォレスター全グレード
・レガシィアウトバック全グレード
●スズキ
・アルトワークス
・ワゴンRスティングレー(ハイブリッドT)
・スペーシアカスタム(ハイブリッドXSターボ)
・スペーシアギア(ハイブリッドXZターボ)
・ハスラー(ターボ系)
・イグニス(ハイブリッドMF、MZ)
・スイフト(RS系、ハイブリッドSZ)
・スイフトスポーツ
・クロスビー全グレード
・エスクード全グレード
●ダイハツ
・コペン(ローブS、XプレイS、セロS、GRスポーツ)

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