■時代の流れが霊柩車に変化をもたらす
圧倒的に搬送車が多いのは、2020年に発売した寝台霊柩車「プレミアムフュージョン」の好調にあるという。その理由は、お亡くなりになった方の高齢化で、家族葬が増えたこともひとつだ。
現役を離れて10年以上となると参列者の数も少ない傾向にあり、ご葬儀自体が小規模化しているようなのだ。家族だけとなると、豪華な霊柩車まで必要ないと考える方も少なくない。そのため、葬儀業者も費用を抑えるべく、搬送車と霊柩車の共用できる寝台霊柩車を選んでいる。
プレミアムフュージョンは、つまり搬送車を豪華にしたもの。大型ワゴンのアルファードをベースに、最小限の架装に留め、価格も抑えている。アルファードなので、見た目の贅沢さも感じられ、霊柩車としても十分な素質を備えている。
■新たな声から生まれた「エボリューション」
新型霊柩車『グランエースエボリューション』は、ひとりの葬儀業者の相談がきっかけとなった。
「最近、家族葬だけでなく、病院などから直接火葬場へとお送りする直葬も増えてきた。また老人ホームなどで亡くなった方は、施設に葬儀を行えるスペースがなく、やむを得ず直接火葬場にお送りするケースもある。ただそれではあまりにも寂しい。移動式の葬儀が行える車両があるとよいのではないか」
と新たな霊柩車の形を提案されたという。
そこで光岡自動車では、棺を納めるスペースの横に遺影などを飾る祭壇スペースを備えた車両の開発に取り組んだ。グランエースを採用したのは、単にベース車のままで棺が収まるだけでなく、背が高いことでお別れをしていただく際に、参列者が窮屈さを感じさせず、立ったままの姿勢でお別れできるように配慮したためだ。
2020年11月に開催された葬儀業者向け展示イベント「エンディング展」で、グランエースエボリューションが初披露。展示車を見た関係者に、祭壇にもあるスペースを設けた理由を説明すると、前向きに検討したいという声が多かったという。
小さな祭壇を設けることで、参列が難しい老人ホームなどの友人とのお別れ、自宅や勤務先など故人の所縁のある場所への立ち寄りなど、喪主に故人供養のために新たな提案できるのが、よいと評価されたという。
■霊柩車でも定価を表示!
霊柩車自体は、基本的にはオーダー制のため、ワンオフが基本だ。そのため、葬儀業者から車種を指定されるケースも多い。だからこそ定価が示しにくいのが現実だ。
しかし、光岡自動車では、ベース車と基本的なパッケージを定めることで、定価を表示。業者が検討しやすいように配慮する。これも自動車メーカーとしてのこだわりのひとつだ。
もちろん、トヨタ『センチュリー』やクライスラー『300』、メルセデスベンツ『Eクラス』ベースなどの高級霊柩車をベースとしたフルオーダー車の架装も行っている。ただメンテナンスやランニングコストの観点から、国産車ベースの霊柩車がほとんどのようだ。またニーズも1000万円クラスの本格的な霊柩車は減少傾向で、価格を抑え、多目的に使える寝台霊柩車の需要が増えているという。
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