クルマの駆動方式は大きく分けて前輪駆動、後輪駆動、4輪駆動となるが、ガソリン車の主流はスペース効率のいい前輪駆動だろう。
しかしレイアウトの自由度が高い電気自動車においてはそうとも言えなくなった。リーフは前輪駆動だが、その前に発売されたiMiEVは後輪駆動だった。また最近発売されたホンダ eも後輪を駆動する。
今後EVの駆動方式の主流はどうなるのか?
文/鈴木直也、写真/HONDA、VW、PEUGEOT、NISSAN、MERCEDES-BENZ、BMW
クルマを設計する上で重要となるパッケージング
エンジン(内燃機関)で走るクルマの場合、現在では前輪駆動(FF)が圧倒的多数派だ。後輪駆動だとそれが「売りモノ」になるくらいで、スポーツカーや高級車など、ちょっと特別なクルマにしか採用されなくなって久しい。
ところが、最近登場した電気自動車(EV)をみると、モーターをリアに搭載した後輪駆動が多い。話題のホンダ e、VWのID.3がそうだし、テスラもベースの2WD仕様は後輪駆動。元祖EVのi-MiEVも後輪駆動だったし、BMW i3もそうだ。
これはなぜだろう?
この謎を解くには「パッケージング」という視点から考えるのがいいと思う。
「パッケージング」とは、クルマの中に人間の乗るスペースや機械部品をどうやって効率的に配置するかという、いわば「詰め合わせ技術」のこと。人間のスペースが最優先だからクルマの中は意外に隙間だらけに思えるが、そのしわ寄せでじつは機械部分はぎっちぎち。
パッケージングはクルマを設計する上で基本レイアウトを決める重要な作業なのだ。
従来のクルマだと、まずは人間の乗るスペースを確保し、次にそれ以外の最大の部品、つまりエンジン(内燃機関)をどこに載せるかを決める。
一部のスポーツカー系をのぞけば、エンジンはフロントのボンネットの中。横に置いて前輪を駆動すればFF、縦に置いてプロペラシャフトで後輪を駆動すればFR。そんな感じで基本レイアウトが決まってゆくわけだ。
空間利用効率に優れるEV
では、EVの場合はどうか。
EVでもっともスペースを喰う部品は駆動用バッテリーだが、これは床下に搭載するのがセオリーになっている。というか、現在のところ50kW/hを超えるような大容量バッテリーは、他に搭載するスペースがないというのが実情だ。
で、バッテリーの床下配置が決まると、次は駆動用モーターをどこに置こうかという話になる。
EVはこの部分の自由度が圧倒的に高い。実物を見れば一目瞭然だが、エンジンに比べると電気モーターははるかにコンパクト。さらに、ラジエター、エキゾーストパイプ、燃料タンクなど、かさばる補機類も必要ない。
フロントに置いて前輪を駆動するもよし、リアに搭載して後輪駆動にするもよし、設計者の意図次第で好きなようにレイアウトできる。
たとえば、内燃機関でリアエンジン・リアドライブのハッチバックを造ろうとすると、専用エンジンを開発してもラゲッジスペースなどのパッケージングはかなり苦しい。ルノー トゥインゴや三菱 iがその例だが、あえてリアエンジンにしたメリットを見出しにくい。
対して、EVはホンダ eやVW ID.3のようなハッチバックボディでも、後部ラゲッジルームにほとんど影響を与えることなくモーター搭載が可能。セダンタイプのテスラだと、フロントフード下にサブトランクのスペースが確保されるほどで、空間利用効率はエンジン(内燃機関)車よりずっと有利なのだ。
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