クルマ好きの間で、まことしやかに伝わる「バネ下重量の軽量化」についての効果。しかし実は、バネ下は軽いほうがいい、とは一概にはいえず、「バネ下軽量化によって現れるデメリット」も結構あるのです。
本稿では、バネ下質量の軽量化の真実と、一般道で一般的なユーザーが感じることのできる効果について、考えていきたいと思います。
文/吉川賢一、写真/NISSAN、TOYOTA、HONDA、足成
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■軽くすれば万事いい、というわけではない
タイヤ・ホイールは路面形状に沿って動き回るパーツですので、バネ下の軽量化は、主に乗り心地や音振といった「快適性」に影響してきます。
一般的に、タイヤやホイールといったバネ下にある重量物が重くなるほど、少し荒れた路面を走った際、サスペンションが路面の凹凸を吸収しきれず、車体側が揺らされる現象が増します。
乗り心地の用語で、「バネ下のバタつき」と表現される現象です。自動車メーカーのテストドライバーは、ホイール質量が1kgでも変わるならば、バネ下のバタつきによる車体の揺れを抑制するため、ダンパーのチューニングもセットで変更したくなるといいます。
しかし、軽くすれば万事いい、というものではありません。バネ下質量が変わると、バネ下の質量とタイヤ縦バネで決まる、「バネ下共振周波数」が変わります。これによって、走行中にブルブルとした車体振動が生じてしまう可能性があるのです。
クルマには、エンジンやトランスミッション、サスペンションメンバー、排気管など、様々な構造物がゴムマウント(バネ要素)を介して搭載されており、それぞれに固有値(固有振動数)があります。この固有値同士が重なると、ある走行条件に至った際に、異常振動を生じてしまいます。
自動車メーカーでは、これらの固有値同士がぶつからないよう、固有値を分散させる振動設計を必ずしています。
しかし、ユーザー側でメーカーの想定してない重さのホイールに変えることでバネ下質量が大きく変わり、それによって固有値が重なってしまうことが起きると、車体がブルブルするような異常振動を引き起こす可能性があるのです。
ホイールだけでなく、タイヤのインチアップや、空気圧が変わっても(=タイヤの縦バネが変わる)、固有値の分散設計が想定した範囲を外れ、異常振動が発生するリスクもあります。「バネ下を軽量化したのにどこか走りがすっきりしない」ときは、こうした不具合が起きている可能性があります。
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