三菱デリカD:5の強みと弱味 唯一無二の個性 なぜ追随しない?


デリカD:5 3つのデメリット

 これらのメリットがある一方で、デリカD:5には欠点も伴う。ディーゼルエンジンは高効率だが、ユーザーによっては違和感を抱く。実用回転域の駆動力が高い代わりに、3500回転付近から回転の上昇が鈍るためだ。

 ガソリンエンジンのように伸びやかには回らない。1400~1800回転で巡航中に緩くアクセルペダルを踏み増した時などは、動力性能が高まると同時に、ディーゼル特有の少し粗いノイズも響く。

 デリカD:5のディーゼルは、回転感覚やノイズが古典的だ。そこに不満を感じるユーザーにとって、ガソリンエンジンが廃止されて選べないことも欠点になってしまう。

デリカD:5の最小回転半径5.6mと大回りであり、狭い場所での運転感覚とボディの左側面の死角に注意したい(デリカD:5 全長4800mm×全高1875mm×全幅1795mm)

 狭い道の運転感覚にも注意したい。全長が4800mm、全幅は1795mmだからボディは大柄ではないが、最小回転半径は5.6mで大回りだ。視線の位置が高めだから、遠方を見やすい半面、ボディ左側面の死角は拡大する。購入時には、縦列駐車などを含めて、狭い場所での運転感覚を確かめたい。

 使い勝手では乗降性が悪い。最近は床を平らに仕上げたミニバンも低床設計になり、路面から床に直接足が届く。しかしデリカD:5は設計が古く、最低地上高も十分に確保したから床が高い。サイドステップ(小さな階段)を介して乗り降りする。

 このほか3列目シートを左右に跳ね上げて格納する時には体力を要する。設計の新しいミニバンとは違って、軽く持ち上がらない。

マイナーチェンジが行われた際に、インパネ周辺の質感は高まった。衝突被害軽減ブレーキは向上したものの、自転車を検知することはできない

 マイナーチェンジを経てインパネ周辺の質感は高まったが、助手席の前側に装着されていたフタ付きのアッパーボックスは省かれた。衝突被害軽減ブレーキは進化したが、自転車を検知する機能はない。

 デリカD:5にはこれらの欠点が散見されるが、いずれも重大な課題ではない。走行安定性、乗り心地、操舵感は、2019年に実施された比較的規模の大きなマイナーチェンジで改良された。つまり選ぶ価値の高いミニバンになっている。

 それなのにほかのメーカーは、デリカD:5の「ミニバン×SUV」というカテゴリーに参入してこない。フリードはクロスター、シエンタはグランパーを設定するが、いずれも外観を若干SUV風に変更した程度で、デリカD:5とは違う。

「ミニバン×SUV」が登場しない理由

 SUVが人気なのに他メーカーから「ミニバン×SUV」が登場しない背景には、3つの理由がある。

 まず最低地上高を高めてSUV風の車種に仕上げるには、床面や足まわりまで強化せねばならないことだ。最低地上高に余裕があれば、下まわりを擦らずに悪路へ乗り入れられてしまう。

 単純に車高を持ち上げただけでは、ボディや足まわりの耐久性が不足する心配がある。最低地上高の拡大は、信頼性を高めるために手間を要する。

SUV風ミニバンではなく、3列仕様のSUVで十分という見方もある。ミニバンより狭いが、多人数乗車と荷物積載が可能だからだという

 2つ目の理由は「ミニバン×SUV」に対するニーズだ。一般的なSUVも、ワゴン風のボディスタイルによって空間効率が優れている。エクストレイル/CR-V/CX-8などは、3列シート仕様も用意する。

 SUVの3列目は、ミニバンではないから窮屈だが、一応は多人数乗車と荷物の積載が可能だ。「ミニバンにSUV風のグレードを用意しなくても、SUVの3列仕様で十分」という見方も成り立つ。

 3つ目の理由は今後のミニバン需要だ。ミニバンの一部は海外でも売られるが、ほかのカテゴリーに比べると国内向けだ。

 今後の国内市場は少子高齢化もあり、ミニバン需要を見通しにくい。そのためにデリカD:5やエルグランドは、10年以上にわたりフルモデルチェンジしていない。従ってミニバンは、ボディバリエーションも基本的に標準ボディとエアロ仕様で対応している。

ミニバン需要が見通しにくい状況になっているためか、エルグランドは2020年にマイナーチェンジはしたものの、フルモデルチェンジまではしなかった

 しかし軽自動車のスペーシアは、SUV風のギアで売れ行きを伸ばした。フリードクロスターのように、最低地上高を高めずに外装パーツを装着するSUVモデルの投入は、試みる価値があるだろう。

 特にステップワゴンは、ホンダのブランドイメージがコンパクトな車種に偏ったこともあり、売れ行きが伸び悩む。セレナも最近は売れ行きが下降気味だ。

 これらのミニバンに、水洗いの可能な荷室などを備えたSUV風のグレードがあると、多くのユーザーに喜ばれるだろう。何よりデリカD:5の根強い人気が、「ミニバン×SUV」の可能性を物語っている。

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