外観×悪路走行力が魅力
まずデリカD:5の一番のメリットは、SUVに限りなく近いミニバンであることだ。ヘッドランプを縦長に配置したフロントマスクには、独特の存在感や野性味が漂う。今はSUVの人気が高いので、このフロントマスクはデリカD:5の大切な魅力だ。
そしてデリカD:5は外観だけでなく、悪路走破力もSUV並みに優れている。プラットフォームはアウトランダーやエクリプスクロスと共通で、4WDにはロックモードも採用した。前後輪に駆動力を振り分ける多板クラッチの締結力を強め、悪路走破力を向上させている。
最低地上高(路面とボディの最も低い部分との間隔)も185mmを確保したから、悪路のデコボコを乗り越えやすい。「ミニバンスタイルのSUV」と呼べる外観と悪路走破力が一番の魅力だ。
2つ目のメリットは、直列4気筒2.2Lクリーンディーゼルターボを搭載することだ。国産ミニバンでディーゼルを選べるのは、今はデリカD:5とグランエースのみになる。
しかも動力性能は最高出力が145馬力(3500回転)、最大トルクは38.7kg-m(2000回転)とされ、後者の数値はガソリンエンジンに当てはめると3.8Lに相当する。
最大トルクを実用域の2000回転で発生するから、アクセルペダルを軽く踏み増すだけで駆動力が沸き上がる。この動力性能は、車両重量が1900kgを超えるデリカD:5と相性が良い。悪路をゆっくりと進む場面でも運転しやすい。
WLTCモード燃費は12.6km/Lだ。ディーゼルが使う軽油の価格はレギュラーガソリンに比べて1L当たり約20円安い。
そのためにデリカD:5の燃料代は、アルファードハイブリッドやコンパクトミニバンのシエンタ(ノーマルエンジン車)と同等になる。動力性能が高く、なおかつ経済性も優れている。
デリカD:5のメリットとして、車内の広さも挙げられる。背の高いボックス状のミニバンだから、空間効率も優れている。全長が4800mm以下の車種では、車内が最も広い。3列目シートの頭上と足元にも余裕があり、大人の多人数乗車に対応できる。
3列目を左右に跳ね上げて格納すれば、広い荷室に変更することも可能だ。1/2列目のシートを使って4名で乗車して、車内の最後部には荷物をタップリと積める。
このほか先に述べた数年後に高値で売却できることもメリットだ。三菱の残価設定ローンでは、3年後の残価率(新車価格に占める残存価値の割合)が55%に達する。一般的なミニバンは40~47%だから、三菱が月々の返済額を抑えるために残価を高めていたとしても、好条件で売却できる。
デリカD:5 3つのデメリット
これらのメリットがある一方で、デリカD:5には欠点も伴う。ディーゼルエンジンは高効率だが、ユーザーによっては違和感を抱く。実用回転域の駆動力が高い代わりに、3500回転付近から回転の上昇が鈍るためだ。
ガソリンエンジンのように伸びやかには回らない。1400~1800回転で巡航中に緩くアクセルペダルを踏み増した時などは、動力性能が高まると同時に、ディーゼル特有の少し粗いノイズも響く。
デリカD:5のディーゼルは、回転感覚やノイズが古典的だ。そこに不満を感じるユーザーにとって、ガソリンエンジンが廃止されて選べないことも欠点になってしまう。
狭い道の運転感覚にも注意したい。全長が4800mm、全幅は1795mmだからボディは大柄ではないが、最小回転半径は5.6mで大回りだ。視線の位置が高めだから、遠方を見やすい半面、ボディ左側面の死角は拡大する。購入時には、縦列駐車などを含めて、狭い場所での運転感覚を確かめたい。
使い勝手では乗降性が悪い。最近は床を平らに仕上げたミニバンも低床設計になり、路面から床に直接足が届く。しかしデリカD:5は設計が古く、最低地上高も十分に確保したから床が高い。サイドステップ(小さな階段)を介して乗り降りする。
このほか3列目シートを左右に跳ね上げて格納する時には体力を要する。設計の新しいミニバンとは違って、軽く持ち上がらない。
マイナーチェンジを経てインパネ周辺の質感は高まったが、助手席の前側に装着されていたフタ付きのアッパーボックスは省かれた。衝突被害軽減ブレーキは進化したが、自転車を検知する機能はない。
デリカD:5にはこれらの欠点が散見されるが、いずれも重大な課題ではない。走行安定性、乗り心地、操舵感は、2019年に実施された比較的規模の大きなマイナーチェンジで改良された。つまり選ぶ価値の高いミニバンになっている。
それなのにほかのメーカーは、デリカD:5の「ミニバン×SUV」というカテゴリーに参入してこない。フリードはクロスター、シエンタはグランパーを設定するが、いずれも外観を若干SUV風に変更した程度で、デリカD:5とは違う。
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