三菱のミニバン、デリカD:5はデリカスペースギアの後継モデルとして2007年1月にデビュー。つまり、デビューから14年が経過しようとしているわけだが、その魅力はいまだに褪せることなく、ユーザーを魅了している。
デリカD:5はライバル不在の孤高の存在であると同時に、デビューから10年以上経過してなおも魅力を備えているという稀有な存在でもある。
本企画では、デリカD:5をオススメする5つの理由と購入するならどのモデルがいいのか、買い得モデルについて渡辺陽一郎氏が指南する。
文/渡辺陽一郎、写真/MITSUBISHI、平野学、池之平昌信、中里慎一郎
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ミニバンながら本格オフローダー
ミニバンはファミリーカーの代表的な存在だが、デリカD:5はほかの車種と持ち味が違う。ミニバンでありながら悪路走破力も高く、SUVのデザインと機能を併せ持つからだ。
デリカD:5の最低地上高(路面とボディの最も低い部分との間隔)は185mmで、悪路のデコボコも乗り越えやすい。現行型の駆動方式は4WDのみになり、電子制御式多板クラッチを介して、前後輪に最適な駆動力を配分する。
4WDには走行モードの切り替え機能も備わる。「4WDロック」を選ぶと、多板クラッチの締結力が強まり、走破力をさらに高められる。デリカD:5は、ミニバンスタイルのSUVとも表現できるだろう。
個性的で存在感抜群のエクステリア
遠方から見てもスグにわかる独特の外観も特徴だ。
デリカD:5は2007年に発売されたが、2019年にはフルモデルチェンジに匹敵する改良を受けた。外観、インパネ周辺の形状、動力性能、走行安定性、乗り心地、安全装備まで、すべての機能に改善を施した。
外観で注目されるフロントマスクは、今の三菱車に共通するダイナミックシールドのデザインだ。LEDヘッドランプは縦方向に2列並び、外側には5灯のロービーム、内側には4灯のハイビームを配置した。
一般的に上級ミニバンの外観では、光沢の強いメッキグリルとエアロパーツを装着することが多いが、デリカD:5はダイナミックシールドの採用で独特の精悍な顔立ちに仕上げた。
ミニバンで最も優れた悪路走破力と、その性能を表現するSUVの力強い外観が一番の特徴だ。
貴重なディーゼル搭載ミニバン
直列4気筒2.2Lクリーンディーゼルターボエンジンにも注目したい。ディーゼルを搭載するミニバンは、デリカD:5以外ではグランエースのみだ。貴重な存在ともいえるだろう。
ディーゼルの最大トルクは38.7kgmだから、3.5Lのガソリンエンジンに相当する。この駆動力を実用域の2000回転で発揮するから、ゆっくりと着実に進む悪路でも運転しやすい。車両重量は約2トンに達するが、パワー不足は感じない。
燃費性能も優れ、WLTCモード燃費は12.6km/Lだ。
軽油価格はレギュラーガソリンに比べて1L当たり約20円安いので(2020年10月中旬の全国平均価格は115円/L)、1km走るための走行コストは9.1円だ。
この金額は、2Lのノーマルガソリンエンジンを搭載するヴォクシーの2WD仕様と同等になる。
つまり、デリカD:5は駆動力が高く、4WDも搭載する割に、燃料代を抑えられる。
ミニバンとしての快適性にも優れている
そしてデリカD:5は、多人数乗車時の居住性も優れている。
3列目シートのスライド位置を後端まで寄せると、各座席の足元に十分な空間を確保できる。身長170cmの大人が多人数で乗車した場合、2列目に座る乗員の膝先空間を握りコブシ2つ分に調節すると、3列目には握りコブシ2つ半の余裕ができる。
居住性はセレナやヴォクシーを上まわり、全長が4800mm以下のミニバンでは、デリカD:5が最も快適だ。
従って多人数で乗車して、長距離を移動する用途にも適する。多人数で乗車するとエンジンに大きな負担が生じるが、ディーゼルは実用回転域の駆動力が高いから登坂路でも不満を感じにくい。
燃費効率も優れているから、長距離を移動しても燃料代はさほど気にならない。
悪路走破力が高いので、長距離ドライブの途中で天候が悪化しても、不安を感じにくい。
数年後の売却が高値安定だから安心
このようにデリカD:5は、外観が個性的で走破力も高めながら、一般的なミニバンとしての使い勝手や経済性も優れている。
そのためにデリカD:5には熱心なファンが多く、中古車市場での人気も高い。購入して数年後の売却額も高値安定型だ。
デリカD:5の残価設定ローンの3年後の残価率(新車価格に占める残存価値の割合)は55%と高い。一般的には3年後であれば45%前後の車種が多いので、デリカD:5なら高い金額で売却できる。
ということで残価設定ローンを使うユーザーにも有利だ。数年後の残価を除いた金額を返済するので、残価が高ければ、月々の返済額を安く抑えられる。
このように高値で売却できることから、デリカD:5を何台も乗り継ぐユーザーも多い。購入した3~5年後に、高い金額で手放せると、改めて新車を購入したくなる。
そのためにデリカD:5は、発売から10年以上を経過する割に売れ行きが堅調だ。
2020年度上半期(2020年4~9月)の登録台数は、コロナ禍の影響もあって600台少々だが、2019年(暦年)の1カ月平均は約1700台に達した。前述のとおり高値で売却できることもあり、好調な売れ行きが保たれている。
どのグレードの買い得感が高いのか?
デリカD:5のグレード構成は、標準ボディと、シンプルな形状のメッキグリルを装着したアーバンギアに大別される。
エンジンは2.2Lクリーンディーゼルターボのみで、駆動方式も4WDに限られる。
全長が4800mm、全幅は1795mmのボディサイズ、最低地上高の185mmなどは、標準ボディ、アーバンギアともに共通だ。従って両タイプの違いは、フロントマスクや外観の装備になる。
最も推奨度の高いグレードは、両タイプともにGパワーパッケージだ。価格は標準ボディが423万5000円、アーバンギアは436万2600円だから、後者が12万7600円高い。
アーバンギアはフロントグリルなどのデザインが異なり、ボディサイドやバンパーにはエアロ形状のパーツも装着されるから、価格も上乗せされた。
価格差の12万7600円は妥当だ。標準ボディとアーバンギアの選択は、好みに応じて行えばいい。
Gパワーパッケージの価格は、アーバンギアも含めて、Gに比べると22万円高い。
この価格差で、電動テールゲート、乗降性を向上させる電動サイドステップ、Gに5万5000円でオプション設定される運転席パワーシートと運転席&助手席シートヒーターが加わる。
プラスされる装備と価格のバランスは取れているが、Gパワーパッケージが特に割安というわけではない。
そこで標準ボディでは、電動サイドステップに非装着のレスオプションも用意した。
非装着なら価格が7万7000円安くなり、電動テールゲート+運転席パワーシート+運転席&助手席シートヒーターを14万3000円で装着できる。アーバンギアにも、同様のレスオプションを設定してほしい。
Gパワーパッケージ+安全装備が最強!!
Gパワーパッケージで注目されるのは、Gに比べるとオプション装備の選択肢も広がることだ。
後方の安全を確保する後側方車両検知警報&後退時車両検知警報は、Gには用意されないが、Gパワーパッケージであれば4万9500円で装着できる。
ベストな選び方も、Gパワーパッケージに、この安全装備をオプション装着するものだ。
6万500円のマルチアラウンドモニター&モニター内蔵型自動防眩ルームミラーも安全性を高める。デリカD:5は視線の位置が高いために遠方は見やすいが、ボディの左側面と真後ろの死角は大きい。マルチアラウンドモニターは、この死角を効果的に補う。
デリカD:5は2019年のマイナーチェンジで機能を幅広く向上させ、その中でも特に注目されるのが安全装備と運転支援機能になる。 オプションを利用して、そこをさらに充実させる選び方を推奨したい。
価格は高くなるが、前述のとおり有利な条件で売却できるため、長期間で捉えるとある程度は取り戻せて割高感も抑えられる。
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