アルファード 2020年ミニバン販売NO.1! 天下はいつまで続くのか

 2020年の小型/普通車登録台数ランキングを見ると、アルファードが5位に入った。

 1位:ヤリスシリーズ(ヤリスクロスやGRヤリスを含む)、2位:ライズ、3位:カローラシリーズ(継続生産のアクシオ&フィールダーなどを含む)、4位:フィットという順番。アルファードは売れ筋価格帯が350~500万円の高価格車にもかかわらず5位に入ったというのは凄いことだ。

 またアルファードは、3列シートミニバンの最多販売車種でもある。2020年のアルファードの登録台数は9万台を超えており、1ヵ月平均でも7562台だ。この登録台数は、フリード(1ヵ月平均で6357台)やシエンタ(6057台)を上まわる。

 なぜアルファードがこれほどまでに売れるのか? サイズの大きいLクラスミニバンで、350万円からという高額車なのになぜ売れるのだろうか? 

 そこでモータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が、アルファードの天下はいつまで続くのか、徹底解説する。

文/渡辺陽一郎 写真/トヨタ、日産 CGイラスト/ベストカー編集部

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アルファードが好調に売れた背景は?

2020年の小型/普通車登録台数ランキングで、アルファードは5位に入った。ミニバンではもちろんナンバーワンだ

 アルファードが好調に売れた背景には3つの理由がある。

 1つ目は商品力が優れていることだ。アルファードは、全長が4950mm(SやSRなど)、全幅は1850mmと大柄で、全高も1935~1950mmに達する。フロントマスクのデザインは存在感が強く、ボリュームの伴うミニバンスタイルを生かして外観を立派に仕上げた。

 内装もインパネやシートが上質で、車内はグランエースを除くと国産ミニバンでは最も広い。3列目の座り心地は2列目と比べて見劣りするが、頭上と足元は広く、多人数で長距離ドライブに出かけられる。

 背が高く全幅もワイドだから、3列目シートを左右に跳ね上げると、ボックス状の広い荷室に変更できる。このようにアルファードは、Lサイズミニバンの特徴とされる居住性や積載性と、外観の存在感やカッコ良さを両立させた。その結果、売れ行きも伸びている。

 2つ目の理由は、2020年5月から、国内のトヨタ全店が全車を売る体制に変わったことだ。現行型が発売された時には姉妹車のヴェルファイアが多く売られていたが、マイナーチェンジでアルファードがフロントマスクをさらに派手に改めると、販売順位が逆転した。

 そして2020年5月以降は、以前はアルファードやヴェルファイアを販売していなかったトヨタ店とトヨタカローラ店でもアルファードが好調に売れ始め、ネッツトヨタ店では、従来の専売車種になるヴェルファイアからアルファードへ乗り替えるユーザーまで見られるようになった。

販路の拡大も販売好調の理由のひとつだ

 要は以前のアルファードは、トヨペット店の専売で全国の約900店舗が扱っていたが、2020年5月以降は4600店舗で購入が可能になった。

 そのために販路が拡大されて売れ行きも急増している。特に2020年9~11月は、アルファードの1ヵ月の登録台数が1万台を超えた。2020年の下半期(7~12月)も、コロナ禍の影響を受けながら登録台数は前年の1.6倍に増えている。

 その代わり全店で全車を扱う体制に移行した後、プリウスやアクアは売れ行きを下げた。クラウンもアルファードにユーザーを奪われたこともあり、2020年は前年と比べて登録台数を約40%減らしている。その結果、クラウンをSUV化する話まで聞かれるようになった。

 このように全店が全車を扱うと、人気車は売れ行きをさらに伸ばし、そうでない車種は落ち込む。

 アルファードは前年の1.6倍売れたが、ヴェルファイアは、基本的に同じクルマなのに前年の半分だ。直近の2020年12月の登録台数を見ると、ヴェルファイアはアルファードの13%しか売れていない。全店が全車を扱うと、販売しやすい人気車だけが売れる傾向が強まり、同じメーカー内で販売格差が拡大する。

 そのために小型/普通車販売ランキングの上位にはトヨタ車が勢ぞろいするが、2020年の売れ行きは伸びていない。トヨタはコロナ禍による落ち込みが他メーカーよりも小さかったが、それでも約6%減った。

 アルファードについても、姉妹車のヴェルファイアを含んだ登録台数で計算すると、全店扱いに伴う増加は3%だ。アルファードが増えたぶんだけヴェルファイアは減り、大幅な販売増加にはつながっていない。

 アルファードが好調に売れた3つ目の理由は、ライバル車の商品力が低く、登録台数も伸びないことだ。アルファードのライバル車は、全長が4810~5000mm/全幅は1800~1900mmに位置するミニバンで、該当する車種はエルグランドとオデッセイのみだ。


■2020年1~12月におけるアルファードの新車販売台数
※順位は新車販売の総合順位、カッコ内は対前年同月比
・1月/12位、5147台(87.1%)。ヴェルファイア:30位、2001台(55.3%)
・2月/14位、5241台(92.7%)。ヴェルファイア:39位、1717台(47.2%)
・3月/14位、7885台(103.8%)。ヴェルファイア:35位、2719台(58.8%)
・4月/6位、5739台(98.6%)。ヴェルファイア:24位、1690台(54.6%)
・5月/5位、5750台(110.6%)。ヴェルファイア:23位、1378台(48.6%)
・6月/5位、6835台(134.3%)。ヴェルファイア:36位、1192台(40.4%)
・7月/6位、8448台(135.6%)。ヴェルファイア:38位、1289台(38.4%)
・8月/5位、7103台(153.5%)。ヴェルファイア:36位、1226台(59.4%)
・9月/4位、1万436台(160.0%)。ヴェルファイア:40位、1273台(36.6%)
・10月/5位、1万93台(196.7%)。ヴェルファイア:38位、1261台(56.8%)
・11月/3位、1万109台(175.9%)。ヴェルファイア:41位、1241台(50.1%)
・12月/5位、7962台(153.6%)。ヴェルファイア:43位、1017台(44.5%)

ライバル不在? エルグランドと比べてみると?

ビッグマイナーチェンジを受けた日産 エルグランドだが、若干不満が残る内容となった

 日産のLクラスミニバンのエルグランドが2020年10月12日にフロントマスクを大幅に変更するビッグマイナーチェンジを受けた。

 2010年のデビューだから、10年目での初の大幅テコ入れだ。フロントマスクは刷新されて存在感を強め、2台先を走る車両も検知可能な前方衝突予測警報など、安全装備も充実させた。

 しかし、e-POWERを含めてハイブリッドは用意されず、運転支援機能も古く、プロパイロットも設定されない。

 車内に入ると、1/2列目シートは快適だが、3列目はLサイズミニバンなのに膝の持ち上がる座り方で窮屈だ。3列目は背もたれを前側に倒して格納する方式だから、荷室の床が畳んだシートの厚みで持ち上がり、自転車などの大きな荷物を積みにくい。居住性や積載性とメカニズムの両方に不満が残る。

 エルグランドの販売台数を見ると、マイチェン直後の10月(10月12日発売)は387台(対前年同月比145.5%)、11月が375台(対前年同月比109.0%)と若干伸びたものの、12月433台(対前年同月比73.6%)とマイナーチェンジ効果が出ていない。やはりe-POWERやプロパイロットなしでは厳しい。

2020年11月にマイナーチェンジしたオデッセイは?

こちらもマイナーチェンジを受けたホンダ オデッセイ。機能的にはアルファードより優れた部分も多い

 2020年11月6日、ホンダは上級ミニバン「オデッセイ」のマイナーチェンジを発表、同日より発売を開始した。現行型5代目のオデッセイとしては、2017年以来、3年ぶり2度目のマイナーチェンジとなる。

 オデッセイは商品力が高い。低床設計により、スライドドア部分の床面地上高を約350mmに抑えた。アルファードは435mmだからオデッセイは85mm低い。アルファードではサイドステップ(小さな階段)を使って乗り降りするが、オデッセイならその必要はなく、乗降性も優れている。

 車内に入ると3列目シートの床と座面の間隔が十分に確保され、広さではアルファードが勝るが、3列目の着座姿勢と座り心地はオデッセイが優れている。多人数で乗車した時も、オデッセイの方が快適だ。

 そしてオデッセイは低床設計だから、1300mmの室内高を確保しながら、全高を1695mmに抑えた。アルファードに比べて重心が低く、走行安定性も優れる。ミニバンにありがちな腰高感も意識させず、ボディが左右に振られにくいから、乗り心地にも良い効果をもたらした。

 このようにオデッセイは、機能を総合的に判断すると、アルファードよりも優れた部分が多い。

 それなのに2020年の登録台数は、1ヵ月平均で1200台少々だ。2020年11月が1720台、12月が1140台で、対前年比同月比はぞれぞれ213.4%、127.7%と少しはマイナーチェンジ効果はあったにせよ、売れ行きはアルファードに比べると約10分の1規模だ。

マイナーチェンジ前のオデッセイ。好き嫌いはあるだろうが、マイナーチェンジ前も後も見た目のインパクトはアルファードに一歩譲る

 オデッセイが売れない理由は複数ある。

 まず外観の存在感がアルファードよりも乏しいことだ。オデッセイは床と天井が低いから、低重心になって安定性が良い。ボディは軽くなって空気抵抗も減るから、動力性能や燃費にも良い影響を与えて乗降性も向上するが、販売面で有利とはいえない。

 外観の立派さを演出しにくく、車内に入った時の見晴らし感覚も薄れるからだ。

 アルファードは現行型でプラットフォームを刷新したから、床と天井を下げることも可能だったが、敢えて先代型と同様のレイアウトを採用した。オデッセイのように機能的な価値を追求するより、情緒に訴えたほうがたくさん売れるからだ。

 この理屈よりもユーザーの本音を大切にするクルマ造りは、昔はトヨタの得意な戦略だった。最近のトヨタ車は、海外向けが増えたこともあってこのようなクルマ造りがあまり見られなくなったが、アルファードには息付いている。

 そしてエルグランドが大幅改良をあまり行わなかったり、オデッセイが優れた商品なのに好調に売れない背景には、かつての販売系列を撤廃した弊害もある。

 前述の通り全店が全車を扱うと人気車は売れ行きを伸ばし、そうでない車種は低迷する。エルグランドやオデッセイは後者になり、メーカーも販売にあまり力を入れない。

 特にホンダの場合、N-BOX+N-WGN+フィット+フリードの販売台数を合計すると、2020年に国内で売られたホンダ車の69%に達する。

 オデッセイ、ステップワゴン、ヴェゼルなどは、残りの31%に含まれてしまう。軽自動車やコンパクトな車種が売れ行きを伸ばした結果、ホンダのブランドイメージまで小さなクルマに偏り、オデッセイなどが優れた商品に仕上がっても売りにくくなった。

アルファードの天下は当分続く

アルファード購入を考える場合は、オデッセイとの乗り比べはしておくべきだろう。売れ行きで判断するのではなく、やはり自身の感覚で決めるのが一番だ

 したがってアルファードを買う時は、少なくともオデッセイとの乗り比べは試したい。アルファードは乗降性や走行安定性が見劣りしたり、視線が高いために遠方を見やすい半面、左側面の死角は拡大する。3列目の座り心地も異なる。オデッセイを試乗するとアルファードの欠点に気付く。

 アルファードは多くのユーザーが使っている以上、優れたミニバンと判断されるが、売れないからオデッセイがダメとはいえない。乗り比べて両車の優劣を把握したうえで購入の判断をしたい。

 販売面では今後も当分の間アルファードの天下が続くが、トヨタも日産やホンダのように、全店が全車を扱う販売体制を採用してしまった。かつて系列化の時代に人気の高かったエルグランドやオデッセイが2000年代に売れ行きを下げたように、今後はアルファードの売れ行きにも変化が生じるかもしれない。

 アルファードとヴェルファイアの販売格差を見ればわかる通り、全店が全車を扱う販売体制は、残酷な結果をもたらすこともある。

次期アルファードのデビューは2022年春!

大きく口を開けたフロントグリルはますます迫力を増す次期アルファード(CGイラストはベストカーが製作したもの)

文/ベストカーweb編集部

 トヨタとしては力を入れて、次期アルファードの開発を行っており、2022年春のデビュースケジュールで計画を進めている。トヨタは販売チャンネル統合により車種統合の方向にシフトしているが、次期型は販売面で”強さ”を見せるアルファードに統合する。

 アルファード/ヴェルファイアの販売比率はおおよそ8対2なので当然の判断だろう。ただし、ヴェルファイアファンのために、「カスタム」仕様を設定するのはノア/ヴォクシーのモデルチェンジと同様だ。

もちろん3列シートの大型ミニバンという基本コンセプトにブレはない(CGイラストはベストカーが製作したもの)

 横置きエンジンのFFという基本レイアウトに変更はないが、エンジン搭載位置を低くするなど、より低重心化を実現するとともに、サスジオメトリーを見直し、操安性を追求する。

 全長は4950mm程度でホイールベースは現行型の3000mmより若干延長されそうだ。全高は現行型では1950mmだが、フロアが低くなり、室内高は変わらぬまま20mm程度低くなる。

 アルファードはさらに豪華に、威風堂々と、そしてスポーティに進化する。今わかっている情報では、新型アルファードのデビュー時期は2022年春頃。今後、さらなる新情報が入り次第、随時お届けすることにしよう。

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