ノーマルタイヤは純正で装着されているが、スタッドレスタイヤは基本的にアフター品としてタイヤショップで購入することになる。
そこで気になるのが「空気圧」だ。最初こそタイヤショップで調整してもらえるものの、その後は自らで空気圧を調整する必要が出てくる。
が、ノーマルタイヤとスタッドレスタイヤでは、サイドウォールそしてトレッド面の硬さが異なるし、ノーマルタイヤと同じ空気圧で大丈夫なのか? と不安に思っている人も多いのではないだろうか。
そこで今回は、雪上性能、氷上性能、乾燥路面での走行性能などを考えた時に、スタッドレスタイヤの空気圧をどのように調整するべきか指南していきたい。
文/斎藤聡
写真/Adobe Stock(FRANK@Adobe Stock)、GOODYEAR
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■その答えは!? スタッドレスタイヤの正しい空気圧
スタッドレスタイヤは買ったけれど、空気圧ってどのくらいに設定したらいいのだろう? そんな不安を感じている人、案外少なくないのではないでしょうか。
タイヤ交換をしたら、果たして空気圧は今までどおりでいいのか? たぶん大丈夫だろうと思うけれど確信が持てない、ということなのだろうと思います。
結論を先に言ってしまえば、タイヤサイズが同じならば、基本的にはそのクルマの指定空気圧に準じてください。例えば230kpa(キロパスカル)となっていたら、230kpaでOKです。230kpaは2.3キロと考えてOKです。
空気圧が少ないとタイヤのショルダー部といわれる両サイドの部分に負担がかかり、偏摩耗の原因になります。またタイヤの剛性が低くなってしまうので、空気圧が著しく少ないとヨレたりグニャついたりして操縦性も悪化します。
逆に空気圧が高いと、乗り心地がコツコツと硬いものになったり、3.0キロ以上充填してしまうとタイヤの中央が偏摩耗する原因になったり、直進性が悪くなる原因にもなります。
±0.2キロ程度は調整の幅ですが、基本は指定空気圧です。というのは、スタッドレスタイヤは、雪の路面ではトレッドパターンの性能が大きなウエイトを占め、氷の路面では接地面積が性能を大きく左右します。
もう少し詳しく説明すると、雪の路面はトレッドブロックが雪の路面を踏みしめる力(≒雪柱せん断力)が大きいほうがグリップを出しやすいのです。というわけでタイヤの幅は細身のほうが、接地面圧が高くなるので有利になります。
逆に氷の路面は、ゴム(≒コンパウンド)の性能が大きく左右するので、同じコンパウンドの性能なら接地面積の広さが性能を左右します。トレッド幅は広いほうが有利になります。
スタッドレスタイヤは、雪道と氷の路面の背反する2つの性能をバランスさせて作られています。空気圧が適正値から外れてしまうと、氷と雪両方の性能を考慮して作ったトレッドデザインのバランスを崩してしまう可能性があるのです。
特に氷の路面では接地面積とともに、「サイプ」と呼ばれる細かな切れ込みのエッジがグリップ性能を発揮します。空気圧の過不足で接地面圧分布が悪くなるとエッジ効果が得にくくなりグリップ性能が低下することも考えられます。
というわけで、適正な空気圧≒指定空気圧がおすすめということです。
■知っておきたいタイヤの知識アレコレ
注意したいのは、装着しているタイヤと違うサイズのスタッドレスタイヤをつける場合です。
スタッドレスタイヤは、インチアップするメリットがあまりないので、同サイズの履き替えかインチダウンが多いと思います。サマータイヤにオプションの大径サイズを装着しているけれど、スタッドレスタイヤは純正サイズを選ぶ場合などです。
純正サイズは、そのタイヤの指定空気圧にすればOKです。クルマのドアやドアのボディ側に指定空気圧を示したシールが貼られています。
ちなみにタイヤサイズの意味ですが、タイヤサイズが205/60R16 92Ⅴの場合、タイヤの幅(トレッド)が205mm、偏平率≒タイヤの厚みが205mmの60%。Rはラジアルタイヤであることを示しており、16は組み合わせるホイールの径が16インチということです。
そして92というのがそのタイヤが受け持てる荷重指数。そのうしろのVが速度記号で、そのタイヤが許容する最高速度を示しています。Vは240km/hです。ちなみに、サマータイヤの場合、速度記号はS(180㎞/h)、H(210㎞/h)、V(240㎞/h)、W(270㎞/h)、Y(300㎞/h)といった表記のものが多いと思います。
スタッドレスタイヤとサマータイヤの違いは、スタッドレスタイヤは速度レンジが一般的なタイヤよりも低く設定されているということです。超高速で走ることを想定して作られていないからです。ですから速度記号は自分が装着しているサマータイヤと違っていても問題ありません。
■気を付けたいタイヤの規格による空気圧の違い
それからもうひとつ。タイヤが大径化したことで注意が必要になってきたのがレインフォースド(RFD)タイヤやエクストラロード(XL)タイヤです。
RFD、XLタイヤ(以下XL)は、呼び方は違いますが同じものです。タイヤ内部の構造を強化することでスタンダード規格のタイヤと比べ同じサイズでも高い負荷能力を備えているのが特徴です。
例えば、スタンダードの215/45R17 87Wに対して、XLは215/45R17 91Wとなります。タイヤが17、18、19と大径化し、これに伴ってタイヤの偏平率が45,40、35と高くなっていくと、インチアップしたときにロードインデックスが不足するケースが出てきます。XL規格はこれに対応したものです。
XLは欧州タイヤ規格であるETORTOのXL規格に沿って作られたものです。日本のJATMA規格の空気圧充填範囲が180~240kPa(一部サイズは~250kPa)であるのに対して、ETORTOのスタンダード規格は170~250kPa、XL規格は200~290kPaになっています。
負荷能力は、タイヤの持つロードインデックス(荷重指数)と充填する空気量で決まります。例に挙げたスタンダードタイヤの215/45R17 87Wを、XLの215/45R17 91Wに履き替える場合、スタンダードタイヤの指定空気圧が230kPaなら、スタンダードタイヤの負荷能力を満たす場合XLは240kPa充填する必要があります。
これはタイヤメーカーのHPに、ETORTO規格の対応表があるので参照するのが手っ取り早い方法です。 ちょっと面倒な気がするかもしれませんが、タイヤサイズによっては純正サイズにスタンダード規格とETORTOのXL規格が混在することがあります。またスタッドレスタイヤにXL規格の設定しかない場合があるので、その際は空気圧の設定を調整する必要があります。