■一気にモダン化したクロスオーバーヴィークル
それでは、現行ラーダ・ニーヴァがどのようなモデルなのか、スペックから見ていこう。
コンパクトSUVというよりも個人的には小型クロスカントリーヴィークルと呼びたいニーヴァは、1977年に生産が開始されて以来、基本的な仕様を変えることなく一度もモデルチェンジしていない(車名は微妙に変わっていたりもする)、稀少な“ほったらかし”モデルというべきだろう。
スペックを追って見ていくと、1690ccの排気量のガソリンSOHC直列4気筒エンジンをフロント縦置きとして搭載、副変速機付きの5段MTとともにフルタイム式四輪駆動機構を構成する。最高出力は61ps/5000rpm、最大トルクが129Nm/4000rpmとなる。
ニーヴァの特徴といえるモノコック構造を採用する四角くコンパクトなボディは、全長3640(4140)×全幅1680×全高1640mm、ホイールベースが2200(2700mm)とされる(カッコ内は5ドアの数値)。
3ドアとしてジムニーシエラ(同様に3550×1645×1730mm、ホイールベース:2250mm)から全長が長い程度の違いだから、使いやすさに問題はなさそうだ。
いっぽう、5ドアは全長が4140mm、ホイールベースも2700mmと、コンパクトSUVのトヨタライズ&ダイハツロッキー(3995×1695×1620mm、ホイールベース:2525mm)に近いスペックとなり、どちらも日本市場ではいわゆる5ナンバー枠に収まる。
サスペンションについては、前が独立式のウィッシュボーン/コイルスプリング、後は固定式の5リンク式/コイルスプリングとなり、形式としてはコンベンショナルなオフロード走行に対応可能な仕様となる。
いわゆるオフローダーとしてニーヴァを捉えると、モノコックボディの採用は異端かもしれない。ボディ強度ではフレーム構造を採るモデルには劣っても、生産性の高さやコスト面を含めて、コンパクトモデルとして妥協点を求めたといえる。
■長寿命車は軒並み生まれ変わっている
“ほったらかし”と“長寿命”というのはまったく意味が違うとは思うが、ラーダ・ニーヴァのようにモデルチェンジが極端に少ない長寿命の軍用車両ベースのヘビーデューティモデルを中心に見ていこう。
なんといっても、アメリカ生まれのジープの存在感は際立っている。第二次大戦中の1942年に生産が開始されたオリジナルといえる軍用車両であるウイリスMBを祖として、1987年から現在までFCAグループのジープ・ブランドとして「ラングラー」の名で生き続けてきた。
最近では長寿モデルとして2017年に基本構造を変えることなく11年ぶりにフルモデルチェンジを実施した。
いっぽう、1979年に軍用使用を主たる目的として生まれ、多用途性を備えたメルセデス・ベンツのゲレンデヴァーゲン(独語でオフローダーの意)は、Gクラスの呼び名が1989年から使われ、2018年には40年ぶりにフルモデルチェンジ並みの大幅な改良を受けた。
とはいえ、ボディとフレームを組み合わせた基本構造を踏襲しつつ、メカニズムを時代に即して一新している。
こちらも英国の誇りというべきアルミ製モノコックを採用して進化したランドローバー ディフェンダー(オリジナルのネーミングは、1948年当時は単にランドローバーだった)は、2019年に初のフルモデルチェンジを実施、メカニズムを含めた大幅な変更を受けたことは記憶に新しい。
日本車を見ると、イメージとしてニーヴァに近い存在といえるのが、ご想像の通りスズキのジムニーだ。軽自動車のCCVであるジムニーは1970年に誕生。日常のあらゆる場面で使える万能の足としての役割を担ってきた。
モデルチェンジは1981年、1998年、2018年と少なく、2018年にフルモデルチェンジした現行モデルは4代目となる。
やや番外的ながら、運転手付きのショーファードリブンが主な使用用途であるトヨタ・センチュリーは1967年に誕生以来、1997年のモデルチェンジを経て、2018年に現行型となった。
こうして見ていくと、モデルチェンジが少ない車種では、市場から要求される機能と役割が明確に定まっているがゆえに、姿形を大きく変える必要がなかったともいえる。生産システムの変化や、安全性能、燃費規制など技術的な要求に対応するために必要に応じて進化を遂げてきたことがわかる。
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