ホンダの5ナンバーサイズのミニバンといえばステップワゴン。ノア、ヴォクシー、エスクァイアの三兄弟や日産セレナとともに定番となっている1台である。
しかし、2020年の年間販売台数を見ると、かつての勢いはなく、販売不振が続いている。ノア5万4434台(16位)、ヴォクシー6万9517台(10位)、セレナ6万8648台(11位)に対し、半分ほどの3万4441台(20位)だ。
なぜ、ステップワゴンは売れなくなってしまったのか? 販売不振の理由はどこにあるのか? モータージャーナリストの永田恵一氏が考察する。
文/永田恵一、写真/ベストカー編集部、ベストカーweb編集部、トヨタ、日産、ホンダ
【画像ギャラリー】ステップワゴンの強みと弱み、ライバル車との比較をチェック!
■現行ステップワゴンってどんなクルマ?
ステップワゴンとしては5代目モデルとなる現行型は2015年4月に登場した。現行ステップワゴンはFF構造となる点や1800mm台中盤の全高など、ミドルハイトミニバンとしてはオーソドックスな成り立ちではある。
しかし、ガソリン車のエンジンを4代目までのステップワゴンを含めミドルハイトミニバンの標準だった2LのNA4気筒から、1.5Lガソリンターボに変更。動力性能を高めると同時に、4気筒というのは同じでもエンジンの小型化によりエンジンルームも小さくし、そのぶんキャビンスペースの拡大に当てられている。
またバックドアは左側が横開きもでき、左側からの車内とラゲッジスペースへのアクセスも可能なホンダがわくわくゲート(現在はグレードによって通常のバックドアも選べる)と呼ぶものにした点など、ホンダらしいメカニズムや使う楽しさも備えている。
2017年9月に行われたマイナーチェンジではミニバンで人気となっているエアロ系のスパーダのフロントマスクを押し出しの強いものに変更。
2L、直4ガソリンエンジンに発電用と駆動用モーターを組み合わせ、スピードが上がるとエンジンとタイヤをクラッチで直結し、燃費低下を抑えるエンジン駆動モード付2モーターハイブリッドを追加した。
■現行ステップワゴンの販売成績は?
ステップワゴンが現行型となった2015年以降のライバルとなるミドルハイトミニバンを含めた年間販売台数は以下の表の通りである。
現行モデルが発売された2015年4月以降のノア、ヴォクシー、エスクァイア、セレナ、ステップワゴンの年間販売台数を比較してみると、ステップワゴンは2015年5位、2016年5位、2017年4位、2018年3位、2019年4位、2020年4位と厳しい結果が出ている。
■ステップワゴンが売れない理由を探ってみた!
筆者はミドルハイトミニバン市場において、ステップワゴンはライバル車に劣っているどころか総合力はもっとも優れていると評価している。具体的なステップワゴンのよさを挙げていこう。
まず、ガソリン車はライバル車の2Lガソリンの回転フィールがガサガサするなど安っぽいのに対し、ステップワゴンの1.5Lガソリンターボはアクセルを踏んだ瞬間から太いトルクを出し、回転フィールも静かかつスムースと群を抜いている。
2Lハイブリッドの動力性能もライバル車に対し圧倒的で、燃費もステップワゴンの1.5Lガソリンターボ、ハイブリッドともに見劣りするところはない。
ハンドリングと乗り心地も目立つところこそないもののよくまとまっており、ライバル車を上回っている。またヴォクシー三兄弟に対しては劣っている部分はほとんど思い浮かばず、モデルがもっとも新しいセレナと比べても遜色はない。
ではさらにステップワゴンの〇と×を挙げていこう。
■ステップワゴンの○
・フロアの低さによる乗降性と走りの良さ (セレナはプラットホームの古さによりこの2点がステップワゴンとヴォクシー三兄弟に対しかなり劣っている)
・先行車追従型のアダプティブクルーズコントロールの完成度の高さ
■ステップワゴンの×
・セレナの2列目ベンチシート仕様がキャプテンシート的にも使える点、バックドアが上部だけ開閉できる機能に代表される、ショールームでインパクトある機能がわくわくゲートくらいしかない
・自動ブレーキの性能がセレナには見劣りする
・ステップワゴンの3列目シートは床下収納のため、3列目シートを収納するとラゲッジスペース床下の収納スペースが使えなくなる(この点は3列目シートを跳ね上げるヴォクシー三兄弟とセレナは3列目シートを跳ね上げた際の後方視界の悪化などもあり、一長一短のところもある)
とステップワゴンのライバル車に対する弱点は非常に少なく、アドバンテージのほうが大きい。「ではなぜ売れていないのか」と考えると、初期モデルのフロントマスクと販売体制が大きいように感じ、以下のように考えられる。
初期モデルのフロントマスクはスパーダでも一車格下のフリードと見間違えることがあるくらいおとなしいもので、押し出しの強いフロントマスクが好まれるミドルハイトミニバン市場においては支持が薄かった。
スパーダのフロントマスクはマイナーチェンジで押し出しの強いものに変更されたものの、「時すでに遅し」という印象も否めなかった。
マイナーチェンジまでヴォクシー三兄弟にはあったハイブリッドがなかった点も大きなマイナスではないにせよ、不利ではあっただろう。
また、ステップワゴンの後に登場した現行フリードがボディサイズの割に広いなどよくできており、その影響もあったかもしれない。
販売体制でもステップワゴンが登場したときにはホンダ車の販売が軽自動車、フィット、ヴェゼルに偏りはじめており、売れている組には現行フリードも加わったことでステップワゴンへの注目は薄れ、プロモーションも少なくなるという悪循環に陥り、これではステップワゴンの販売が低迷気味なのも無理もない。
そのあたりも考えるとステップワゴンは厳しい環境下の中でよく頑張っているとも言えるのかもしれない。
■次期ステップワゴンはどうなる?
次期ステップワゴンは2021年秋の登場が有力視されており、実質5ナンバーのサイズをキープし、エンジンも1.5Lガソリンターボと2Lハイブリッドを踏襲。
スタイルは押し出しの強いものとなり、現行フィットやフリードに設定されているクロスオーバーの要素を持つクロスターを加えるなど、現行モデルの反省を盛り込みながら正常進化するというフルモデルチェンジになりそうだ。
次期ステップワゴンには現行モデルのモヤモヤを吹き飛ばすようなフルモデルチェンジとなることを期待したいところだ。