■売れたのはルーミーにこんな魅力があったから!
2020年10月以降にルーミーの売れ行きが急増した直接の理由はタンクの廃止だが、車種自体の魅力も大きく影響している。
全長は3700mm(カスタムは3705mm)、全幅は1670mmとコンパクトで、最小回転半径も4.6m(カスタムG-Tは4.7m)に収まる。水平基調のボディは視界も良く、混雑した街中でも運転しやすい。
その一方で全高は1700mmを上まわり、前後席ともに頭上と足元が広い。後席のドアはスライド式だから、開いた時でもドアパネルが外側へ大きく張り出さず、狭い場所でも乗り降りしやすい。電動開閉機能も用意され、子供を抱えた時の乗降性も優れている。
荷室については、後席を畳んで床を反転させると、汚れを落としやすいシートが貼られている。自転車などを積む時に便利だ。
荷室の床面地上高は527mmと低く、自転車を積む時に前輪を大きく持ち上げる必要はない。一般的にリアゲート下端部分の地上高は、580~700mmが多いから、527mmのルーミーは荷室が使いやすい。
収納設備も豊富に装着した。500mlの紙パックが収まったり、前席の背面には折り畳み式のテーブルを備えている。
これらの工夫により、発売の翌年となる2017年の登録台数は、ルーミーが1か月平均で6556台、タンクは5905台に達した。両方を合計すると1万2461台だから、当時のノートやアクアを上まわり、小型/普通車で1位のプリウスに迫る販売実績であった。
今日のルーミーの好調な売れ行きも、先に述べたコンパクトなボディによる運転のしやすさ、高い天井による広い居住空間や使い勝手の優れた荷室などの実用性によるところが大きい。
■2020年9月のマイチェン効果が大きい!
2020年9月のマイナーチェンジでは、姉妹車のタンクを廃止した代わりに、フロントマスクの存在感を強め、全車速追従型クルーズコントロールも採用している。衝突被害軽減ブレーキの夜間歩行者対応も可能にするなど、安全装備も進化した。これらの改良も売れ行きを伸ばす要因になっている。
それならなぜ、ルーミーは前述のような優れた実用性を備えられたのか。その理由は、ルーミーが小型車から軽自動車に乗り替えるユーザーの急増を食い止めるために企画されたからだ。
2014年は軽自動車が爆発的に売れた年だった。1月に先代(初代)ハスラーが発売されて届け出台数を伸ばし、これを切っ掛けにスズキとダイハツの販売合戦が激化した。販売会社が在庫車を中古車市場に卸す届け出台数の粉飾も活発に行われ、2014年には、軽自動車の届け出台数が227万2790台に達している。
この販売実績は過去最高で、今でも更新されていない。同年には新車として売られたクルマの41%が軽自動車で占められた。
この時には小型車から軽自動車への乗り替えも一層増えたから、小型/普通車を中心に扱うトヨタは危機感を募らせた。そこで急遽企画されたのがルーミーだ。
2014年の軽自動車届け出台数ランキングは、1位:タント、2位:N-BOX、3位:ワゴンRの順番だった。軽自動車販売合戦の切っ掛けを作ったのはハスラーだが、販売の中心はタントとN-BOXという全高が1700mm以上のスーパーハイトワゴンだ。
そこでルーミーも、軽自動車のスーパーハイトワゴンを小型車サイズに拡大したようなクルマになった。ルーミーの企画立案が2014年、発売が2016年だから、わずか2年間で軽自動車に対抗すべく開発された。
開発を担当したのはダイハツで、短期間で作る必要があるから、プラットフォームはブーンやパッソと同じタイプを使う。ルーミーの車両重量は1100kg前後だから、ブーンよりも約200kg重い。全高も約200mm高い。そこで走行安定性と乗り心地のバランスはいまひとつであった。
エンジンも必然的に直列3気筒1Lだ。ノーマルタイプではパワー不足だから、ターボも用意したが、ノイズが粗くなった。それでもルーミーが姉妹車のタンクと併せて人気車になったのは、ヒエラルキーに縛られず、小型車でありながらN-BOXやタントといった好調に売れる軽自動車を手本に開発したからだ。
軽自動車は日本のユーザーに向けて開発され、特にスーパーハイトワゴンは絶好調に売れている。この特徴を取り入れて、ルーミーとタンクは高い支持を得た。それは今の好調な販売につながっている。
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