いつ半導体不足が解消するのか? 自動車産業の構造的な問題点は?
実は半導体メーカーも実は自社では生産しているのは一部の製品だけで、ほとんどの製造はファウンドリーと呼ばれる生産だけを専門に行なう企業に外注している。これが事態をより複雑にしている。
本来、ファウンドリーは下請けなので、半導体メーカーの言いなりになりそうなものだが、前述の通り半導体製造はクリーンルームに精密機器を設置して、いくつもの工程を経て生産される。
特に先端プロセスと呼ばれる、超微細な半導体製造はクリーンルームのレベルも段違いで、工場の建築コストも膨大な金額になる。そのためすでに先端プロセス向けの生産設備を持っているファウンドリーが有利な立場になり、どんどん規模を拡大していっているのだ。
2020年の半導体製造自体は順調に伸びており、ファウンドリーも増産体制を敷いているが生産が追い付かないほど。なのでクルマ向け半導体は、一度減産を決めてしまうとすぐには元のペースに戻せないのである。
自動車メーカーやサプライヤー、半導体メーカーが半導体を増産したくても、ファウンドリーが首を縦に振らなければ実現することはできない。生産量や価格の決定権は本来、購入先がもっているものだが、現在の半導体不足には、そんな常識が覆されるような捩れ構造となっているのだ。
ファウンドリーの最大手である台湾のTSMCは、クルマ用半導体の増産体制を敷くことを明らかにしているが、設備の拡張や生産開始から出荷までには3、4ヵ月はかかると見られている。
つまり、すぐに半導体不足は解消できないのだ。半導体不足によるクルマの減産は、半年くらいは尾を引きそうで、その損失は6兆円にも達するのでは、という見方も出ている。
日本は半導体製造から事実上手を引き、ルネサスなどの日本の半導体メーカーもファウンドリーを頼りにしている部分が大きい。
海外で組み立てているクルマも多いため、日本の自動車メーカーでも国内で調達することだけにこだわる必要はないが、自動車メーカー連合で出資して半導体の生産拠点を作るなど、ある程度の供給を賄えるようにするなど、ファウンドリーに対して影響力を持つことも大事なのではないだろうか。
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