■初代プリウス/1997-2003
ハイブリッドが大成功した今、初代プリウスは近年のトヨタ車の出発点のように見られるが、当時はトヨタらしくないクルマと受け取られた。なぜならトヨタは、新しいメカニズムには概して慎重な態度を取っていたからだ。
例えば後輪駆動は、他メーカーがひと通り採用した後に手掛けている。ターボエンジンの搭載などにも比較的慎重であった。
ところが初代プリウスは違った。エンジンとモーターを組み合わせる複雑な制御を1997年に市販車で実現させ、世界初の量販ハイブリッド車となった。しかも初代プリウスが採用したTHSの基本的な機能は、今でもトヨタのハイブリッド車にTHS IIとして生き続けている。
初代プリウスは、トヨタの優れた先見性を明確に表現している。将来的に有望な技術だから、早い時期から力を入れて開発を進め、20年後の今日を支える基幹技術になっている。燃料電池車のMIRAIも、プリウスと同じ道を歩むに違いない。
■C-HR/2013~
現行型でトヨタらしくないのはC-HRだ。外観は攻めたデザインで、C-HRコンセプト(モーターショーのコンセプトカー)をそのまま市販化した印象を受ける。未来的なデザインで、SUVのカッコ良さも明確に表現した。
その替わりに後方視界は劣悪だ。試しに駐車スペースに車両の前側から入り、後退しながら出てみたが、率直にいって怖かった。後ろを振り返っても、ほとんど何も見えない。カーナビ画面に後方の様子を表示する機能を備わるが、見える範囲は限られるから、目視と併用しないと不安だ。
開発者にトヨタの社内的な視界の基準がどうなっているのか尋ねると「C-HRはギリギリでクリアできた」とのこと。いろいろな意味でトヨタらしくないクルマだ。
しかし、このような個性的な車種があるから、トヨタに関心が集まり、主力車種が売れ行きを伸ばせた。その結果、小型/普通車で51%のシェアを獲得している。いつの時代でも、トヨタらしくないクルマが、トヨタのブランドイメージを高めているのだ。
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