毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。
時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。
しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。
訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はホンダ CR-X(初代・2代目/1983-1992)をご紹介します。
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文/伊達軍曹、写真/HONDA
■シビックの姉妹車・バラードの派生モデルとして登場したCR-X
ホンダ シビックの姉妹車であった「バラード」の派生モデルとして誕生し、「FFライトウェイトスポーツ」という新ジャンルを開拓。
初代と2代目のスポーツ性能と存在感は、「手が届くスポーツカー」を求める当時の若年層を大いに魅了したが、魅了しすぎたがゆえに、まったく異なるコンセプトの3代目へと変身せざるを得なかった車。
それが、初代および2代目のホンダ CR-Xです。
1983年、和暦で言うところの昭和58年7月に登場した初代CR-Xことホンダ バラードスポーツ CR-Xは、「デュエットクルーザー」なるキャッチフレーズが付けられた小柄なスポーツモデル。
わずか2200mmという軽自動車並みに短いホイールベースを採用した車台に、ファストバックスタイルの2ドアハッチバックボディという組み合わせでした。
乗車定員はいちおう4名でしたが、「デュエットクルーザー」というコピーが示すとおり事実上は2人乗りで、後席はホンダ自らが「1マイルシート」と呼んでいたぐらいの、短距離移動ならいちおう大丈夫……ぐらいのものでした。
搭載エンジンは1.3Lのキャブレター仕様(最高出力80ps)と1.5L PGM-FI仕様(同110ps)の2種類で、いずれも直4 SOHC 12バルブCVCC。
1984年10月に追加された「Si」は最高出力135psの1.6L DOHC 16バルブのZC型エンジンを採用し、ロングストロークでありながら7000rpmまで気持ち良く回るフィーリングと、豊かな低速トルクで人気となりました。
1985年9月のマイナーチェンジで、セミリトラクタブル式だったヘッドライトは角形の固定式となり、バンパーを大型化するとともにパワーステアリングを標準化。
そして1987年9月のフルモデルチェンジで「バラード」という名前は取り払われ、CR-Xはシンプルな「ホンダ CR-X」として2代目に移行しました。
2代目CR-Xは「初代の正常進化版」といえるもので、ボディ各部はフラッシュサーフェス化され、そしてワイド&ローにはなったものの、基本的なフォルムは初代を踏襲。
搭載エンジンはD15B型1.5L SOHCと、初代同様のZC型1.6L DOHCの2種類。「Si」に搭載されたZC型DOHCは、型式こそ初代と同じですが、圧縮比のアップや吸排気系の通気抵抗ダウン、ピストンフリクションの低減などが行われています。また足まわりには、すでにアコードなどで採用されていた4輪ダブルウイッシュボーンの発展型が採用されました。
そして1989年9月のマイナーチェンジでは、可変バルブタイミング・リフト機構「VTEC」を備えたB16A型エンジンを搭載する「SiR」が登場。排気量1.6Lで160psという「リッター100ps」を実現し、CR-Xの人気は絶頂を迎えることになったのです。
その後、2代目ホンダ CR-Xは1992年2月に生産を終了。それに続いて「さらなる正常進化を遂げた3代目のCR-Xが登場するだろう!」と、多くの自動車愛好家が期待しました。
しかし同年3月に登場したのは、「トランストップ」なる電動オープントップを最大の特徴とする、妙にアメリカンテイストな「ホンダ CR-X デルソル」という、それまでのCR-Xとはまるでキャラクターが異なるモデルだったのです。
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