新東名の御殿場―浜松いなさ間が全線6車線化され、この区間(145キロ)の最高速度が正式に120km/hとなってから、2月22日でちょうど2か月が経過した。
以前の120km/h試行区間は55キロ。そこには6車線区間(片側3車線)と4車線区間(片側2車線)が混在していたが、今回は延長が一気に3倍になり、しかも、そのすべてが6車線である。
文/清水草一 写真/編集部
【画像ギャラリー】走行マナーも劇的に向上!? 日本版アウトバーンとなった新東名120キロ区間を走る!!
■120km/h区間はまさに「日本版アウトバーン」
実際に走ってみてどんな感じだったかというと、スバリ、「ついに日本にもアウトバーンが出現した!」であった。
ドイツ・アウトバーンは、速度無制限区間を持つ世界で唯一の高速道路だから、日本のアウトバーンは言いすぎだが、もともと新東名は、構造的にはアウトバーンとほぼ同等。カーブや勾配のゆるさに関しては、アウトバーンをも上回る高速設計だ。
今回の6車線化によって、その資質がようやく花開き、大型車も乗用車も、流れは非常にスムーズになったのである。
以前の、4車線と6車線が混在した状態では、最高速度120km/hと言っても、120km/hで巡行するのは不可能だった。特に4車線区間では、90km/hでスピードリミッターが効く大型トラックが頻繁に追越車線に入ってくるため、そのたびに大きく速度を落とす必要があったし、彼我の速度差によるリスクもあった。
が、全線6車線化によって、大型トラックが追越車線に入ってくる頻度は激減した。それに関するデータはまだ発表されていないが、感覚的には数分の1になった。走行当日(12月23日)は、145キロ全線を走って、わずかに4回。「追越車線から、ほぼ大型トラックが消えた」と言っても過言ではなかった。
もちろん状況は、その日その時の交通量によって違ってくるし、走行当日も、新型コロナの影響により、交通量は例年より減少していたが(前年比93%:新東名新静岡―静岡SA間)、物流は止まっていないので、大型車の交通量は微増(同101%)。結果的に、大型車が全交通量の約6割を占めていた。
その状況下でも、第2走行車線(中央)と追越車線を使って、ほとんど120km/hを維持して走行することができたのである。その快適さは、以前の120km/h試行時とは雲泥の差。大型トラックのマナーの向上は著しく、その点でも「まるでアウトバーン!」だった。
■なぜ120km/h化で大型車のマナーが急激に向上した?
なぜ大型トラックのマナーが急激に向上したのか?
理由は、全線6車線化によって、マナーを守る余裕が生まれたからだ。
以前の6車線と4車線の混在時は、6車線区間でも、第1走行車線(一番左の車線)の利用率はかなり低かった。
なぜなら、第一走行車線は頻繁に消滅する。そのたびに右隣りに車線変更する必要があり、機敏な動きができない大型トラックのドライバーにとっては、できれば使いたくない車線だったからだ。
それが、今回の拡幅で145キロ全線が6車線化され、安心して第一走行車線を走れるようになった。よって、第1走行車線を走る大型トラックが大幅に増加。第2走行車線に余裕が生まれ、玉突き的に追越車線がほぼ乗用車専用になった。
NEXCO中日本によると、完全6車線化前は、それぞれの車線の<大型車両の混在率>と<平均速度>は、次のようなものだった。
完全6車線化後、この数字がどうなったかは発表されていないが、追越車線の大型車混在率は、1ケタ%にまで減少したと推測される。
■平均所要時間も短縮
ナビタイムジャパンの発表によると、6車線化後、御殿場―浜松いなさ間の乗用車の平均所要時間は4分短縮したという。わずかのように思えるが、これはすべての乗用車が120km/hで走ろうとはしていないことが原因。私の実走時は、ほぼ120km/hをキープすることが可能だった。
それでいて、安全性も大幅に向上した。追越車線に出てくる大型トラックの数が激減したからだ。乗用車側にすれば、急減速が必要な機会が激減し、そのぶん飛躍的に安全性が高まったと感じられる。
■新東名に続いて「120km/h」化をにらむ新名神の現状
このように、いいことづくめの6車線化&最高速度120km/hへの引き上げだが、政府は、大型トラックの無人隊列走行やダブル連結トラックの導入もにらみ、新東名・新名神の全線6車線化調査を進めている。
今回実現した御殿場―浜松いなさ間に続くのは、現在6車線に拡幅工事中の新名神・亀山西―大津間だ。これは2021年度中にも完成し、おそらく最高速度も120km/hに引き上げられるだろう。
また、2023年度に開通予定の大津―城陽間および八幡京田辺―高槻間(ともに新名神)は、工事途中で6車線構造に変更されたため、開通時から6車線となる。
しかし、それ以外の区間は、トンネルや橋梁を含め構造物を4車線で建設したため、6車線化には多大な費用と時間がかかり、道のりは遠い。