どうなる? 岐路にたつスズキとダイハツの戦略

■両社にとって大きな壁となる2030年度燃費基準

タントXのWLTCモード燃費は21.2km/L。車重900kgに相当する2030年度燃費基準をクリアするには、燃費数値を30%以上向上させる必要がある
タントXのWLTCモード燃費は21.2km/L。車重900kgに相当する2030年度燃費基準をクリアするには、燃費数値を30%以上向上させる必要がある

 そして今後は、2030年度燃費基準への対応も迫られる。CAFE(企業別平均燃費方式)による判断は、2020年度燃費基準と同様だが、2030年度燃費基準では格段に高い性能が要求される。

 例えば車両重量が900kgになるタントXの場合、2020年度燃費基準の数値は、JC08モード燃費で23.7km/Lだ。タントXのJC08モード燃費は27.2km/Lだから達成できている。

 しかし2030年度燃費基準では、車両重量が900kgの場合、WLTCモード燃費で27.8km/L前後に相当する。タントXのWLTCモード燃費は、JC08モードに比べると大幅に悪化して21.2km/Lだから、2030年度燃費基準に該当させるには燃費数値を30%以上改善しなければならない。

 ワゴンRにはマイルドハイブリッド搭載車が用意され、ハイブリッドFZの車両重量は790kgだ。この車両重量に相当する2030年度燃費基準のWLTCモード燃費は約28.3km/Lだが、ワゴンRハイブリッドFZの数値は25.2km/Lだ。燃費数値をさらに12%改善せねばならない。つまり今のマイルドハイブリッドでは、2030年度燃費基準に対応できない。

■軽自動車で2030年度燃費基準をクリアするためには?

ワゴンR ハイブリッドFZのWLTCモード燃費は25.2km/L。車重790kgに相当する2030年度燃費基準を達成するには、燃費数値を12%向上する必要がある
ワゴンR ハイブリッドFZのWLTCモード燃費は25.2km/L。車重790kgに相当する2030年度燃費基準を達成するには、燃費数値を12%向上する必要がある

 こうなると軽自動車の対処方法は4つ想定される。まずマイルドハイブリッドの燃費を向上させることだ。2つ目はストロングハイブリッドへの変更がある。3つ目は軽自動車の燃費基準を小型/普通車とは別枠で設けること。4つ目はエンジン排気量を効率が最も優れた800cc前後に拡大することだ。

 この内、軽自動車の燃費基準を別枠で設けることは難しい。軽自動車の排気量拡大は、効率を高めるうえで有効な手段だが、増税とセットで実施される可能性が高い。ベストな方法は税額を据え置いて排気量を拡大させることだが、もし増税されたら、軽自動車規格が形骸化して本末転倒になってしまう。

 結局のところ、1個のモーターを使うストロングハイブリッドをなるべくマイルドタイプに近い価格で提供する方法が現実的だ。ただしストロングハイブリッドの価格は、現時点ではノーマルエンジンに比べて37万円は高い。

 仮にタントX(149万500円)に37万円を加えると約186万円だから、コンパクトミニバンのシエンタXと同等の価格になる。これではタントの売れゆきが下がる。

 そこで20万円の上乗せに抑えると約170万円だ。エアロパーツを装着した現在のタントカスタムXと同等になる。このあたりが軽自動車の価格としては限界だ。それでも販売の低迷が予想されるので、前述のとおり今から小型/普通車に力を入れている。

■両社は効率化と同時に個性化も図る必要あり

 以上がダイハツとスズキの似たところだが、戦略の違いも考えられる。

 ダイハツは車種数が豊富にあることだ。全高が1600mmを超える空間効率の優れた軽自動車だけでも、ムーヴ/キャスト/タフト/ムーヴキャンバス/タント/ウェイクがある。

 将来的には、ムーヴはハイトワゴンでもシンプルに仕上げて価格の安さを打ち出し、ムーヴキャンバスは逆にプレミアム感覚を追求するといった使い分けを行う。

 対するスズキの全高1600mmを超える軽自動車のラインナップは、ワゴンR/ハスラー/スペーシアだ。ダイハツに比べて車種が少ないため、個性化を図りにくい。そこでスズキはダイハツ以上に小型/普通車を多く売る。

 そしてスズキはトヨタと提携を結んでいるから、ダイハツとの提携も考えられる。2030年度燃費基準に対応するためのハイブリッドシステムを両社で共通化して、コストを低減させる方法だ。これからは従来とは次元の異なる提携を結んで効率を向上させながら、いかに商品の個性化を図るかが問われる時代になる。

【画像ギャラリー】タント、ムーヴキャンバス、スペーシア……軽自動車の2大巨頭を支えるクルマたち

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