■ダイハツも小型/普通車販売は5年で35倍に!
ダイハツの販売動向も変化している。以前のダイハツは軽自動車を中心にした売り方で、2015年の小型/普通車登録台数は、1年間にわずか1624台であった。
それが現行型のブーンとトールを発売した2016年には6859台に増えて、2017年は2万8067台に達した。さらに2018年には3万5212台、2019年は4万3609台、2020年にはコロナ禍の影響を受けながら5万6054台まで増えている。
このようにダイハツの小型/普通車登録台数は、2015年に比べると、わずか5年間で35倍に急増した。このような増え方になったのは、小型/普通車の販売にあえて力を入れているからだ。
例えばトールの登録台数は、発売の翌年に当たる2017年は2万1651台だったが、2018年は2万5982台、2019年は2万6736台と増えた。時間を経過しながら売れゆきを伸ばすには、販売に相当な力を入れねばならない。
宣伝においても、2016年に登場したブーンとトール、2019年のロッキーは、TV・CMを積極的に放送している。
つまりホンダと日産が軽自動車に力を入れる一方で、スズキとダイハツは、小型/普通車を重視するようになった。2020年におけるダイハツの小型/普通車比率は9%だから、スズキの17%に比べると少ないが、今までの流れを見ると今後も増加を続ける。スズキとダイハツは「脱・軽自動車」という同じ道を歩んでいる。
■スズキとダイハツが小型/普通車を強化する理由は?
なぜこの2メーカーが小型/普通車に力を入れるのか。スズキの販売店に尋ねると以下のような返答だった。
「小型/普通車に力を入れる理由は、今後の軽自動車販売に不安があるからです。軽自動車税は増税、自動車税は減税されてメリットが薄れました。今後は燃費規制も実施され、その対応のために価格が高まることも予想されます。そこで軽自動車への依存度を下げるため、ソリオやスイフトに力を入れています」。
軽自動車税は、自家用乗用車の場合、2015年に従来の年額7200円から1万800円に値上げされた。その一方で自動車税は2019年に値下げされ、排気量が1000cc以下の小型自家用乗用車の場合、従来の2万9500円から2万5000円へ下がった。
従って以前の税額差は年額2万2300円だったが、今は1万4200円に縮まっている。
■トヨタ完全子会社のダイハツならではの事情
ダイハツの販売店は以下のように返答した。「2016年にはダイハツがトヨタの完全子会社(100%出資の子会社)になり、この時から小型車の扱い方も変わった。それまでは小型車の展示車や試乗車はほとんどなかったが、2016年に登場したブーンとトール、2019年のロッキーは試乗車を配置している」。
ダイハツが小型/普通車に力を入れるようになった背景には、トヨタの意向も働いているかも知れない。
ちなみにロッキーには、トヨタが扱うライズとは異なる最上級グレードのプレミアムが用意され、ソフトレザー調シート表皮などが使われる。開発者に理由を尋ねると以下のような返答だった。
「ロッキーはダイハツの軽自動車からアップサイジングするお客様にも購入していただきたい。今は軽自動車の質が高く、そこからアップサイジングするとなれば、お客様はさらに上質なクルマを求める。そこでライズが用意しないプレミアムを設定した」。
ロッキープレミアムも、ユーザーを軽自動車からコンパクトSUVに誘導する効果があるから、表現を変えれば軽自動車への依存度を下げるグレードになる。
今後のダイハツでは、トヨタの役割分担が変化することにも注目したい。以前はトヨタが小型/普通車、ダイハツは軽自動車を扱ったが、今後は変わる。ブーンやトールなど、価格帯が軽自動車と重複するダイハツ製のコンパクトカーは、前述のとおりダイハツの販売店が力を入れて売るからだ。
ハイブリッドも用意して価格が高めなヤリス以上の車種は、従来と同じくトヨタが販売する。そうなれば軽自動車の売れゆきが下がっても、ダイハツの販売店は小型車で経営を続けられる。
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