■乗り換え需要の差も売れゆきに影響
そしてRAV4が売れゆきを伸ばした背景には、トヨタのSUVからの乗り替え需要もあった。RAV4が発売された2019年4月時点では、ハリアーは2013年に登場した先代型だ。そのためにトヨタのミドルサイズSUVを求めるユーザーが、設計の新しいRAV4を購入した。
販売店からは「C-HRを目当てに来店したお客様が、後席と荷室が狭いと不満を漏らし、RAV4を紹介して購入いただいた」という声も聞かれた。C-HRもハイブリッド2WD・Gなら304万5000円だから、RAV4ハイブリッド・2WD・Xの334万3000円と大差はない。
しかも最近は残価設定ローンを使うユーザーが増えており、5年間の均等払いなら、C-HRハイブリッド・2WD・Gが月々4万3400円、RAV4ハイブリッド・2WD・Xは月々4万5100円だ。RAV4は人気車で残価率も高いから、価格に約30万円の差があるのに、月々の返済額は1700円しか違わない。こうなるとボディが大きすぎる不満を感じない限り、居住空間や荷室の広いRAV4を選ぶだろう。
またトヨタはかつてRAV4のほかにヴァンガードなども販売しており、SUVへの乗り替え需要も多い。
その点でCR-Vは、2006年に発売された3代目で人気が下がり、2011年登場の4代目は一層売れなかった。そこで国内販売を終了した経緯があるから、CR-Vへの乗り替え需要も乏しい。これも伸び悩みに繋がった。
■最近のホンダはスモールカーのイメージが強い
ブランドイメージの問題もある。今のホンダではN-BOXが圧倒的な売れ筋だ。2020年に国内で売られたホンダ車の内、N-BOXが32%を占めた。軽自動車全体なら53%に達する。
そして「N-BOX+N-WGN+フィット+フリード」の台数を合計すると、2020年に国内で売られたホンダ車の71%に達するのだ。CR-V、ヴェゼル、ステップワゴンなどは、すべて残りの29%に含まれてしまう。
ここまでホンダの売れ筋が小さなクルマに偏ると、ブランドイメージも影響を受ける。300万円以上のSUVを買おうと考えた時、ホンダのCR-Vはイメージされにくい。「ホンダならN-BOXかフィットでしょう」と考えてしまう。
そして販売店でも前述の4車種が好調に売れるから、手間を費やしてCR-Vを売り込もうとは考えない。その結果、ホンダではN-BOXが国内販売の1位を守り、CR-VはRAV4の売れゆきの11%と低迷する。
■トヨタ同士の戦いでRAV4も安泰ではない!
以上のような経緯でRAV4とCR-Vには大きな販売格差が生じたが、RAV4も安穏とはしていられない。最近の売れゆきを見ると、前年と比べて下降が目立つからだ。2020年5月からトヨタも全店で全車を売る体制に変わり、人気車が好調に売れて不人気車は徹底的に落ち込む傾向となった。
販売上位のアルファードと下位のヴェルファイアでは、2020年1月には10倍以上の格差が生まれた。同じトヨタの姉妹車同士なのに、売れゆきには、RAV4対CR-Vと同等の差が付いた。
そして2021年1月の登録台数では、設計が新しいとはいえハリアーが9177台で、RAV4は4162台だ。今後の国内販売は、トヨタ同士の戦いも含めて、激しいバトルの時代に入る。それを象徴するのがRAV4とCR-Vだ。
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