■売れゆきはRAV4が好調なのに対してCR-Vは……
ところが両車の売れゆきには大差が生じた。RAV4はコロナ禍の影響を受けながらも、2020年には5万4848台(1カ月平均で4571台)を登録した。アクアやノアと同等の売れゆきで、小型/普通車の販売ランキングでは中堅から上位に位置する。
一方、CR-Vは6140台(1カ月平均で512台)に留まる。比率に換算するとRAV4の11%だ。両車とも全長は4600mm少々、全幅も1860mm前後のライバル車同士なのに、売れゆきはまったく異なる。
販売格差の背景には、複数の理由がある。まずは商品特性の違いだ。最近は前輪駆動ベースのシティ派SUVが浸透した影響もあり、そちらは市場が飽食気味だ。そのため、SUVに原点回帰のニーズが生まれ、野性味の伴うSUVが好まれる傾向も出ている。
例えばランドクルーザープラドは、日本では走破力の本領を発揮する機会を得にくい悪路向けのSUVだが、2020年には約2万4300台(1か月平均で2000台少々/ランドクルーザー200を除く)を登録した。同じく本格オフローダーのジムニー/ジムニーシエラの高い人気も長く続いている。
さらに小型/普通乗用車でトップ水準の売れゆきとなるコンパクトSUVのライズは、前輪駆動ベースのシティ派だが、フロントマスクは悪路向けの印象が強いデザインだ。このように以前に比べると、野性的なSUVが好調に売れている。
■RAV4は悪路に強い4WDとタフな印象のデザインを採用
RAV4もこの流れに沿っている。角張った外観は力強い印象で、最低地上高(路面とボディの最も低い部分との間隔)は190~200mmだから、悪路のデコボコを乗り越えやすい。駆動方式も前輪駆動の2WDはベーシックなグレードに限られ、売れ筋は4WDのみになる。
2Lの自然吸気エンジンを搭載するアドベンチャーとG・Zパッケージには、後輪左右の駆動力配分を積極的に変化させるダイナミックトルクベクタリングAWD(4WD)を採用した。
カーブを曲がる時は、外側に位置する後輪の駆動力を自動的に高めて、車両が内側へ曲がりやすくする。この機能は舗装路でも効果的だが、RAV4は悪路向けのイメージもアップした。
一方、CR-Vに悪路向けの特徴はない。その代わり1.5Lターボエンジン搭載車には、荷室に3列目シートを装着した7人乗りを用意する。ファミリー向けのSUVだ。
■CR-Vのほうが価格設定が割高に感じられる
価格の違いも見逃せない。RAV4の自然吸気エンジンは2L、CR-Vは2.4L並みの性能を発揮する1.5Lターボだから単純には比べにくいが、装備水準が同程度の車種で見ると、RAV4 4WD・アドベンチャーはダイナミックトルクベクタリングAWDなどを装着して331万円だ。CR-V 4WD・EXはベーシックな内容で358万1600円になる。
ハイブリッドは、RAV4ハイブリッド4WD・Gが402万9000円、CR-V e:HEV・4WD・EXは414万5900円だ。全般的にCR-Vのほうが価格は高めの設定になる。そしてRAV4では、価格を抑えたいユーザーに向けて自然吸気エンジンの2WD・Xを274万3000円で用意するが、CR-Vは最廉価でもターボエンジンの2WD・EXが336万1600円になる。
最終的に買うグレードはアドベンチャーでも、最初にグレード構成を見た時、270万円台から用意されるRAV4のほうが第一印象でリーズナブルに感じられる。CR-Vは、いきなり300万円を大幅に超える金額を突き付けられるから、購買意欲が下がりやすい。
そしてCR-Vに、価格に見合う質感があればいいが、逆に落胆させられる。例えばインパネに入るステッチ(縫い目)はイミテーションだ。コンパクトSUVのヴェゼルでは、上級グレードに、本物の糸を使ったステッチが採用される。CR-Vの内装が、ヴェゼルに見劣りするのでは困る。
しかもヴェゼルはコンパクトSUVでは後席と荷室が広いから、7人乗りを求めない限り、ヴェゼルで充分という見方も成り立つ。現行ヴェゼルの自然吸気エンジン車なら、上級のRSホンダセンシングでも252万833円だから圧倒的に安い。
CR-Vは割安なヴェゼルと比較されると明らかに不利で、いわば身内に負けた面もある。
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