2018年3月6日、トヨタは欧州でのディーゼル車を徐々に縮小し、将来的に廃止すると発表した。
欧州では今、ディーゼルエンジンに対する「風当り」が強まっている。マツダのディーゼルは、今後どうなってゆくのか。
実用化目前の革新的なガソリンエンジン「SKYACTIV-X」が、マツダのディーゼルエンジンの今後を読み解く鍵になりそうだ。
文:渡辺陽一郎/写真:編集部、TOYOTA
評判悪化の原因? 欧州では旧いディーゼル車が多数
トヨタが欧州でのディーゼル車販売を終了すると報じられた。もともと欧州は乗用車でもディーゼル比率が高かったが、2015年にVW(フォルクスワーゲン)によるディーゼル排出ガス規制の不正問題が発覚した。さらにNOx(窒素酸化物)や粒子状物質の排出も問題視されている。
あるメーカーの開発者は「欧州では今でもユーロ3レベルのディーゼル車が多く走っている(ユーロ3のNOx制限値は現在のユーロ6に比べて6倍以上多い)。
そのために大気汚染が深刻化した。これにVWのディーゼル不正問題も加わり、ディーゼルのイメージをさらに下げてしまった。
しかし日本車を含めて今のディーゼル車はクリーンだ。昨今のディーゼル車のイメージダウンは、一種の風評被害に相当すると思う」と指摘する。
これに二酸化炭素の排出抑制も加わり、イギリスとフランス政府が、2040年までにディーゼル/ガソリンエンジン車の販売を終了する方針を打ち出した。
この影響を特に強く受けた日本のメーカーがマツダだろう。先代(初代)CX-5から、マツダ車は、OEM車を除くとすべてSKYACTIV(スカイアクティブ)技術に基づいて開発され、エンジンについてはSKYACTIV-Dと呼ばれるクリーンディーゼルターボの搭載が特徴だ。
今は1.5Lと2.2Lの2種類のディーゼルエンジンを揃える。両方ともNOx吸蔵還元触媒、尿素SCRといった高価な後処理装置を使わず(一部北米仕様を除く)、優れたクリーン性能とディーゼル特有の高い動力性能を両立させた。
SKYACTIV-Xでディーゼルを一部代替へ
ところが最近は、前述のように欧州でディーゼル車の売れ行きが下がっている。かつて好調に売れたフランスでも不人気で、マツダのディーゼル比率も減少傾向にある。
ロシアや中国では、軽油の質が悪いためにディーゼルを投入しにくく、渾身の開発を行ったマツダのディーゼルが市場を狭められている。
そこでマツダの新たなパワートレーンとして注目されるのが、2019年の市販に向けて開発を進めているSKYACTIV-Xだ。ガソリンエンジンだが、自己着火(圧縮着火)技術も使われ、圧縮比を16.0まで高めて燃焼効率を向上させた。
マツダの開発者は、SKYACTIV-Xを「ガソリンとディーゼルの中間的な存在」と表現する。燃料はガソリンだが、自己着火と高圧縮比、それによって得られる優れた燃費効率はディーゼルエンジンに近いためだ。
報道試乗会で用意されたプロトタイプは、直列4気筒2Lで、スーパーチャージャーを併用することにより、最高出力が190馬力、最大トルクは23.5kgmとしていた。2Lのガソリンエンジンとしては充分な性能だ。
燃費数値は今のところ不明だが、開発者によると「従来の同排気量のガソリンエンジンに比べて20~30%は向上させたい」とのことだった。
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