今の軽自動車は120km/h時代に通用するのか?

 2020年9月に新東名高速と東北道の一部区間で、最高速制限が120km/hに引き上げられた。今後、120km/hが適用される区間はさらに拡大される計画だ。

 いよいよ本格的な高速道路120km/h時代が到来したわけだが、今の背が高くなった軽自動車は、従来からプラス20km/hというこのスピードに対応できるのか?

 軽自動車はパワーが弱くて車重も軽く、そして今は背の高いモデルが主流で重心が高いなど、普通の乗用車よりも不利な条件が揃っている。そんな、軽自動車を実際に高速道路を120km/hで走ってチェックした!

文/松田秀士  写真/ベストカー編集部

【画像ギャラリー】風にも負けず、真横を追い抜いていくトラックにも負けず……新東名を軽自動車で走る


120km/hの速度は普通車であれば苦も無く走るが……

実際に新東名高速を軽自動車で走ってみた。雪をかぶった富士山が青空に映える
実際に新東名高速を軽自動車で走ってみた。雪をかぶった富士山が青空に映える

 筆者は育ちが大阪。いまだ大阪で暮らす母の生存健康確認もかねて、月に1度は大阪に行く。スーパーやホームセンターでの買い物や、母の所用を満たすためにクルマが必要だ。そして、気分転換にドライブにも連れてゆく。そのためクルマを使って東京と大阪を往復することが多い。

 そこで必ず通るのが新東名高速道路だ。約1カ月ほど前に利用した際に、新東名は御殿場JCT~浜松いなさJCTまでの約145kmでほぼ全線の最高速度が120km/hになっていることを確認した。

 この区間では上下線合計完全6車線化が完成している。つまり片側の通行が3車線になっているのだ。この点をまずしっかりと頭に入れておいていただきたい。

 筆者はこれまで海外試乗会で欧州や米国の高速道路を走ってきたが、100km/hを超える制限速度の道路は多車線があたりまえ。片側4車線も珍しくはないのだ。

 近年SUVも含めた自家用自動車の性能進化は著しく、120km/hになってもそれほど苦もなく高速巡行が可能だ。欧州車はもともと最高速の高いドイツのアウトバーンなどを想定した高速巡行性能を持っているが、国産車も最近はレベルが高くなってきた。

特に背の高いスーパーハイト軽自動車は?

新東名高速の速度標識。スーパーハイト系軽自動車で120km/h走行は本当に大丈夫なのだろうか
新東名高速の速度標識。スーパーハイト系軽自動車で120km/h走行は本当に大丈夫なのだろうか

 しかし、軽自動車はどうだろうか? 確かに最近の軽自動車は高速走行性能も上がっている。

 その昔、高速道路における軽自動車の最高速は80km/hだったのだが、性能向上により2000年10月より普通車と同じ100km/hに引き上げられ、今日に至っている。つまり100km/hになってからすでに20年以上の月日が流れているのだ。

 この20年余りの間に軽自動車界に何が起きたのか? というとハイト系、スーパーハイト系といった背の高い軽自動車の増加。スーパーハイト系軽自動車で120km/h走行は本当に大丈夫なのだろうか? と考えるのである。

 そこで先日、ベストカー誌の取材でスーパーハイト系軽自動車2台を使って新東名高速道路を走行してきたので、その状況を少しお伝えしよう。

実際に新東名を軽自動車で走ってわかった!

新東名は120km/h最高速を想定して建設されているし、路面も新しいため凹凸に足をとられることもなく安定していた
新東名は120km/h最高速を想定して建設されているし、路面も新しいため凹凸に足をとられることもなく安定していた

 もともと新東名は120km/h最高速を想定して建設されているので、カーブは緩く路肩にも余裕がある。まだ新しいこともあり路面のサーフェースも平らで、大きな凸凹などによる外乱にあおられる心配もない。

 海外に行けば、現在の東名高速道路レベルの路面でも130km/h最高速のところはいくらでもある。欧州車の高速ロードホールディングが優れているのはそのような育ちの事情もあるのだ。

 この路面があるからハイト系軽自動車でもそれほど問題はない、と考えていた。ところが実際に走ってみていろいろなことがわってきたのだ。

 まず動力性能、加速力だ。エンジンがターボであれば100km/hあたりまではそれほど苦ではない。それどころかターボ付きの現在の軽自動車はスーパーハイト系でもまったくイライラ感を覚えさせない力強さだ。

 逆にNA(自然吸気)エンジンはやはり時間がかかる。ICやSAから本線合流でも大型トラックなどが80km/h強で走る走行車線に合流するのは少し勇気がいるものだ。

 ただし、これは100km/h制限のこれまでの高速道路でも行われていることだから、NAエンジンの軽自動車に乗っていたユーザーは慣れていることだろう。

 ハッキリ言って現在の軽自動車にとって100km/hまでの速度は、アクセルを床まで踏みつけるフルスロットルを行えば、他車に迷惑かけるほど遅すぎるということはない。エンジンのトルク特性やCVTの進化で10年前に比べて格段に優れた加速力を身に着けてきている。

ターボ車も100km/hを超えると加速が弱まる

ターボ車は100km/hまでの加速はいいが、そこから120km/hまでの加速が弱かった
ターボ車は100km/hまでの加速はいいが、そこから120km/hまでの加速が弱かった

 しかし、本題はそれ以上だ。100km/h→120km/hへの加速である。これはターボといえども時間がかかる。スーパーハイト系はやはり空気抵抗が大きい。スーパーハイト系でない背の低いモデルならそれほど苦にはならないはずだ。

 ただしターボ車は100km/hまでの加速がいいので、その加速力が120km/hまで続くものだと錯覚させられてしまう。そのためターボ車は、かえって遅く感じてしまうのだ。これがドライバーの焦りと疲労を生むのかもしれない。

 この点、NAエンジン車だと100km/h到達までもそれほど速くないから、「120km/hまでこんなものか!?」と諦め半分になれる。それがいいか悪いかは別の話ではあるが……。

 路面がよくカーブもそれほどキツクないから重心高の高いスーパーハイト系にもコーナリングは優しい。120km/hでの高速直進性も最近のスーパーハイト系であれば問題ないレベルだ。ただし、風が吹けば話は別になる。

高速走行時の軽自動車は風に弱い

やはり天敵は風。軽自動車でも運転支援システムACCを使うとしっかりと直進走行できる
やはり天敵は風。軽自動車でも運転支援システムACCを使うとしっかりと直進走行できる

 新東名はからっ風と呼ばれる、山から吹き下ろす風が恒常的に吹くらしい。試乗した日は特にきつかった。この横風にスーパーハイト系は非常に弱い。

 まぁ安心して走れるのは80~100km/hまでだ。120km/hになると俄然状況は変化する。自立直進性が弱くなり風による外乱で細かくワンダリングする。しっかりステアリングで補正する必要がある。風は変化するから、少しよくなったかと思うと突然揺すられたりする。特に下り坂では安定感が薄くなる。

 とにかく片手運転で安心して走れるようなレベルではなかった。また大型トラックを追い越す際にも同じように、追い越した瞬間の横風にドキッとすることもあった。

最新の軽自動車は安全だが古いモデルは注意したい!

詳しくは2月26日発売のベストカー本誌で!
詳しくは2月26日発売のベストカー本誌で!

 これに関して試乗車にはADAS(運転支援)のACC(アダプティブクルーズコントロール)とLKA(車線維持支援システム)が装備されていたのだが、これをONにして走行すると驚くほどドライバーの修正舵を必要とせず、かなりしっかりと高速直進することができたのだ。

 ただし軽自動車ゆえに設定できる最高速は115km/h。残りのプラス5km/hは、ドライバーが右足で加速させればLKAは作動したままで車線内をセンターリングして走行できた。ま、これは裏ワザ的なもので、メーカーは推奨しないだろうが。

 今回は最新のスーパーハイト系軽自動車での走行だった。これが5年前、10年前、15年前の軽自動車へと遡るにつれて、安全ではなくなることは容易に想像できる。

 スーパーハイト系とそうでない軽自動車では走行性能にも大きな差があることも予想できる。スーパーハイト系に乗る人はくれぐれも注意して運転していただきたい。

 最後に、NAモデルはそれほどではなかったが、ターボモデルはあきれて開いた口がふさがらないほど燃費が悪化した。その詳細は2月26日発売のベストカー本誌を見ていただきたい。

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