■トヨタ『ルーミー』、実はヤリスより人気
特に販売の好調なトヨタ『ルーミー』は、2020年10月と2021年1月の登録台数が1万台を超えた。
ちなみに小型/普通車の登録台数1位は、日本自動車販売協会連合会の発表ではトヨタ『ヤリス』とされるが、この数字は「ヤリス+GRヤリス+ヤリスクロス」を合計したものだ。『ヤリスクロス』はSUVだから、一般的には別の車種として認識されている。
そこで別々に算出すると、ヤリス(GRヤリスを含む)、ヤリスクロスともに、2021年1月の登録台数は1万台を下まわった。つまりルーミーは、2021年1月には、実質的に小型/普通乗用車の登録台数1位になっている。
今までの経緯を振り返ると、ルーミーの販売ランキング順位が高まったのは、2021年10月以降だ。トヨタの販売店は、2020年5月に全店が全車を扱う体制へ移行した。そのために姉妹車のルーミーとタンクを両方とも用意する必要はなくなり、2020年9月のマイナーチェンジでタンクを廃止している。全店でルーミーを売るようになり、タンクの需要も上乗せされて、登録台数が急増した。
2021年1月のルーミーの登録台数は1万939台で、前年の1月は「ルーミー:6193台+タンク:4893台=1万1086台」だった。1年前に比べて、姉妹車を削りながら、登録台数はほとんど減っていない。この息の長い人気も注目される。
■他社ユーザーを取り込むも、絶対的な販売数で苦しい戦いの『ソリオ』
対するライバル車のスズキ『ソリオ』は、2020年11月25日にフルモデルチェンジを発表した新型車だ(納車を伴う発売は12月4日)。2021年1月の登録台数は5446台で、前年に比べると1.5倍売れたが、ルーミーに比べると約半数になる。なぜソリオは新型車なのに売れ行きを伸ばせないのか。
最も大きな影響を与えたのは、トヨタとスズキの車種構成の違いだ。最近のスズキは軽自動車需要の先行きに不安を感じて小型車にも力を入れるが、それでも2020年1~2月の国内販売における小型/普通車比率は17%に留まった。ダイハツの8%よりは多いが、今でも80%以上は軽自動車で占められる。
そして、スズキが小型車の販売に力を入れるようになった時期は、2015年に先代ソリオを発売した頃だ。従って今でもスズキのブランドイメージは、軽自動車が中心になる。
しかもスズキの軽自動車には、ソリオと似ている背の高い『スペーシア』がある。スペーシアの届け出台数は、コロナ禍の影響を受けた2020年でも1カ月平均で1万1654台に達した。スズキで背の高いスライドドアを備えたクルマといえば、今でもスペーシアが筆頭だから、ソリオは相対的に印象が弱い。
そこで販売店にソリオの販売状況を尋ねると、以下のように返答された。
「軽自動車のスペーシアからソリオに乗り替えるお客様もいるが、数は多くない。むしろフィットのような他社のコンパクトカーからの乗り替え、あるいはセレナやヴォクシーなどのミニバンからダウンサイジングするお客様が多い。ルーミーと比較してソリオを選ぶお客様もいる」
スズキでは背の高いスライドドアを備えた車種ではスペーシアが主力だから、ソリオは1カ月の販売目標も4000台と控え目に公表している。過去を振り返っても、ソリオの1カ月平均の登録台数は3400~4000台で推移してきた。それでも常に一定した売れ行きを保つため、メーカーや販売店にとっても都合がいい。
一方、ルーミーについては、販売店は以下のようにコメントした。
「ノアのようなミニバンから乗り替えるお客様が多い。お子様が生まれたりして、ヴィッツ(現在のヤリス)やパッソで狭さを感じたお客様が、ルーミーを選ぶこともある」
ルーミーはトヨタ車とあって、ミドルサイズミニバンのヴォクシー系3姉妹車、コンパクトミニバンのシエンタ、コンパクトカーのヤリスやパッソなど、ダウンサイジング需要を含めていろいろな車種からの乗り替えが期待される。
特にスライドドアと後席を格納した時に得られる広い荷室は、ミニバンからの乗り替えにはピッタリだ。トヨタは販売店も4600箇所と多く、ルーミーには好条件が重なった。
それでも今後、ソリオが売れ行きを伸ばす余地は十分にある。前述のとおり今のスズキは、ブランドイメージが従来の軽自動車から「軽自動車+コンパクトカー」へ移る過渡期にある。もう少し時間が経過して、スズキの小型車を所有する人達が増えると、乗り替え需要も徐々に多くなる。
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