【いいハンドリングとの関係を紐解く】 “いいサスペンション”って、何だ!?

■最良のサスペンション形式

BC:共用プラットフォームだと限界があり、これにしか使わないという専用プラットフォームに比べると設計的に厳しい部分があるんですね。

では、コストを考えなければ、どのサスペンション形式が優れていると考えますか?

おもなサスペンション形式。1.リジット式:左右の車輪を車軸でつなげた形式。車軸懸架式ともいう。片輪が押し上げられると反対側は押し下げられるので、起伏の大きい悪路での接地性能がいい。構造がシンプルで堅牢なためトラックやSUVなどに採用されている。2.ストラット式:力を受け持つ支柱(=ストラット)にショックアブソーバーを使って、これにコイルスプリングとロアアームを基本に構成したサスペンション。構造がシンプルで部品点数が少ないため、コストが抑えられるメリットがある。 ’70年代以降世界的に多くの乗用車に採用3.ダブルウィッシュボーン式:鳥の首と胸の間にある骨(ウイッシュボーン)の形に似たA字型のアームを2組、上下配置してタイヤを支持するサスペンション。サスペンションストロークがスムースで、タイヤと路面とのグリップ変化が少ない。レーシングカーや高級車などに多用 4.マルチリンク式:上下のアームで支持するダブルウィッシュボーン式の発展系。独立した数本のアームで構成することでジオメトリー変化を制御する構造をもち、よりタイヤのグリップ変化を抑えられる。’82年に発表されたベンツ190Eに初搭載された。 5.

おもなサスペンション形式 

1.リジット式:左右の車輪を車軸でつなげた形式。車軸懸架式ともいう。片輪が押し上げられると反対側は下がるので、起伏の大きな悪路での接地にいい。構造がシンプルで堅牢なためトラックやSUVなどに採用されている。

2.ストラット式:力を受け持つ支柱(=ストラット)にショックアブソーバーを使い、これにコイルスプリングとロアアームを基本に構成されたサスペンション。構造がシンプルで部品点数が少ないためコストが抑えられる。 ’70年代以降、世界的に多くの乗用車に採用されている。

3.ダブルウィッシュボーン式:鳥の首と胸の間にある骨(ウイッシュボーン)に似たA字型のアームを2組、上下配置してタイヤを支持するサスペンション。サスペンションストロークがスムースで、タイヤと路面とのグリップ変化が少ない。レーシングカーや高級車などに多用。

4.マルチリンク式:上下のアームで支持するダブルウィッシュボーン式の発展系。独立した数本のアームで構成することでジオメトリー変化を制御する構造をもち、よりタイヤのグリップ変化を抑えられる。’82年に発表されたベンツ190Eに初搭載された。

5.トーションビーム式:FF車の後輪に多く採用。左右のトレーリングアームをクロスビーム(梁)でつなげた形式で、これが車体のロールによってねじれ(トーション)、スタビライザーのようにロールを抑える効果をもつ

松田:サスペンションは非常に重要で、それ専用に作れることがベストなんですが、そんなことをしていてはコストがかかりすぎてしまうので、量産車メーカーとしては頭の痛い問題でもあります。

 そのコストを考えなければ、入力が入った場合に最も変化が少なく、構造的に優れているのはダブルウィッシュボーンだと考えます。

BC:現行型ではロードスターや、新型NSX、GT-Rなどが採用していますね。

松田:ダブルウィッシュボーンの優れている点は、アームの本数が多いので横方向の力に対する剛性が高いこと。

 それとアッパーアームとロアアームがあることで、その角度や長さで調整できる幅が広く、ホイールの位置が変化した場合でも重心やロールセンターを適正な位置にあるように設計しやすいので、意図したとおりの足回りの動きを実現させやすいんです。

 半面アームの本数が増えて複雑だし、アッパーアームの長さが必要なので、その分スペースを確保しなければならず、基準がどんどん厳しくなっている衝突安全性能を満足させやすい、ストラットを採用するメーカーが多いです。

BC:ただストラットは、ロアアームだけ動くので、ある点を越えると急激にロールセンターが変化してしまう、ということですね。

松田:ポルシェのように、ストラットを採用していても、いいところを見つけているメーカーもありますが、多くはそうはいかないのが現状です。

 最近多いのは、リアはダブルウィッシュボーンやマルチリンクで、フロントはストラットという組み合わせです。

 リアのロールセンターは変化が少なく安定しているけど、フロントはあるところから大きく変化してしまうので、日産のムラーノなどが使ったテクニックとしては、フロントにバンプストッパー(バンプラバー)を入れて、サスペンションがある程度からストロークしないように、規制してしまうものもありました。

バンプラバー(バンプストッパー)。フルバンプ時に、ばねが密着、あるいはショックアブソーバーのストロークが限界に達した時など、直接車体が衝撃を受けてしまうため、車体あるいは懸架装置が破損するのを防ぐための緩衝材
バンプラバー(バンプストッパー)。フルバンプ時に、ばねが密着、あるいはショックアブソーバーのストロークが限界に達した時など、直接車体が衝撃を受けてしまうため、車体あるいは懸架装置が破損するのを防ぐための緩衝材

 ほかにもダンパーをガチガチに硬くしたり、スタビライザー*を硬めにするなど動きを規制する方法があります。ただし、スタビライザーを硬くすると、リバウンドストローク*が少なくなるのでよくありません。

*編集部註:スタビライザー…アンチロールバーともいわれる。車体のローリングを防ぐためサスペンションに追加される部品。通称スタビ/リバウンドストローク…1G状態(車両を自然に地面に置いた状態)からジャッキアップし、0G状態(浮いた状態)になった時、タイヤが下方に伸びる量のことを指す

BC:リバウンドストロークが少なくなると、どのような弊害が出るのでしょうか?

松田:ヨーロッパのクルマは、リバウンドストロークを大きく取っていて、タイヤが路面から離れてしまうような状態になりにくくなっています。

 ニュルブルクリンク(以下ニュル)のようなバンピーなコースに行くとよくわかりますが、リバウンドストロークが少ない場合、コーナリング中にうねった路面に遭遇すると、ピッチング*やバンピングといってクルマが跳ねてしまいます。

 タイヤの荷重が抜けてしまうので、アンダーステア*が出やすいという問題が発生します。

*編集部註:ピッチング…ブレーキで車体が前のめりになり、ブレーキを離すと、その反動で車体の後部側が沈み込む挙動のこと/アンダーステア…一定のハンドル角で大きく旋回していると、速度が上昇するに従って、クルマが外側に膨らんでいってしまうステアリング特性

 乗り心地はいいし、ダンパーに負担がかからないので、可能なかぎりスプリングは柔らかいほうがいいです。スプリングもダンパーも強くすると、発熱してダンパーの減衰力がどんどん低下してしまいます。そういった点から、強いスプリングは使わないほうがクルマには優しいです。

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