日産リーフ 気づけば10周年 日本EV界の先駆者が世の中に与えた功と罪


ガソリン車の代わりになろうとしたリーフ

 初代リーフデビューモデルの航続距離はJC08モードで200km、現実的には、その0.7掛けの140km程度が真の実力だ。もちろん、この航続距離はガソリン自動車に太刀打ちできる距離ではなく、航続距離の短さは「EVの欠点」として、ニュースやメディアで度々取り上げられた。

 その非難の声に影響された日産は、幾度となくバッテリーの容量アップを行った。日産はリーフに「ガソリン自動車に代わるモビリティになる」という使命を課したのだ。

当初はJC08モードで200kmだった航続距離も、今では、厳しいWLTCモードで458kmにまで伸びた

 初代リーフがデビューするちょっと前の2000年代前半、量販車のハイブリッドシステムは、トヨタのTHSの独り勝ち状態であった。日産には、高額車のフーガにしかストロングハイブリッド車が存在せず、今でこそ、伝家の宝刀「e-POWER」があるが、当時の日産には、BセグやCセグ向けの廉価なハイブリッドシステムをつくる技術がなかった。だからこそ、日産は、リーフを認めてもらおうと必死になった。

 しかし筆者は、BEVがガソリン自動車に代わるモビリティとなる、というのが、少なくとも現時点の正解だとは思っていない。欧州や北米のように、都市間をつなぐ交通が高速道路主体の国ならばまだしも、鉄道などの交通網が成熟した日本で、400kmを越える距離のEVが本当に必要なのだろうか。

 現時点考えられる地球環境を考えたモビリティの在り方は、シティコミューターとしてのEVと、長距離移動に適したストロングハイブリッド、そして、鉄道や航空といった公共交通機関の組み合わせが最も適しているのでは、と考える。鉄道は自動車より、はるかに環境負荷が低い。大量同時輸送にも向いている。

国土交通省の2018年度のデータでは、ひとり1kmあたりの移動で排出されるCO2の量は、乗用車が133gなのに対し鉄道は18gと環境負荷が少ない

 BEVが現在のガソリン自動車の立場に取って代わるというのは、幻だと思う。その理由はやはり「ガソリン車より頻繁に必要なエネルギー補給と、その待ち時間」だ。バッテリーへの充電方法は、さまざまな技術開発がなされてはいるが、少なくとも、10年先20年先といった近未来において、BEVがガソリン車(ストロングハイブリッド車含む)にとって代わるようなことは、できないだろう。

 日産以外の国内自動車メーカーからも、昨年から続々とBEVが登場しているが、その航続距離は、ホンダe(35.5kWh)がWLTCモード259km、マツダMX-30(35.5kWh)がWLTCモード256km、そしてトヨタC+pod(9.06kWh)が150kmといった状況。

 自分の航続距離を「弱点」と考え、必死に距離を伸ばしてきたリーフの航続距離に対して半分近い数値ではあるが、これこそが現代におけるBEVの在り方なのでは、ないだろうか。

ホンダe(35.5kWh)はWLTCモード259km Advanceは、最高出力154ps/最大トルク32.1kgm(113kW/315Nm)を発生するモーターを搭載している

日産の今後のBEV展開に期待!!

 しかし、リーフがこれまでにのこした功績は多大であるのは間違いなく、BEVでありながら(e+で)航続距離が458kmもあるリーフそのものを否定するつもりはない。62kWhもの大容量バッテリーを積むため、腹の下がポッコリと膨らみ、大人2人分も車重が増え(プラス160kg)てはいるが、BEVのひとつの答えに行きついていると思う。

 しかしやはり、クルマが重いということは、百害あって一利ない。たくさん走るためにバッテリー容量を増やした結果、燃費(電費)が悪くなり、環境負荷が増える。BEVは、充電するための電力をどうやって生み出しているのかを考えなければならない。

 日産は今後、さらにBEV攻勢を加速させるようだ。まずは今年登場とされているバッテリー電動SUV「アリア」、そして、2022年に実質200万円以下で発売するとされている軽サイズBEVと、これらがどのようなかたちで登場してくるのか、今後の展開次第でリーフの存在意義も変わってくるだろう。リーフでさまざまな知見を得られた日産だからこそできる、今後のBEV展開に、期待している。

【画像ギャラリー】こんなにある!! 世界で販売されている主要なBEVをギャラリーでチェック!!