■今後も名車の生産終了は続く? WRX STIそしてEJ20終了の背景にある「CAFE」の存在
長い歴史と人気を誇ったインプレッサ WRX/WRX STIが生産終了となった理由。
それは、冒頭で申し上げたとおりの「企業別平均燃費基準(CAFE)」です。
WRX STIの市販車に頑なに搭載され続け、そしてモータースポーツのトップカテゴリーでも使われ続けたEJ20型水平対向4気筒エンジン。
それは今から30年以上前の1989年に登場した初代レガシィとともにデビューしたエンジンです。
「きわめて高剛性で、高出力化への潜在性能が高い」というのがEJ20エンジンの最大の特徴で、2Lクラスでは当時世界最強クラスだった220psを発生する初代レガシィは、「10万kmアクセルを全開にし続けても壊れない」という驚異的な耐久性を試験で実証してみせました。
そんなEJ20型エンジンだからこそスバルはトップカテゴリーのモータースポーツでそれを使い続け、そしてインプレッサ WRX/WRX STIの市販車にも搭載し続けました。
そして市販車用のEJ20型エンジンは「ただ搭載され続けた」というわけでは決してなく、さまざまな改良が続けられました。
パフォーマンスや信頼性の面で、そして環境性能の面で「30年前のEJ20とはほとんど別物」といっても過言ではないエンジンへと進化したのです。
……とはいえEJ20は「基本設計が30年以上前の古いエンジンである」という事実に変わりはありません。
それゆえ「改良」だけで環境性能を向上させるには、どうしたって限界がありました。
しかしEJ20を愛するスバリストはこう言いたかったでしょう。
「環境性能がどうでもいいとは言わないが、スバル車に燃費性能なんて求めてない。だからEJ20を作り続けてくれよ!」と。
その気持ちは、筆者はわかるつもりですし、たぶんですがスバルの技術者や上層部も、理解しているのではないかと思います。
しかしスバルは筆者のような単なる車好きのおっさんではなく「企業」ですので、前述した「CAFE(企業別平均燃費基準)」をクリアしないことにはどうにもなりません。
「CAFE」というのは要するに、車種ごとではなくメーカー全体で、出荷台数を加味した平均燃費を算出し、規制をかけるという燃費規制です。
ある特定の車種が燃費基準を達成できなくても、そのほかの車種の燃費を向上させることでカバーできるという仕組みですが、逆に言えば「ある特定の燃費の悪い車種が、メーカー全体の足を引っ張ることになる」とも言える仕組みです。
で、もしもメーカー全体の平均燃費が一定の基準値に達していない場合は巨額のクレジットを支払わなければいけなくなるという、自動車メーカーにとってはおそろしい仕組みでもあります。
そのためスバルは断腸の思いで――かどうかは知りませんが――EJ20の生産を終了。そしてそれに伴って自動的に、WRX STIも生産を終了することになったのです。
とはいえ、スバル WRX STIの系譜がこれで完全に途絶えたわけではありません。
ベストカーのスクープ班によれば、EJ20より環境性能が高い「FA24ターボ」を搭載する新型WRX STIが、2022年中には登場するとのこと。
……ベストカースクープ班の情報確度がいかほどかはわかりませんが、インプレッサWRXおよびWRX STIの「第2章」に、大いに期待したいとは思っています。
■スバル WRX STI(4代目)主要諸元
・全長×全幅×全高:4595mm×1795mm×1475mm
・ホイールベース:2650mm
・車重:1500kg
・エンジン:水平対向4気筒DOHCターボ、1994cc
・最高出力:308ps/6400rpm
・最大トルク:43.0kgm/4400rpm
・燃費:9.4km/L(JC08モード)
・価格:485万1000円(2019年式 EJ20 Final Edition)
コメント
コメントの使い方