ランエボ対インプが遺したもの いま自動車界に必要なのは「名勝負」だ!!

■ランエボとインプレッサの名勝負といえば

1990年代を前に、モータースポーツの世界はグループAカーの時代を迎えた。WRCに代表されるラリーも、量産車をベースにしたグループAカーとグループNカーで争われるようになる。勝つためには高い資質を持つベース車が必要になったのだ。

 そこで三菱はランサーエボリューションを、スバルはインプレッサWRX STIを誕生させた。

初代ランサーエボリューション。1992年9月に2500台限定で発売。わずか3日で完売し、追加で2500台が発売された
初代ランサーエボリューション。1992年9月に2500台限定で発売。わずか3日で完売し、追加で2500台が発売された

両車ともパワーユニットは、2Lの4気筒DOHCインタークーラー付きターボだ。これに軽量コンパクトなボディを組み合わせ、豪快な走りを見せつけている。

1994年1月、初代インプレッサWRX STi発売(当時「i」は小文字表記だった)。以降10年に渡って熾烈なランエボとの開発競争が勃発する
1994年1月、初代インプレッサWRX STi発売(当時「i」は小文字表記だった)。以降10年に渡って熾烈なランエボとの開発競争が勃発する

最高のパフォーマンスと最高のハンドリングを実現するために、考えられる最先端技術は積極的に採用した。先陣を切ったのはランエボだ。1992年9月、特別限定車としてエボ1を送り出している。エンジンは4G63型直列4気筒DOHCターボだ。WRCには93年のラリー・モンテカルロから挑戦した。

インプレッサも対抗するように、92年10月に発表されている。フラッグシップはEJ20型水平対向4気筒DOHCターボを搭載するWRXだ。そして翌93年8月、WRCに参戦した。94年1月にはSTIがチューニングしたインプレッサWRX STIを限定発売している。ドライバーズコントロール・センターデフも早い時期に導入し、意のままの気持ちいい走りを実現した。

インプレッサSTIは94年にWRCで3勝を挙げている。ランエボ(2)も95年のスウェーディッシュラリーで初優勝を飾った。

この年、スバルはWRCのマニファクチャラーズチャンピオンとなり、コリン・マクレーもドライバーズチャンピオンに輝いている。GC型インプレッサWRX STIは、96年と97年も勝ち続け、3年連続チャンピオンの偉業を達成した。

世界ラリー選手権で客席を一面「青」にしてみせたスバルのラリーチーム。当時は「555」のステッカーを車体に貼りまくったラリーレプリカ車も多く街中を走っていた
世界ラリー選手権で客席を一面「青」にしてみせたスバルのラリーチーム。当時は「555」のステッカーを車体に貼りまくったラリーレプリカ車も多く街中を走っていた

ランエボも負けていない。第2世代のランエボ4と5を中心に、WRCでトミ・マキネンが鬼神の走りを見せている。96年から99年までは4年連続してドライバーズチャンピオンに輝き、98年には念願のマニファクチャラーズタイトルも奪取する。

インプレッサが進化すればランエボも進化。「F1ドライバーは頭のネジが飛んでいる。ちなみにラリードライバーはその飛んでいったネジだ」と言われたのもこの頃
インプレッサが進化すればランエボも進化。「F1ドライバーは頭のネジが飛んでいる。ちなみにラリードライバーはその飛んでいったネジだ」と言われたのもこの頃

2000年10月、インプレッサWRX STIは初のモデルチェンジを行った。

2代目で後輪左右駆動力配分システムのAYCを採用したランエボも02年1月には第3世代となり、自慢の電子制御4WD技術の精度と信頼性を高めている。

これ以降、ランエボは電子制御を積極的に活用し、意のままの刺激的なハンドリングを実現。いっぽうインプレッサWRX STIは機械の制御にこだわりながら、速さと信頼性を向上させている。

アプローチは違うが、両車とも4WD技術に磨きをかけ、速くて気持ちいい走りを追求し続けた。だから公道でもラリーシーンでもワクワクし、満たされたのである。

 モータースポーツの世界から一歩引いてしまった今は、技術の研鑽が物足りないように思う。特にランエボはXが最後になってしまったのは残念だ。もう一度奮起して、WRX STIとともに新時代のラリー神話と驚速神話を築いてほしい。

ちなみに独断と偏見で選ぶ最強マシンは、ランエボが2000年1月に登場した6のトミ・マキネンエディション、インプレッサWRX STIは 2005年12月に登場した2代目の後期モデル(F型)だ。飛行機をモチーフにしたフロントマスクは好き嫌いが分かれるが、速さはピカイチだった。

片岡氏が「ベスト・ランエボ」に挙げたのは2000年1月に発売された「ランエボ6 トミ・マキネンエディション」。ランエボを駆って4年連続ドライバーズチャンピオンを獲得したトミ・マキネン氏は、現在トヨタラリーチームの代表を務めている
片岡氏が「ベスト・ランエボ」に挙げたのは2000年1月に発売された「ランエボ6 トミ・マキネンエディション」。ランエボを駆って4年連続ドライバーズチャンピオンを獲得したトミ・マキネン氏は、現在トヨタラリーチームの代表を務めている
2004年6月のマイナーチェンジで「E型」へと進化したインプレッサWRX STI。現在は「インプレッサ」
2004年のマイナーチェンジで「E型」へ、2005年6月のマイチェンで「F型」へと進化。このようにインプレッサWRX STIも毎年のように進化した。現在は「インプレッサ」の冠が取れて「WRX STI」と車名が変更された

どちらも世界に誇れるスーパー4WDスポーツセダンで、クルマと対話を楽しめる。叶わぬ夢だとは思いながらも、あの頃のような、それぞれのメーカーが社運を掛けて挑むような名勝負が、また見たい。

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