■キャラかぶりの同門2番手。「慰めたい・讃えたい」3題
同一メーカー内でキャラがかぶり、販売が伸び悩む“2番手モデル”。3つの事例を取り上げ、2番手を讃えたい。いい味出しているよ、と……。
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●トヨタライズ:ヤリスクロスの登場であっという間に販売2番手に後退
ライズは2020年に1カ月平均で1万台以上を登録してSUVの販売1位に。
が、2021年1月は登録台数が前年の68%に下がり6985台に。販売の順位も後退して、ルーミーなどに抜かれた。SUVの1位は同じトヨタのヤリスクロスで9350台。まるかぶりのキャラではないが、ライズは2000台以上少ない。
需要が一巡した結果だが、ヤリスクロスがハイブリッドを用意するのに対して、ライズはNAのみ。グレード数の違いも考えると、ライズは今でも堅調に売れているといえる。
5ナンバーサイズであるし、今後も根強い人気を保つはず。トヨタ内のコンパクトSUVでは販売2位だが、ライズ、頑張ってほしい。
●ホンダ N-ONE:2代目となってもほぼキャラかぶりのN-WGNの2番手
新型N-ONEの2021年1月の販売台数は2434台で、N-WGNの4324台に比べ約半分。N-ONEは新世代なのにボディパネルは先代と共通、新しさも実感しにくい。
価格はN-ONEオリジナルが159万9400円で、N-WGN・LホンダセンシングにLEDヘッドランプを加えると143万5500円だ。
N-ONEは約16万円高く売りにくい要素が重なった。新型なのに珍しい現象だ。
が、N-ONE・RSは約200万円と高価格ながら、気持ちよく操作できる6速MT。上質で運転して楽しく、居住性も満足できる軽自動車が欲しい場合、N-ONEは唯一無二の存在だ。
ホンダが得意とする実用性と趣味性を併せ持つキミは、自信を持っていい。
●マツダ MX-30:基本設計が同じCX-30に太刀打ちできず
2020年10月に登場したMX-30は売れゆきが伸び悩む。
2021年1月の登録台数は833台で、共通のプラットフォームを使うCX-30の2584台に比べると32%だ。販売店では「MX-30は観音開きのドアを装着するので、使いにくさを指摘するお客様も多い」という。
確かに観音開き採用の意味はわかりにくいが、水平基調の外観やリラックスできる内装は独特の雰囲気。
EVモデルは静かで乗り心地も優れ、MX-30の世界観を明確に表現している。マツダの新しい流れを築く第1弾だ。
ところがマツダはそこを充分に訴求していないから売れゆきも伸び悩む。価値の高い商品だから宣伝方法を熟考してほしい。
〈TEXT/渡辺陽一郎〉
■ドイツ名門ブランド。数でも印象でもBMWよりメルセデスが上のイメージ。それはなぜ?
数値的にも印象度でも“2番手感”のあるBMW。それはなぜなのか? BMWが勝る部分はあるか!?
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●2020年の日本販売台数 BMW 3万5712台 VS メルセデス・ベンツ 5万7041台
何をもって1番かという定義はあるにせよ、例えば、販売台数を比べるならグローバルでも日本でも、BMWがミニを含めずともメルセデスベンツを上回った時期もある。確か、2010年代の数年間はそうだった。
その後、メルセデスがエンジン横置きのAクラスやBクラスなどに力を入れて台数を増やしてからはメルセデスが上回っている。
ただミニを含めればメルセデスとBMWの販売台数は大差ない。
●“人から買う”ことで日本で成功するメルセデス
日本において、メルセデスが1番という風潮は、ヤナセが古くから扱い、高級車としてのブランド構築をうまくやったおかげで、ガイシャの代表ブランドという地位を獲得。そのイメージの貯金が、まだ世間に残っているからだろう。
ヤナセは、お客さんと直接向き合うセールス担当者が信頼を勝ち取るため、販売のみならず、御用聞きのように車検や点検の手配、納車、引き取り、保険といったすべてを行ってきた。
そうすることでセールスと客との間に信頼関係が構築されていく。結果、高級車ビジネスにおいては、何を買うかではなく誰から買うかを重視する“人から買う”という日本独特の商慣習ができ、今も根強く残っている。
合理的な外国人にはこれが理解できない。この点において、外国人が数年ごとに入れ替わって社長を務めるBMWよりも、長年日本人が社長を務めるメルセデスのほうが有利といえるかもしれない。
●「AMG」と「M」は拮抗する
メルセデスのほうが自動車づくりの歴史が長い、ということもBMWの上という印象につながるかもしれない。
が、現在はどちらも毎年世界で200万台強を売るドイツの優良企業であり、拮抗している。商用車があるぶん、規模はメルセデスのほうがやや大きいか。
乗用車のパフォーマンスを比べても、AMGとMは拮抗しているし、先進安全技術でも双璧をなす。
次世代への取り組みではPHVを含めた電気自動車のシェアでBMWがリードするも、技術的にはどちらも全方位的に準備万端だ。
スポーティーなイメージが強いのはBMWのほうだろうか。ミニを持って以来、若々しさも獲得した。
問題はどちらが1番かということよりも、年々両ブランドの違いを感じにくくなっていることだ。次世代の両社には世界でも日本でも、もっとバチバチやってほしい。
(TEXT/塩見 智)
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