ベンツ工場でエンジン生産終了! ドイツの内燃機関技術はこのまま死に絶えるのか?


 メルセデスベンツは3月3日に、ドイツのベルリン工場を電動化の拠点に改修すると発表。この工場ではディーゼルターボなどを組み立てていたのを終了し、将来のコンパクトな「メルセデスEQ」のEV向け部品の生産を行うという。

 ここにきて自動車界は、世界的なEVシフトへの流れがより一層強まっているが、世界初の内燃機関自動車を開発したベンツまでも内燃エンジンを作ることを、このままやめてしまうということなのか?

 ベンツはこれまで培ってきた内燃機関の技術をすべて捨ててEVメーカーに変わろうとしているのか? ドイツからこのままエンジン車がなくなるのか? その真意について、モータージャーナリストの鈴木直也氏が解説する。

文/鈴木直也 写真/メルセデス・ベンツ、トヨタ自動車

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■電動化に熱心なメーカーであるというアピールをしている

2018年にベンツはピュアEVのEQCを発表。今後もEQシリーズを拡大していく予定

 自動車業界で流れるニュースというと、最近は電動化がらみのネタがやたらに多い。特にヨーロッパでそれが顕著なのだが、やれ〇〇年までにEV生産台数を〇〇万台にするとか、電池の生産工場に〇〇億ユーロ投資するとか、まぁそんな話ばっかり。

 だから、「メルセデスベンツ、ベルリン工場での内燃エンジンの生産を終了へ……電動化の拠点に改修」というニュースが流れてきても、「はあ、またですか」という以上の感想はないのだが、この件は調べてみるとちょっと面白い背景がある。

 欧州メーカーのつらい立場を象徴するような事例かもしれないので、ちょっと掘り下げてみた。

 そもそも企業が発信するニュースリリースには、事実の開示という部分ももちろんあるけれど、ある種の「意図」が込められている。このニュースリリースでいえば、ダイムラーが言いたいのは「わが社はこんなに電動化を推進しております」という企業姿勢。

 電動化拠点に転換するベルリンのマリエンフェルデ工場はエンジン製造工場だから、それを電動パワートレーンに転換すれば環境イメージ的に大いにプラスになるという目論見がある。

 そのニュースをわれわれ日本人も読んで「欧州メーカーは電動化に熱心なんだなぁ」と、CO2削減=電動化というトレンドを印象づけられるわけだ。

■内燃機関が切り捨てられたと考えるのは早計!

ベンツのベルリン工場

 新聞とかニュースサイトの記事はここで終わりとなるのだが、ではダイムラーがマリエンフェルデ工場でどんなエンジンを造っていたかを調べてみると、S600用のV12や、V8ディーゼル(OM628)、スマート向けエンジンなど、古い機種の生産がメイン。

 コロナ禍もあって最近は稼働率も低く、切り捨てても惜しくない旧式かつマイナーなエンジン工場だったというのが実態のようだ。

 だから、このニュースを読んで「ダイムラーもいよいよ内燃機関切り捨てに舵を切ったか」と考えるのは早計だ。

 新しい直6系など付加価値の高い機種については、エンジン生産の主力となるウンターテュルクハイム工場に集約する一方で、付加価値の低いエントリーモデル用エンジンは、1.3Lダウンサイズターボをルノー日産とダイムラーで共同開発。これはルノーのスペイン工場で生産する。

 そのほかにも、ボルボとその親会社吉利汽車(ジーリー)がエンジン部門を統合して分離独立させる構想を発表しているが、中国市場向けのエンジンはダイムラーもそこから調達すると考えるのが自然だ。吉利汽車はダイムラーの株式を約10%保有する筆頭株主なんだから。

 こういった内情を見てゆくと、単純にエンジン工場を電動パワートレーンに転換したのではなく、儲からなくなった古いエンジン工場をリストラし、付加価値の低い低価格モデル用エンジンを外部調達に置き換えているのがダイムラーの内燃機関戦略だということがわかる。

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