なぜ今も堅調? これまでの印象を払拭する現行型の進化
そして今、2017年の現行モデル(10代目)登場以来、日本国内でもカムリは堅調に売れる人気セダンだ。
その一番の要因はやはり2.5Lハイブリッドの進化だろう。日本国内向けはハイブリッド専用モデル。主にプリウスを代表とするトヨタのハイブリッド。燃費は良いがその加速性能にはストレスがある。カムリハイブリッドもその延長線上で良いものか? おそらく開発陣にはこのような焦りがあったに違いない。
しかも10代目のエクステリアデザインは、若返りそれまでとは大きく変わるスポーティーなもの。パワートレインの進化も必須だった。
搭載されたのは新開発の直列4気筒2.5Lエンジン。これに「THS II」のハイブリッドシステムを組み合わせているのだが、加速性能を重視したものに改良。走らせてみるとこのマッチングの良さに感動する。低速域も中速域もこれまでのトヨタのハイブリッドイメージを覆す加速感があったのだ。
もちろん、それまでにもレクサス GSなどに搭載された3.5L V6エンジン用のハイブリッドはあったが、どちらかというと燃費よりもパワー重視のもの。しかしカムリ搭載の新ハイブリッドは、加速も燃費も高い実力を示している。
筆者は何度も現行モデルのカムリ広報車を借り出しているのだが、加速性能もさることながらその燃費に驚かされる。特にエコドライブを心掛けてはいないのに17km/Lからそれ以上の燃費を記録する。
進化の根幹はこの当時(2017年)の新開発2.5L直4エンジンだろう。このエンジン、クラス最高となる熱効率41%を達成しているのだ。つまり余裕のパワーフィールと高燃費という二律背反する性能を手に入れたカムリのハイブリッドシステム。実はエンジンの進化が大きくモノを言っているのである。
世の中は電動化に目を向けがちだ。しかし発電を含めた日本国内の電源をクリーンなエネルギーにしなくてはカーボンニュートラルなど遠い未来。そこで当面はハイブリッドのモーターを含めたシステム効率が重要。
主に電気系に注目しがちだが、やはり根幹をなすエンジンの性能がモノを言うということがカムリに乗れば理解できる。ハイブリッドにとって、まだまだ寧年機関エンジンの開発は必須なのである。ではエンジンを含めたハイブリッドだけがスゴイのだろうか?
現代セダンの「要求」をほぼ満足させるクォリティ
いえいえ、ボディもスゴイです。FFベースなのでクラウンなどFRベースモデルよりも室内が広い。それゆえインテリア設計の自由度も高く、ハイブリッド用バッテリーを後席背もたれ後ろから床下に移したことで大きなトランク容量とトランクスルー構造にした。
これにより筆者の大好きなスキーにも板を室内に積んで行ける。スキー板、キャリアでルーフ上に固定して走る姿はカッコいいが、エッジがすぐに錆びてしまうのだ。
サスペンションは、新開発のフロントストラット式にリアはダブルウィッシュボーン式になった。適度に締まりの効いたスポーティな足だが、後席の乗り心地もこのサスペンション型式により大きく進化している。
またハンドリングもこのサスペンション型式のうえにステアリング軸周りの剛性アップが図られた。そして何よりも高速走行での室内静粛性が高く、振動感がない。
これは4本あるエンジンのマウントをすべて液体封入式のモノを採用していることも大きく寄与している。電気の出し入れ効率に優れることからも、ハイブリッドバッテリーはリチウムイオン式のモノを採用している。
カムリのプラットフォームを含めたトータルメカニズムはその後初のミラーレス化を実現したレクサス ESにもキャリーオーバーされている。
スポーツ性と燃費。走りと室内ユーティリティー。今の時代のセダンに要求されるすべてをほぼ満足させるクォリティ。これがカムリが堅調に販売を延ばす理由だろう。
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