クルマのライバル関係は、同一セグメントにあるもの同士を指すことが多い。しかし、実際の販売現場では、競合車が同じセグメントのクルマとは限らない。購入者は、クルマを選択するにあたって、クルマの大きさのほかに、独自の「基準」を持っていることが多いからだ。
基準を「金額」に置けば、新車の軽自動車と中古のクラウンが、ライバル関係になり得るし、特別な機能や装備が要因でセグメントの違うクルマが競い合うこともある。競合やライバル関係は、「基準」によって、多種多様に広がっていく。
本稿では、販売現場だからこそ感じられる、セグメントに縛られない、トヨタから見たライバル車を紹介していく。
文/佐々木亘、写真/SUBARU、MITSUBISHI、HONDA、SUZUKI、編集部
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■トヨタHV勢を「安全」で脅かしたレガシィ&インプレッサ
2010年代、クルマの購入基準が燃費の良さにあり、ハイブリッドの代名詞、プリウスやアクアが爆発的に売れていた。そこにスバルが「予防安全技術」という、新たなクルマ選びの基準を作る。
この基準により、販売好調だったハイブリッドにライバルが現れる。アイサイト搭載車のレガシィ・インプレッサだ。ハイブリッドVSアイサイトという機能同士の戦いがスタートした。
当時、トヨタでは一部車種の上級グレードに、プリクラッシュセーフティシステムをオプションで装着する程度である。衝突被害軽減(ぶつかる可能性は高いが、被害は軽い)がメインだった時代に、衝突回避(ぶつからないようにクルマが機能する)を謳うアイサイトが与えたインパクトは強大だった。
プリウスの商談をしながら、「トヨタにアイサイトがあればねぇ」と何度言われたことだろう。商談中の顧客を、レガシィ・インプレッサに奪われることも度々あった。先進技術同士の戦いは、互いが互いに追いつく形で、収束することになる。
現在、日本の自動車メーカーでは、ハイブリッドも予防安全技術も、もはや当たり前の存在となっている。その機能を備え付けられた、車格の違うクルマ同士が、販売中心を争い、ライバル関係となった。結果として、日本のクルマ業界全体にその機能が浸透し、進歩を促したひとつの例である。
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