2000年代からは低迷傾向にある国内新車販売。新車が売れてない要因としては、若者のクルマばなれや人口の減少といったことも言われているが、新車の販売方法が昔からほとんど変わってないこともあるのでは?
新車が売れていた時代に比べると新車販売を取り巻く状況は変わっていたりする。しかし、新車販売ディーラーから現金やローンで買うというのは基本的に変わらない。
それでいいのか? 国沢氏、渡辺氏、片岡氏の3人の自動車評論家独自の視点で、今後必要な新車の売り方をそれぞれ提案してもらった。
文:国沢光宏、片岡英明、渡辺陽一郎/写真:Shutterstock.com、BMW
ベストカー2018年5月10日号
■価格とクルマの魅力のアンバランスさが問題!!
【年齢限定の販売方法があってもいいじゃないか】国沢光宏
今の販売方法で最も大きな「アカンな!」はクルマの魅力と価格のバランスを取っていないことだと考える。20年くらい前ならモデル末期&不人気車にお買い得な価格設定をした特別仕様車をドンドン出していった。
最も得意だったのが三菱自動車で、思わず「いいね!」しちゃいそうなフル装備のお買い得モデルを連発。スバルも特別仕様車を好んだ。
メーカーからしても売れないより売れたほうがいいにきまっている。しかも最初からお買い得価格の特別仕様車なら、妙な値引きも不要。
一発勝負だし、交渉にかかる時間だって短くて済む。最近なんで特別仕様車を用意しないのか不思議でならない。最も効果が期待できるの、マツダだと思う。
マツダ、値引きを蛇蝎の如く嫌っている。モデル末期になるとリセールバリューも悪くなるから値引きは必要だと思う……、と言っても一蹴されるのだった。だからデビューから時間経つと売れない。
発表から時間が経過するとともに、さまざまな装備の付いたお買い得パッケージを考えていけばよかろう。2年経過した車種なら実質的に20万円の値引きと同等の装備を加えていく、ということです。
メーカーの原価で20万円といえば、実質的に30万円以上の装備を付けられることだろう。となればフル装備になる。
もちろん順調に売れている車種なら、そんなことしないでOK。あくまで売れゆき鈍った時の対応。安価なモデルなら「ぽっきり価格」を設定してもいいだろう。
クルマって買うとなると、あれやこれやお金をふんだくられ、カタログに表示される価格とかけ離れてしまう。
前出の特別仕様車と合わせて「総支払額100万円」とか「150万円」なんてパッケージを、25歳以下と65歳以上といった年齢限定で作りたい。
ナビからフロアマットに至るまでセットで価格を出すことくらい難しくないと思う。安心して買えます。
【なぜ何十年も販売方法が変わらないのか?】渡辺陽一郎
クルマは今でも、街の電器屋さんに相当するメーカー系列の販売店が売る。クルマには点検や車検、リコールもあり、安全の確保には専門のメカニックが必要になるからだ。
この事情はわかるが、クルマの流通と販売の形態は、約70年にわたりほとんど変化していない。メーカーと販売会社、1960年代以降はクレジット会社が一体になり変化を拒んできた。
問題は今後の展開だ。2017年の国内販売総数は523万台で、1990年の778万台に比べると67%にとどまる。
またクルマの売れゆきが下がったのに、流通と販売のコストが同じだと、1台当たりの負担額が増える。
今は安全性と環境&燃費性能の向上でクルマの価格が高まったが、サラリーマンの平均給与は、1990年代の終盤をピークに減り続けている。価格がさらに高まると、購入が一層困難になってしまう。
そこで求められるのが新車の量販店だ。安価な軽自動車やコンパクトカー(整備などの専門性が高いハイブリッドは除く)を中心に、各メーカーのクルマを一括して売る。
複数のメーカーを扱う従来の小規模な業販店と違うのは、各メーカーの商品知識を備えた販売スタッフが常駐して、詳細な車両説明や試乗のサポートをすることだ。
既存の販売店と同等のサービスを提供しながら、人員と店舗のコストを抑える。点検や車検も付随したサービス工場で受けられる。
軽自動車とノーマルエンジンの小型車が対象なら、複数メーカーの車両でも対応が可能だ。
このような販売形態は、メーカー系列の販売会社が在庫を持ち切れず、中古車に卸した車両を売る「未使用中古車店」に似ている。
未使用中古車はユーザーが愛車を手放す時の売却額(資産価値)を下げるから好ましくないが、新しい複数メーカー車を一括して売る方法だけを見れば合理的だ。
特に人口が減少する地域では、新車の量販店を設けることで、質を落とさず低コストで販売網を維持できる。
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