■2代目は大型化したものの、好調な販売を維持。3代目も人気をキープできるか?
やがて2007年に本国で発売され、2009年より日本に導入された2代目は、基本的な路線は踏襲したものの、ボディサイズが大きくなり、全長はまだしも全幅が一気に約15cmもワイドになったことには戸惑ったファンも少なくなかったようだ。それは欧州規格の1200×800mmのパレットを積載できるようにするためというのが大きな理由で、加えて初代は5人乗車したときの居住性の向上を図るべく、室内空間の拡大を図るためでもあったようだ。
それでも、初代が確立したイメージに牽引されてか、大きくなったりデザインテイストが変わったりしても、2代目もひきつづき人気を博した。
なお、プラットフォームは初代が小型車の『クリオ』(2代目/日本名「ルーテシア」)をベースとしていたところ、2代目は『メガーヌ』や『セニック』と同じCプラットフォームに変更された。むろん価格も上がるため、しばらく初代カングーが併売された地域も多くあった。
エンジンは同じ1.6Lのまま車体が一気に大きくなり重くなったことで、走りにも少なからずその影響は感じられなくなかったが、それよりも諸々の進化の恩恵は大きかったため人気が衰えることはなく、むしろ車内空間が広くなったことを好意的に受け取られたようだ。初代は5.2mだった最小回転半径が2代目は5.1mになり、小回りがきいて取り回しがよくなったこともありがたかった。
2010年には、ショートボディにサンルーフやリアのオープントップを組み合わせた、ユニークな「ビボップ」が発売された。さらには、より個性的にアレンジした特別仕様車が頻繁にリリースされた。その中にはカングーにとって日本市場は重要と認識するルノーがわざわざ日本限定で設定したものがいくつかあったことも印象的だ。
2013年にフェイスリフトし、フロントのデザインが大きく変わった。これは当時のルノーの統一デザインの導入によるものだが、従来のテイストを惜しむ声も少なからず聞かれたものの、販売的には概ね順調な状態を維持した。
近年の日本における販売台数は以下のとおり。
2018年:2164台(内MT 273台)
2019年:2386台(内MT 237台)
2020年:2388台(内MT 178台)
ドイツ勢の多くに見られるように都市部で多いといったような地域による差もとくになく、人口密度に比例した販売分布を示しており、購入者は男性が6割強を占め、年齢別では45歳前後がもっとも多く、次いでそれよりも若い層が多くなっている。また、イメージどおり趣味やライフスタイルを大事にするユーザーが多いという。
本記事掲載時点ではモノグレードで、AT(DCT)とMTのみの違いとなっている。一時期は販売比率が約3割にも達していたのに事情により廃止され、ほどなく復活を熱望する声に応えて再販にいたったMTの販売比率が徐々に低下しているのが見て取れる。
理由としては、国産車からの乗り替えが増えてきたことや、エンジンを非力な1.6Lの自然吸気から1.2Lターボに換装し、トルコンATに替えて小気味良く走れるDCTを得た現在では、あえてMTを選ぶ必要性が薄れたことが考えられる。
2020年秋には、次期型カングーの姿が公開された。これまでとはガラリと変わったデザインテイストには賛否の声があるようで、ライバルであるプジョーの『リフター』やシトロエンの『ベルランゴ』などフランス製のライバルと比べても、むしろ精悍な印象を受けるほどだ。
これは最近のルノー車ではブランドアイデンティティを表現するため、フロントエンドやリアエンドのデザインを車種横断で共通イメージとするという方針によるもので、件の次期カングーもそれに則してCシェイプのライトやフロントグリルの形状とされていた。
たしかに、すでに日本に上陸した『ルーテシア』や『キャプチャー』も同様の手法を用いている。次期カングーの路線変更も、その流れからすると自然のことといえそうだが、はたしてどのように受け入れられるのだろうか、その動向に注目したい。
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