■自動運転技術に飲み込まれる?
最近になって警察庁は「光ビーコンを活用した安全運転支援システム(DSSS)の運用終了について」発表を行った。
光ビーコンを活用した光DSSSについては、「信号見落とし防止支援」、「出会い頭衝突防止支援」、「追突防止支援」など、運転者に対して安全運転支援を行うシステムとして運用してきたとしたうえで、光DSSSについて、耐用年数など耐久性のも含めて関連部品の製造停止等により保守が難しい状況となっていることから、令和9年3月31日をもって運用終了することを発表した。
なお、「光ビーコンを用いて情報提供を行っている交通情報提供システム(AMIS)及び信号情報活用支援システム(TSPS)については継続して運用します。」としているから、当面は問題ないとはいえ、自動運転技術の進化によっていずれフェイドアウトする可能性もあるということだ。
将来の自動運転技術の進化とともに、車両側での情報収集技術が高度化していけば、システム全体の構成を見直しは必然的になってくる。
ほかの要素でも、従来からあるホンダの情報サービス「インターナビ」などに見られる走行車両から得られるプローブ情報の利用など、メーカー製ナビによる情報収集能力の高度化をはじめ、センサー技術の進化、将来的には確実に車車間情報のやりとり(トヨタはITSコネクトで車間通信技術を取り入れている)が欠かせなくなる。
現状でのUTMSによる信号情報の価値は事前に情報収集が可能な点にあるとはいえ、、車両搭載のカメラからの映像情報を処理する能力が飛躍的に拡大するような流れのなかでは、インフラ側の技術がいずれ置いて行かれてしまうかもしれない。だからこそ、信号器の通信技術に関しても、さらなる進化が求められていることは間違いない。
路車間通信システムに対応している交差点はこちら!(2021年4月時点)
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■専門用語解説
●VICS(Vehicle Information and Communication System:道路交通情報通信システム)
渋滞や交通規制などの道路交通情報を、FM多重放送や光ビーコンを使ってリアルタイムにカーナビゲーション装置に届けるシステム。
路上に設置された電波/光ビーコン、FM多重放送を利用して、ドライバーに対して必要な情報(渋滞情報・規制情報・道路案内・駐車場情報など)を、カーナビやETC2.0といった車載器を介してリアルタイムに提供する。
●路側機用光ビーコン
全国の交差点に約3万5000箇所に設置され、一般道/高速道(自動車専用道)で使えるナビ連動型のETC2.0車載器に光ビーコンを追加すれば、光DSSS(路車間通信システム)を利用したTSPS機能などを利用できる。
●光DSSS(トヨタは単に路車間通信システムと呼ぶ)に対応したITS無線機能を活用した路側装置
宮城県・茨城県・埼玉県・東京都・神奈川県・愛知県・大阪府・広島県・福岡県の一部交差点に設置されている(2020年3月現在)。
●信号情報活用運転支援システム(TSPS)の機能を得るには?
基本的にトヨタとホンダの2社の自動車メーカーが用意する純正カーナビやETC2.0装置とともに、光ビーコンを追加装着することで後付けが可能。
情報提供サービスとしてトヨタが採用するITSコネクトは、TSPS機能を利用可能な装備として、純正ナビとともに光ビーコンモジュール付きETC車載器を展開している。
●UTMSに含まれる「信号情報活用運転支援システム」(TSPS)
高度化光ビーコンから取得した信号情報を用いて、信号機が設置された交差点を円滑に通行するための運転を支援するシステム。
光ビーコンから取得できる信号情報と、自車の位置や速度の情報を用いて車載機が交通状況や運転状況に応じた適正な速度や情報の提供を行う。無駄な加速や急な減速をおさえ、ゆとりを持った安全でスムーズな走行やエコドライブによるCO2削減が期待できるとしている。
●ETC2.0
ETC2.0はETCの高速道路(自動車専用道路)料金収受システムに情報サービス機能を付加したもの。ITS路側無線機からの情報を、カーナビとETC2.0車載器によって入手可能。光ビーコンを追加装備して、TSPSの信号機の情報などを得ることができる。
●高度化光ビーコン
近赤外線技術を利用した、走行車両の車載装置との双方向通信と車両感知の機能を併せ持ち、カーナビとETC2.0車載器を組み合わせて、カーナビの画面上に赤信号のカウントダウン機能などの表示機能や赤信号減速支援の音声機能が利用できる。
●VICS
VICS(Vehicle Information and Communication System:道路交通情報通信システム)とは、渋滞や交通規制などの道路交通情報を、FM多重放送やビーコンを使ってリアルタイムにカーナビゲーション装置に届けるシステム。
●TSPS
TSPSは警察庁が中心となって進めている新交通管理システム(UTMS)に含まれ、信号が変わる情報を送信、車両側で受信するシステム。路上に設置された光ビーコンを用いて、個々の車両と交通管制システムとの双方向通信を行なう情報通信技術を利用する。
これに交通情報提供システム(AMIS:Adanced Mobile Information Systems)などが日常的に使う情報の入手先といえる。AMISは運転者に渋滞、事故、所要時間等の交通情報を様々なメディアを通じて提供することにより、交通流の分散を促し、交通の円滑化を図るシステムとされ、VICSもこれに含まれる。
その他のサブシステムとしては、公共車両優先システム(PTPS)、車両運行管理システム(MOCS)、動的経路誘導システム(DRGS)、緊急通報システム(HELP)、交通公害低減システム(EPMS)、高度画像情報システム(IIISS)などがある。
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