■信号が変わるタイミングを制御するワザ
ここからは、信号の待ち時間がどのように設定されているかの実際について、改めて確認してみたい。
たとえば、一周期における主道路と従道路との信号表示の時間配分はスプリットと呼ばれ、主道路(幹線道路)と従路(交差路)が交わる場合には、平均的な交差点での比率は6:4となっている。ちなみに、車両と歩行者それぞれ待ち時間にストレスを感じない周期時間は90秒以下とされている。
交通信号機の表示変化の制御因子(パラメーター)は3つある。
・サイクル長(周期時間):信号表示が一巡する時間
・青信号スプリット:各現示に割り当てられる時間または割合
・オフセット:隣接する交差点どうしで系統制するために、系統方向の各交差点における青の開始時間の差(秒数または周期時間に対する百分率)
ちなみに、都市部で交通量の多い幹線道路の重点交差点や歩行者感応式信号機であれば、一概に制御が働くとは限らない。信号機の表示制御の方法については、いくつか設定がある。
一般的な交差点でそれぞれを制御する「地点制御」、曜日や時間によって一時的に混雑するような場合には、時間帯別に周期時間を設定を変更して渋滞を緩和する「プログラム多段制御」、交差点の間隔が短く、他の一般制御の交差点よりも比較的交通量が多い場合に、いずれかの交差点の制御器を基準として連動して作動させることで渋滞の緩和を狙う「系統制御」がある。
■ホンダとトヨタが採り入れたTSPS
さて、ここからは信号機の情報のやりとりについて話をしていこう。前記のDSSSに包括され、信号の制御を実施するTSPSは、光ビーコンから取得した信号情報を用いて、信号のある交差点を円滑に通行するための運転を支援するシステムだ。
TSPSでは車両側はカーナビと連動するETC2.0車載器や光ビーコンによって、道路側の路側送受信器や光ビーコンから送られる信号機の情報を入手。自車の位置や速度情報を用いて、車載機がドライバーに交通状況や運転シーンに応じた適正な速度や情報の提供を行う。
TSPS技術が実際に採用された具体例を挙げておこう。
・右折時注意喚起:特定の交差点で右折待ち停車時に、接近する対向車線の直進車や、右折先に歩行者がいるにもかかわらず、ドライバーがブレーキペダルから足を離して発進しようとするなど、見落としの可能性がある場合に、表示とブザー音により注意を喚起する。
・赤信号注意喚起:赤信号交差点に近づいてもアクセルペダルを踏み続け、ドライバーが赤信号を見落としている可能性がある場合に、表示とブザー音により注意を喚起する。
・信号待ち発進準備案内:赤信号で停車したとき、赤信号の待ち時間の目安を表示する。
上記の機能はいずれも路側機が設置され情報が入手できる交差点。全国それぞれの地域で設定されている。
■トヨタが取り組む「ITS コネクト」
トヨタは最新車種を中心にTSPSの機能を積極的に取り入れている。新たな情報サービスであるITS Connect(コネクト)には、前述の機能として「信号待ち発進準備案内」「信号連携減速案内」「赤信号注意喚起」などの機能が備わる。
トヨタがTSPSを利用している具体例が、トヨタとレクサスの両ブランドで採用している「ITSコネクト」(インフラ協調型安全運転支援システム)だ。
トヨタは2013年からこの情報システムの実証実験を開始、2015年10月の先代クラウンのマイナーチェンジから採用して、続く新車でのオプション装備として採用してきた。
従来からあるTコネクトナビとETC2.0ユニットのナビ連動タイプ(光ビーコン付き)を基本システムとして、ITSコネクト(TSPSを含むDSSSなど)を採用している車両は、ミライ、ハリアー、プリウスPHV、プリウス、クラウン、アルファード、ヴェルファイアとなっている。
レクサスでは、LSでは標準、ESとRX、UXでは標準またはオプション、NXはオプションで設定されている。
■ホンダはホンダeに採用
対してホンダは、TSPSを採用した先代アコードを2016年5月に発売した経緯があり、現在では最新モデルとして「街乗りベスト」を謳うEV(電気自動車)であるホンダeをはじめとして、フリード、ステップワゴンといった車種において、純正ナビに光ビーコンを組み合わせて信号情報を利用できる。
なお、ホンダeは純正ナビに標準装備。フリードとステップワゴンはいずれもディーラーオプション設定されている。
UTMSに参画している自動車用通信機器を手がけるメーカー3社のうち、パナソニックを取り挙げておく。TSPS対応のカーナビとETC2.0車載器ではモニター画面で信号情報の機能を選択でき、ETC2.0車載器単独でも光ビーコンと組み合わせれば、TSPSなどの情報を受け取ることができる
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