■ハスラーが総合力でタフトを圧倒!! ダイハツは戦い方を間違えた?
このほかSUVのタフトとハスラーの販売競争もある。タフトは前述のどおり2020年6月に新規投入されたから、2020年1月(発表は2019年12月)にフルモデルチェンジした現行ハスラーに比べると、2020年度の販売期間は約2カ月短い。
そこで両車とも条件が同じになる2020年度下半期(2020年10月から2021年3月)を比べると、タフトは3万7374台、ハスラーは4万6756台だ。つまりタフト対ハスラーの販売合戦でもスズキが勝っている。
ハスラーとタフトの特徴を比べると、ハスラーは後席に左右独立式のスライド機能を装着するなど、シートアレンジが多彩だ。マイルドハイブリッドで燃費性能も優れている。
対するタフトは、後席は荷室と割り切ってスライド機能を省き、燃費数値もハスラーに負ける。その代わりタフトは、価格が最も安い135万3000円のXにも、ガラスルーフのスカイフィールトップ、LEDヘッドランプ、電動パーキングブレーキを装着した。
このようにハスラーは総合的な機能と性能、タフトは装備に特化して、似通ったクルマながら真っ向勝負をしていない。この販売合戦にダイハツのタフトが負けた。
タフトが装備を充実させたのは、SUVの新規投入車種とあってハスラーとの競争を避けた結果とも受け取られるが、理由はそれだけではない。
ダイハツには車種が多いからだ。全高が1600mmを超える軽乗用車だけでも、ムーヴ、ムーヴキャンバス、タフト、キャストスタイル、タント、ウェイクをそろえる。
そうなるとタフトに後席のスライド機能などを装着したら、ムーヴキャンバスなどと重複が生じる。ダイハツには背の高い車種が多いため、タフトは個性化すべく、シートアレンジを簡素にして価格のわりに装備を充実させた。
そこが裏目に出たともいえるだろう。例えばスカイフィールトップは、誰でも欲しがる装備ではないからだ。
またキャストスタイルとウェイクは、販売が低調で、売り上げにはあまり貢献していない。
■少数精鋭で王座を奪還したスズキ
その点でスズキは車種が少ない。全高が1600mmを超える軽乗用車は、悪路向けSUVのジムニーを除くと、ワゴンR、ハスラー、スペーシアに限られる。
そうなるとスズキでは1車種で幅広い顧客に対応する必要があり、ハスラーにもワゴンRと同じシートアレンジを与えて燃費も向上させた。ハスラーはワゴンRの着せ替えともいえるが、充実した機能と個性的な外観で人気を得ている。
スペーシアも実用的な機能を満足させたうえで、SUV風モデルのスペーシアギアを含めて多彩な内外装を用意して、幅広い顧客に対応している。
以上のようにダイハツは、車種数を増やして細かなユーザーニーズに応える方針を採用した。スズキは車種数を減らして基本的な機能を充実させ、グレードを豊富にそろえる。
この戦略の違いと、タントの販売不振により、ダイハツの軽乗用車販売はスズキに負けた。
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