■王者に何が起こった!? 多くの車種が伸び悩んだダイハツ
そこでダイハツの軽乗用車の売れゆきを個別に見ると、前年度に比べて減少した車種が多い。タフトは2020年6月に登場した新規投入車種だから、6万918台の届け出台数が対前年度比でそのまま上乗せされたが、そのほかの軽乗用車はすべてマイナスだ。
特に大きな影響を与えたのが、ダイハツの最多販売車種になるタントだ。2019年度には17万2679台が届け出したが、2020年度は12万8218台だから、4万4461台減少した。比率に換算するとマイナス25.7%だ。
前述のとおり、2020年度におけるダイハツの軽乗用車届け出台数は、スズキに比べて1万5520台少なかった。仮にタントが前年と同程度に売れて、4万台以上の減少を防いだら、軽乗用車の販売順位もダイハツが1位であった。なぜ現行タントは販売不振なのか。
現行タントは2019年7月に発売され、1カ月の販売目標は1万2500台であった。ところが2020年度の1カ月平均は1万685台だ。発売して早々に目標台数を下まわった。
一方、先代タントは、2013年に発売されて2014年度には21万4867台を登録した。現行型の2020年度は12万8218台だから、2014年度は圧倒的に多かった。そのために先代タントは、ホンダの先代N-BOXを抜いて、2014年度には軽自動車の届け出台数1位になっている。
2020年度はN-BOXとスペーシアを下まわり、軽自動車の3位に留まった。
タントは売れ筋車種だから、設計の古いホンダN-BOXやスズキ スペーシアに負けると、ダイハツ全体の販売実績に悪影響を与える。しかもタントの販売不振は、2019年7月の販売直後から見られたため、2019年12月には価格を上げずに実用装備を加える格安な特別仕様車を追加した。
このような特別仕様車は、通常は売れゆきが大幅に下がるモデル末期に設定するが、現行タントは発売から半年後に投入した。ダイハツがタントの販売不振を深刻に受け止めていた証拠だ。
それでも売れゆきは上向かず、2020年6月には、標準装着される一部の装備を省いて価格を下げる特別仕様車のXスペシャルまで加えた。標準装着される装備は、製造原価を徹底的に安く抑えるから、省いても価格はあまり下げられない。
従って高価格車を除くと、装備を省いて値下げする特別仕様車はほとんど用意されないが、タントはそこに踏み込んだ。販売不振に追い詰められていたからだ。それなのに売れゆきは伸びず、軽乗用車の届け出台数はスズキを下まわった。
■ライバルが強すぎた!? タントに牙を剝く軽ワゴンたち
この背景にはタントのライバル車の強さもある。現行N-BOXは、先代型の広い室内に加えて内外装の質を高め、乗り心地や静粛性も向上させた。しかも、全高が1700mmを超える軽乗用車のスーパーハイトワゴンでは、車間距離を自動制御できるクルーズコントロールを初めて採用して話題になった。
スペーシアは標準ボディとスポーティなカスタムに加えて、SUV風のギアも加えている。マイルドハイブリッドの採用で実用燃費も向上させた。
タントも先代型の欠点を徹底的に改善して、後席の座り心地と走行安定性はライバル2車を上まわる。従来型と同じく左側のスライドドアにピラー(柱)を内蔵させ、前後のドアを開くと開口幅が1490mmまで広がるから、乗降性は抜群にいい。
シートアレンジにも工夫を凝らしたが、デザインや機能が全般的に地味で売れゆきは伸び悩む。
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