■安上がりだが手は抜かない
で、GRヤリスRSです。エンジンはただのヤリスと同じ。120ps/145Nmの1.5L 3気筒の自然吸気。駆動系もただのヤリスと同じFF。しかもCVTオンリー。つまりヤリスの量産パワートレーンをそのまま移植したもの。これは安上がりです。
しかし、それ以外はエンジンフード、ドア、リアハッチにアルミ材を採用。ルーフはカーボンだ。
筆者は86GRMNの製作現場の元町工場を見学したことがあるが、カーボンの設備が素晴らしく、また手作業によるルーフの取り付け工程、職人の技術力はもう量産する自動車メーカーの工場という印象ではなく、クラフトマンシップで営む英国の古きよきファクトリーを連想させるほどでした。
RSの詳細を見れば見るほどにボディの作りのよさに感心します。つまり、パワートレーン以外のボディはほとんどRZそのものといったところ。バケットタイプのスポーツシート、ステアリング、シフトノブなど、すべての操作系もRZ譲り。(「RZハイパフォーマンス」グレードとは差異がある)
そのシートに納まってみる。ホールド感はかなり高く、表皮がわずかに身体に馴染みピタッと張り付く感じ。ドラポジはシートにしっかりと支えられ、余計な力を使わずにステアリングやペダル操作ができるベストなもの。
座面から膝裏までのサイサポートも適度。ただしRSは2ペダルなので、クラッチ操作のフィーリングはわからない。このシートはRZと同じでRZハイパフォーマンスとは異なること、あらかじめお伝えしておきます。
■意外と気持ちいいCVTとホンキのシャシーが好印象
スターターを押してエンジン始動。RZと同じ3気筒だがこちらはノンタです。排気量も若干少ない1.5L。最初から期待はしていなったが、CVTの発進ギヤのおかげかスタートはスムーズでそこそこ力強い。ただしヤリスハイブリッドのほうがもっと力強い。まぁこれは仕方がないこと。
このCVT、10速MTにも対応。CVTなので疑似ギヤを想定してプーリーの径を瞬時に変更して行う。いわゆるMTモードでオートシフトアップも行うわけです。
これが意外にも気持ちよく、10速なのでそこそこクロスしていて約7000rpmまで回ると2000rpm弱の回転落ちで次々とシフトアップ。パワー的には大したことはないが、ちょっとレーシング気分が味わえます。
エンジンパワー的には60点ぐらいですが、エクゾーストノートもそれなりにスポーティなものになっていて、このCVTの疑似MTシフトと相まって悪くないスポーツエンジンの印象です。
しかし、スゴイのはやはりボディ! 車体! シャシー! でした。
実は、このレポートのために3日間広報車を借り出して試乗したのですが、借り出して走り出した瞬間から乗り味の質感が高かったのです。
まずはロードノイズですね。余計なノイズがカットされ、必要な路面のサーフェスの情報は入ってくる。サーキット路面のような粗い表面だと「ゴー!」とか「ザー!」などと音質がハッキリする。
それが、静かではないのだが耳障りでない。ちょっと薄めのヘッドフォンをかけているかのような聞こえ方。そしてその「ゴー!」とか「ザー!」はステアリングからもシートからも感じられる。音は振動なのだから当たり前のことだが、ボディがしっかりしているから写実的に感じ取れるのだ。
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