世界の先進国および新興国で、新型コロナ対策として大規模な金融緩和が行われ、コロナバブルが発生。スーパーカーメーカーの絶好調が続いている。
スーパーカーの2大巨頭といえば、フェラーリとランボルギーニだ。近年はランボルギーニの伸びがウルトラ著しく、王者フェラーリに肉薄しつつある。フェラーリも負けるわけにはいかず、競争は激化するばかりだ。
自動車業界全体には、電動化の大津波が押し寄せているにも関わらず、フェラーリとランボギーニは、そんなことはどこ吹く風。両社とも、近い将来全モデルをハイブリッド化する方針ではあるが、現在は駆け込み的に、すさまじい馬力競争を繰り広げている。
2021年4月の上海モーターショーで、ランボルギーニはエッセンツァSVC12を発表。対するフェラーリは2021年5月5日、812コンペティツィオーネとそのオープンモデルのコンペティオーネAを公開。いずれも830馬力で覇権争いの様相だ。
さて、こうしたスーパーカーの覇権争いは今後はどうなるのか、清水草一氏が解説する。
文/清水草一
写真/フェラーリ ランボルギーニ
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■どうだまいったか! 史上最強のランボルギーニ見参!
2020年、バーチャルで発表されたランボルギーニのハイパーカー、エッセンツァSCV12が、この4月の上海モーターショーで一般公開された。搭載されるエンジンの最高出力は830馬力。これは、ランボルギーニがこれまで開発したなかで、最もパワフルなV12自然吸気エンジンとなっている。
このクルマ、ルックス的にはアヴェンタドールの最強版に見えなくもないが、中身はまったく異なる。
新世代カーボンファイバーモノコックシャシーは、ロールケージなしでFIAプロトタイプの安全基準をクリアする「GTハイパーカー」。つまり純レーシングマシンだ。パワーウエイトレシオは1.66hp/kgと発表されているので、車両重量は1380kg程度という計算になる。
現在ランボルギーニの市販車は、大部分が4WDシステムを採用しているが、この最強最速のマシンは、ミドシップ後輪駆動。トラクション能力を確保するため、空力にはケタ外れの力が注がれている。
巨大なリアウイングを見れば一目瞭然だが、全体では250km/h走行時に1200kgものダウンフォースを発生させるというから、300km/hで走っていれば、イモリのように天井に張り付くこともできるだろう。
こんなハイパーカーを公道で走らせたらどうなのか? という感じだが、エッセンツァSCV12は純レーシングマシンだけに、サーキット専用車。つまり公道走行はできない。
販売台数は世界限定40台で、購入者は専用クラブのメンバーとなり、世界の有名サーキットでこのハイパーカーをドライブすることができて、専用のトレーニングプログラムも受けられる。絵に描いたような現代的な富裕層ビジネスだ。
『サーキットの狼』世代としては、公道を走れないのは残念すぎるし、その時点でスーパーカーとは呼びたくない。中身を知れば知るほどシラけてくるクルマだが、これほど軽量でパワフルだと、さすがに公道を走らせるのは不可能かつ無意味なのは間違いなく、そこはランボルギーニの見識とも言える。
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