■9500rpmのレブリミット! 830馬力の812コンペティオーネ
一方のフェラーリは、「やられたらやり返す!」と言わんばかりに、2021年5月5日、同じく830馬力のニューマシンを発表した。それが812コンペティツィオーネと、そのオープンモデルの812コンペティツィオーネAだ。
こちらは、通常モデルの812スーパーファストをベースにした限定モデル。つまりナンバーを取って公道を走ることが可能だ。公道を走れるのは歓迎(?)ではあるが、まともに走れるのかどうか、個人的には疑問に感じる。
なにしろベースとなった812スーパーファストでさえ、800馬力のパワーを全開にすると、高速道路上でもその場でスピンしそうになってしまう。FRレイアウトの後輪駆動で800馬力を御するなど、なにをどうやっても不可能に近いのだ。
コンペティツィオーネは、そこからさらに830馬力にまでチューンナップしてある! レブリミットは9500rpm。公道でそこまで回せば、天国が見えるに違いない。
ちなみに30馬力のパワーアップは、チタン製のコンロッドや特殊コーティングのピストンピン、バランス取りしたクランクシャフトを採用するなどして得ている。車両重量も、38kg軽量化されている。
その割にこのクルマには、エッセンツァSCV12のようなリアウイングすらない。これでは、アクセルを全開にすることなど、サーキットでも不可能ではないのか?
その点に関してフェラーリは、「リアディフューザーの大型化と排出ガスのエアロダイナミクスへの積極的な利用によって、大幅にダウンフォースを増している」とリリースしている。
しかし、「A」のほうはタルガトップのオープンモデル。それだけで気流はかなり乱れるはず。
本当に大丈夫か!? という感じだが、「気流を無駄なくスポイラーへ流すよう、フライングバットレスの間にブリッジ状のエレメントを配置し、空気抵抗の増大を抑えるとともに、クローズドモデルとほぼ同等のダウンフォースを実現した」とのこと。
キツネにつままれたような気分だが、自分とはまったく縁のないクルマだし、信じるしかないだろう(笑)。
販売台数は、クローズドモデルが999台、タルガトップモデルが599台。
「えっ!?」と感じるほど多いが、フェラーリはエンツォ時代から、「需要より1台少なく作り、プレミアム性を保つ」を社是にしているから、この台数は綿密なマーケティングにより導き出された、「適正台数マイナス1」なのだろう。それだけ世界のハイパーカー需要は高いのだ。
■エンジン車で830馬力! 最後のエンジン車になるのか?
それにしても、電動化が世の趨勢と言われる中で、それに完全逆行する830馬力のこの2台、いったいどう解釈すればいいのか。
ランボルギーニのエッセンツァのほうは、サーキット専用の純レーシングカーなので、EUのCO2排出量規制の対象でもないし、なにをやるのも自由だ。この形なら永遠にやりたい放題が可能だから、今後ハイパーカーは、こちらの方向に進んでいくだろう。
一方の812コンペティツィオーネは、公道走行可能なクルマだから、そうはいかない。現在の812スーパーファストは、最後の自然吸気12気筒フェラーリになる運命なので、その最後を飾るべく、思い残すことのないようなクルマを作った……とも言える。
ただ、今後フェラーリやランボルギーニがハイブリッド化されても、それで削減できるCO2など、実に些細なものだろう。
なぜなら両社とも、馬力競争から降りるわけにいかないからだ。逆にハイブリッドのモーターのパワーを生かして、さらにさらに無意味に速いクルマを作り続けるに違いない。もう、なんのためのハイブリッド化なのか、さっぱり意味がわからない。
世界の富裕層は、燃費のいいフェラーリやランボルギーニなど、まったく欲していない。アクセルなんか全開にできなくたっていいから、とにかく誰よりも速い、特別なクルマが欲しいのだ。乗るのはただの1回だけだったり、なかには一度も乗らないでガレージに陳列するのみというケースもありそうだ。
特にフェラーリは、こういったクルマの販売によってCO2排出量が規制を大幅にオーバーしても、メーカーに課される罰金を車両価格に上乗せすればそれでいいと割り切ったように思える。ハイパーカーの顧客たちの資産増加は、CO2排出量の増加をはるかに上回っているからだ。
燃費のいい、パワーの小さいスーパーカーなど、最初から見向きもされない。チキンレースから降りたほうが負けなのだ。
つまり、ハイパーカーの馬力競争は、今後もまだまだ続くだろうし、新規参入も相次ぐに違いない。
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